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おとぎばなし ― ここまで ―  作者: ぽすしち
大臣たち

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102/146

※※ 四つ辻






  ※※




 トクさん!とかけこんだ男衆が障子を開ける前に、トクジは刀をつかみ、走り出た。


「《化かし辻》か!」


 返事もきかずにトクジは塀をけり、とびのった屋根伝いにはしる。

 すぐ後ろにコウアンとドウアンがついてくる。


 チサイのことがあって辻の術札を取り換えてはいたが、もとからあった札ほどの威力はないことはわかっていた。つぎにあの辻に妖物がでるとしたら、大物になるだろうとは覚悟していたが ―― 。


「でかいな」ドウアンが走りながらつぶやく。


 辻に現れたモノからでるいやな『気』のせいで、街全体がゆらぐような感覚がある。


 辻は四つにわかれている。

 ほんとうなら、術をつかえるものでわかれた先をふさぎ、でてきたモノを辻の真ん中においつめたいのだが、ここには坊主が三人。タクアンはスザクたちに貸してしまったし、おいつめるには、それそうおうの『力』を持つ者でなければ成り立たない術がある。




 術ではなく、刀でどうにかできる相手か?



 だが、にぎった刀は猛りも怯えもみせず、震えていない。




 そのとき、むこうの屋根に立ち、辻をみおろす人影がみえ、コウアンが、むう、とうなるのがきこえた。




  「なんだ。おそいではないか。トクジ」



いつか天宮で会ったときとは違い、よけいな袖や裾がない着物をきた参の宮の大臣は、楽しむような笑みをむけた。


「セリ?おまえ、こんなとこにでてきていいのか?」



「この世が残れるかどうかの瀬戸際に、天宮が動かんでどうする?」

 女は手にした扇子をまわしながら、愚弟が世話をかけもうしたなあ、とコウアンとドウアンへにっこりしてみせた。


「スザクの姉上か?」

 ドウアンが驚いた声をだすのに満足げにうなずくと、参の宮の大臣は、辻をさした。



「あのようなものを、この世に出すなど許さんわ」


 辻の四隅にあった岩は割れ、辻の道に十字にはいったひびから、鱗をもつうねったものが出てこようとしている。



「術をかけられたあとがあるな」コウアンが、もがいてでてきた蛇のようなからだが引きちぎったようになっているのをみてわらった。

「先にスザクたちに顔をみせてきたんだろ」


「ということは、これがはなしにきいたホムラとかいうやつか?」

 ドウアンとトクジのはなしをきいた女が、その名前に反応した。



「 こやつが、あの ホムラ か? シュンカの里を焼いた、 あの ホムラ だな? 」




 にいっとわらうその顔をみてトクジはおもったままを口にした。


「スザクと同じわらいかたしやがる」



 止める間もなく、セリが辻へとんだ。





 ※※








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