おなじ『くに』から
まだ人が人をおさめるところまでいかない《この世》を、先んじておさめてしまった帝は、まず天宮をつくって自分の居場所とし、下界を人間の住まう場所とさだめた。
「まあ、ぼくらのほうが先にいたわけだけど、森には手をつけなかったし、急にここにやってきた人間たちを、じぶんがおさめるっていってくれて、そのほうがぼくらとしては楽だったからね」
ただ、と、つづけた。
「 ―― ひとが東西南北で領地をわけだすころには、帝が追ってきていた『者』が、この世で神官になって、人に対していろいろ術をつかって、試しているのに気づいた」
「《禁術》ってことか?」
セイテツが眉をよせ、はきすてるようにいう。
「そうだね。そいつは、神官をウツワとしたとき、人に対する術をいろいろあみだして、ウツワとした人を『わたれる』ようにした。そうして渡った最後の先が、西の将軍、ケイテキだったわけさ」
眉をしかめた絵師は坊主と目をあわせる。
「ちょっとまて。・・・じゃあ、帝の《中身》とケイテキの《中身》は、おなじ《常世のくに》から逃げてきたってことなのか? だってケイテキは将軍として帝と何度も会ってるだろうし、あの、ホムラを処分するときだって、帝とケイテキだけではなしをつけてあったようなもんだ。 じゃあ、・・・『追ってきた』っていうのは、捕まえるためとかじゃなくて、力を貸すために、ここにきてるってことか?」




