もう出られず
あの手が消えた先は、高山のむこうか、剣山のおくだろうかと考えながら、どうにかまた、《囲い》となる氷をはることができた。
こんどのそれは、このバケモノがここからでていかないようにするため、城のまわりのあの空堀をつかい、張ることにした。城をかこんだ堀は、ただでさえ《囲い》の役目をする。ワギョクもあそこに囲いの術をほどこしたはずだ。
手首をとられたバケモノの《腕》が、ヨクサが斬った手首に黒い渦をまきあげている。
だが、ホムラのバケモノように、手首から先をまた再生する気はないようで、ゆっくりと《腕》だったものを『黒い山』の中にひきこむと、山のような身体を震わせ、つぎにはくちのついた六つの瘤もひきこんだ。
「 いまだ!囲いを落とせ! 」
空でタンニがさけぶ。
テングたちは手にしていたトッコを振り一斉に棍に変じさせると、急下降して空堀へと棍を突き立ててゆく。
「これであのバケモノも、城の敷地から出られないってことか?」
「おれたちもな」
セイテツの問いに、いつもの冷めた声でスザクがこたえる。
ここでアレを始末する。
それが、セイテツとスザクの役目だ。




