ひきあげる
「あの、かたちが定まらぬやわらかいものはな、《常世のくに》とつながっておるから、かたちがさだまらぬのだ。ならば、それを切って《この世》によんでやればよかろう?さすれば、おまえたちが得意とする妖物のように、しっかりとしたカタチになる。だが、用心しておけよ。 ―― では、みなのもの、囲いをひきあげるぞ!」
上をむいてさけぶのに、下降してきたテングたちが、さきほど堀につきたてた棍をひろいあげてゆく。そのまま城をかこむように四辺にわかれて列をなしたまま上へ上へととんでゆくと、揺れていただけの『黒い山』も悲鳴のような音をあげながら、上へ上へとのびていった。
「われらの術の《囲い》の目につまったバケモノを、《囲い》ごとひきあげておる。かんたんには身を切り離さぬように《術》をかけておるので、そのうちすべて引き抜けるはずじゃ」
ヨクサがわらって指をさす《黒い山》は、きしむような音を出し続け、餅のようにのびていたが、いきなり伸びることをいやがるよう、身をよじったせいで、棍を通じて《囲い》をひきあげていたテングたちは、体勢をくずした。
舌をうったヨクサがとびたち、『バケモノ』の真上につくと棍をまわしてから、足元にぴたりとあてた。
「 ―― よし、ひくぞ」
宣言すると一気に真上をめざし飛ぶ。




