丸い瘤は六つ
『孵化』ねえ、と首をまげたセイテツが、それで?とスザクをみた。
「あの、『孵化』しようとしてるのが、おれたちの追ってるケイテキの中身なのか?」
「匂いはそれっぽいな。―― ワギョクのやつが、じぶんを喰った妖物に呪いがかかるよう術をほどこしておいたらしくて、いまはそれのせいで、まだよく動けねえんだろう」
そのまま孵化しなくていいのになあ、とセイテツがいったとき、ぼごっ、と音をたてて、もがいていた丸いものが一気に土のなかからとびだし、地響きとはちがう響く音を、それがだした。
「 『頭』・・・だと思ったんだけど、あれって、あたまじゃないのか・・・」
空気をゆらす音を響き渡らせるその頭のような丸いものには、てっぺんに丸く赤い穴があき、その穴を尖った牙がふちどるのがみえた。
くち、か、とスザクがあきれたようにみあげると、その『くち』が瘤のようにゆるく丸い身をふるわせてのびあがった。すると土の中から、それとつながった別の新しい『くち』をだし、それがまた、と、つぎつぎにでてきた丸い瘤状の『くち』は、身を寄せ合うように六つもでた。
その『くち』が、空に向け、それぞれに高さの異なる音をだし、空をゆする。
「おのれ、空をゆすって《囲い》を切ろうとしておるのか」
こざかしい、と怒った顔でヨクサがとびたった。 あとを追うタンニが、いまいちど《境》をつくれ、とセイテツに命じる。
「簡単にいってくれるよなあ」
こまったようにわらうセイテツは、それでも、両手をあわせて『力』をためはじめた。




