表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
泣き虫実桜ちゃん  作者: 佐々蔵翔人
9/18

お声がけ

他の候補地

いつも同じジャパニーズタウンに遊びに行っており、たまには別の所にも遊びに行きたいなと考えていた実桜だった。その事を万里男君に伝えた。


やはり万里男君も悩んでいた。お小遣いも無限にある訳では無いため、なるべくお金を使わない遊びも考える必要があった。


実桜と万里男君でそれぞれ提案をし合う。

「図書館、公園、川遊び、アスレチック……」


実桜はどこに行っても楽しむ自信がある、だから万里男君が決めて欲しいと伝えるとここはレディーファーストだよとブーメランのように実桜の元に選択権がやってきた。候補があるのに中々決まらない。


悩み続けていると万里男君は何か紙に書き出した。

ルールとして出かける予定の場所を円のように書いていって鉛筆の芯を真ん中にやって倒れたところにしよう。運を鉛筆に委ねることを決めた。


数回やっていると多く当たったのが川遊び。そのため、今度は川遊びに行くことが決まる。だが、学校の近くや家の近くに川があったのかと見当がつかない実桜だった。


土曜日、雨が降っていて危ないからと翌日に変更しようと万里男君から実桜のもとにメールで届いた。明日は晴れるといいなと思って翌朝を迎え、雨は降っておらず曇り空。実桜が出かける時は曇りが多い気がしていた。


天気は曇りだが、心は晴れやかにしたいとオレンジのワンピースを着て家を出ると自転車に乗って待っている万里男君がいた。ついてきてと後ろから追うように自転車を濃いでいた。


自転車で少し離れたところに河川敷かせんしきさほど大きくなく、流れも緩かな川がある。自転車を近くに止めて川の方に向かっていく万里男君。無邪気に階段を降りていく姿はまるで小さい子供みたいでかわいらしい。


石を見つめ、川に投げるとボンボンと何回も跳ねて対岸まで届きそうな勢い。思わず手を叩いて喜ぶ実桜。実桜ちゃんもやってみなよと促されてやってみる。だが、何度やってもポトン、ポトンと跳ねずに川の底に沈んでいく。


最初右手で石を投げていた万里男君だったが、何を思ったのか今度は左手で投げると対岸まで届いた。いくら緩やかな川といえどスゴい以外の言葉が出てこない。


ポツポツと空から水滴が落ちてくる。実桜が空を見上げると雨が降ってくる。このような場面を何度経験したかと思いつつ雨宿り出来る場所を探していた。橋の下で雨宿り出来る、実桜は石を投げている万里男君の手を取って走っていった。


次第に酷くなっていき、出るに出られない状況になる。しばらくして男の人が入ってきた。することがないのか、まだ水切りをしたいのか石を手の上で遊ぶ万里男君。その姿を見た男の人は万里男君に英語で話しかける。何を言っているのか全く分からずにいると日本語で話しかける。


「ボーイ、石を向こう岸に投げて見てほしい」

大雨から小降りになってきたとはいえ、この状況で外に出るのかと思っていた実桜。気がついたら男の人と万里男君は下から出ていく。


右手で数回、左手で数回石を投げている。大人でも中々対岸までいくのは難しいのに万里男君はそれを容易たやすくやってのけていた。


雨が止み、実桜も万里男君のもとに行くと何かを話している。内容は分からないがかたくなに横に首を振っている。実桜は理由を尋ねてみた。


「知らないところに1人で行くのはイヤだ。行くなら友達の実桜ちゃんも一緒じゃないと行かない。寂しい」


どうやらどこか行こうと誘われているみたい。たかが川遊びと言われそうだが理由が1人で行くのが寂しい。友達の実桜ちゃんも連れて行きたいって言ってるのがスゴくかわいいと思えてきた。


お願いだから付いてきて、今にもそう言いたくてたまらないような表情で実桜を見つめてくる万里男君。そのような顔をされると断るに断れず、万里男君付いていくよと答える。実桜の方を見つめてニコリと笑う。果たして実桜はこれからどこに行くことになるのだろうか……。


自転車を車に乗せ、後部座席に座る実桜と万里男君。しばらく車を走らせて付いたのはベースボールのグラウンド。実桜だけでなく万里男君もベースボールをしたこともなく、ルールも全く知らなかった。


左手にグラブを付けてマウンドと呼ばれる他より高いところに向かい、手ほどけを受けて硬式ボールを投げる。練習中だったのかコーチや他の選手からも歓声が上がる。


キャッチャーミットをはめた選手に向かい、再び投じる万里男君。ベースボールが初めてなのにストライクボールに小学生にしてはかなり速いとコーチたちは話している。


実桜と万里男君をグラウンドに連れてきた男の人は今度は違うグローブを持ってきて右手にはめて左手で同じようにキャッチャーミットめがけて投げる。右で投げる時と変わらないスピードとコントロール。


周りからブラボー。おめでとう、よかったら明日からこのチームに加入して欲しいと少年野球のオファーだった。


しかし万里男君は嬉しい反面、自分だけで決められないと親と相談して決めたいからと保留する。連絡先を聞いて書類をもらい、自転車で家に帰って行った。途中、ここはどこだってなったが悪戦苦闘しつつも数時間かけてやっとたどり着いた。


その行方は

万里男君は家に帰り、家族に話し合った結果少年野球に入ることを決めた。位置づけとしてはリトルリーグやシニアまで本格的ではないものの、草野球ほど緩くない。練習も大会も行われるともらった書類を見せた。


家族は万里男がやってみたいと思うならとそこまで反対をしなかった。翌日、万里男は書かれている連絡先に電話をすると土曜日の午前中、ユニフォームの採寸をしたいから住所を教えて欲しいと言われ、伝えた。


土曜日、朝起きて準備をしているとドンドンと玄関から音がする。急いで着替えて外に出ると態々《わざわざ》迎えに来てくれた。朝ご飯を食べていないことを伝えると途中でドライブスルーでサンドウィッチを買ってくれた。


採寸をするためにグラウンド近くのクラブハウスで行う。ユニフォームが来るまでジャージでするのか、ベースボールに必要なグローブやスパイクといった道具もまだ持っていないことを伝えた。


行きつけなのか男の人はスポーツショップの割引券をくれてこれで買うといいと万里男君に渡して再び家まで送ってくれた。その事を伝えた上で翌日の日曜日にグローブやスパイクを買いに行くことにする。


しかし右投げでも左投げ投げられる万里男にとって両投げのグローブとなると特注しなければならない。とりあえず右投げのグローブとスパイクを割引券を使って買う。店主からはお古でよければとタダで左投げのグローブももらう。優しい人たちばかりだなと感じていた。


水曜日、万里男の家にはユニフォームが届いていた。これで土曜日の練習から着ていけるとワクワクし、実桜のもとに電話があって家に来て欲しいと連絡があった。


何事かと思った実桜、ジャージ姿で走って向かう。

家に着くとガチャとトビラが開いて上がるように促され、万里男君は忽然こつぜんと姿を消す。


リビングに取り残された実桜。いったいこの時間は何なのか、なぜ呼ばれて実桜はここにいるのだろうかと自問自答をしている。そして向かいの部屋が開く。


「実桜ちゃん、少年野球チームのユニフォームが届いたんだけどどう?似合ってる?最初に実桜ちゃんに見てもらいたくて呼んだの」


笑顔でそう言う万里男君。似合っているしカッコイイと思う。ユニフォームが届いて着てみたかった、それも最初に見せたいから電話をかけてきたって理由がかわいい。実桜も何か万里男君のために何かしたいなと感じていた。


初めての練習日、自分には関係ないのに何故か早く目が覚めた実桜。頑張っている万里男君の姿を見ようとこの前のグラウンドに行こうと自転車に乗ろうとしていた。


コーチなのか、前に見た男の人が車に万里男君を乗せていた。「ヘイ、ガールも乗っていきな」


はたから見たらたまたま万里男君と一緒にいる女の子に過ぎない実桜にまで乗せてくれるって何でなのか、気になっていたが押し問答していたら練習に遅れるのはよくないと一緒に車に乗ってグラウンドに向かう。


万里男君は始めてベースボールをするとは思えないくらい上手く、前からいたと言われても何も遜色もない。実桜は外で応援することしか出来ないけど。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ