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泣き虫実桜ちゃん  作者: 佐々蔵翔人
2/18

変わりたい

苦手なこと

実桜自身、泣き虫実桜ちゃんと呼ばれることがイヤで仕方なかった。泣きながら実桜は泣き虫じゃないと言っても何の説得力もなかった。幼稚園児ながら気づいていた。


克服したい、だけど何をしたらいいか考えていた。

まずは苦手な食べ物を克服しよう。小学校に上がって食べれないものが多いのはよくない、背が低い実桜にとって身長を伸ばす手段でもあるし何でも食べられて損はない。


とは言っても今まで食べられなかったものが食べられるようになる訳ではない。生タマネギやチーズが食卓に並ぶと臭いだけで目がうるうるしている。家族からはムリして食べなくてもいいよと言われているがそれではなにも変わらない。


目を閉じて頑張って食べてみるもののやはりまた泣いてしまう。実桜はため息をついてずっと泣き虫なのかなと小声で呟く。


その姿を見た母親はカタコトの日本語で話しかける。

「ミオハガンバッタ。マズハカタチガミエナイヨウニシテタベテカラタベレルヨウニシヨウネ」


日本人の父のために和食を一生懸命覚えようとしている姿は小さい実桜にも伝わっていた。その上、自分の母国のことも忘れたくないとカナダ料理も作るのでスゴいなと傍らで見ていた。


それだけではない。自他ともに認めるくらい英語が苦手な父が母とコミュニケーションをしようと必死に英語を覚えようとしている姿。その背景には英語が出来なければ仕事がままならないということもある。


家族とはいえ、言葉も文化も違う中でそれぞれ順応しようとしている姿を見ている。だからこそ自分も泣き虫実桜ちゃんから卒業したいと本気で考えている。


毎日のように名前タマネギやチーズを出して欲しいとお願いをして食べられるようにしていた。飲み物と一緒に飲み込むところからはじめら噛まずに飲み込む、他の食べ物と同じように噛んで飲み込むと段階を踏んでやっていこうとしている。


チーズは食べられるようになってピザを焼くと自分から粉チーズをかけるようになるまでになっていた。焼いたタマネギは問題なく食べられるのにどうして生タマネギがどうして克服出来ないのだろうかと嘆いている。


父にその事を相談をする。

「苦手なことに挑戦をしようとしている実桜はエラい。同じくらいの時は好き嫌いが多くて全然食べなかったから過去に戻って言いたいくらい」


その話を聞いてまだ幼稚園児だから徐々に食べれるようになればいいのかなと勝手に解釈をしていた。夢は何でも食べる、世界各国の料理何が出てきても食べられるようになりたいと思っていた。食物アレルギーが出ませんように。


食べ物以外にも

泣き虫実桜ちゃんと呼ばれるルーツは食べ物だけではない。家で遊ぶことも外で遊ぶことも好きな実桜は幼稚園でもお友達と仲良く走り回っていた。


活発で遊ぶのはいいが基本的に毎日のように転んで家に帰ってくる。幼稚園で何をして遊んでいるかまでは把握することが出来ず、消毒液と絆創膏ばんそうこうがマストになる。転ぶと痛い、それは子供も大人も変わらないが全員泣いている訳ではない。


それだけではなく、歩いていると散歩をしている犬に吠えられたり噛まれたりする。怖い気持ちがトラウマになってしまわないか不安が尽きない。


だからといってずっと家にいるのも実桜のためにはならないし、外でしか学べないことや経験出来ないことは沢山ある。全く泣かないという訳ではなく頻度が減ればと実桜の両親は考えていた。


近くに住んでいる吠える犬がいれば遠回りして家に帰るだけでなく、犬でも吠える子ばかりでなくて人懐っこくてかわいい子もいる。動物は怖い存在ではないことを伝えないといけないと考えていた。


人にも動物にも優しい子に育って欲しいと考えていた両親は積極的に動物園や水族館に連れて行ってもらうと小さくてかわいい姿だけでなく、仕草も愛おしくて何度も行きたいとお願いするようになっていた。


これを機に吠える犬に怯えることがあっても犬は怖くない、頭を撫でてれば喜んでくれるし歩いていたら犬の方から寄ってきてくれる姿は小型犬でも大型犬でもかわいいなと感じるようになっていた。


実桜の中で後は仲のいいお友達が出来れば何も怖いものはないと勝手に思うほど自信が付いていた。幼稚園では日本人とカナダ人のハーフということを理解してくれていて時に英語、時に日本語になってしまう時もあるが笑ってゆっくり喋りなと英語で話してくれていた。


カナダに住んでいるのにハーフだからといって外様扱いすることはなくて優しく接してくれていて男の子、女の子共に仲良くて休みの日でも幼稚園に行きたいと口にするほどだった。休みの日は公園で同い年の子と遊んだり、小さい子とも遊ぶなどしてお姉さんとして面倒を見ている。


周りの家族からは実桜ちゃんは優しいお姉ちゃんだねと褒められることが少しずつ増えてきて両親としても誇らしい気持ちでいた。


時が経つのが早くて気がつけば実桜は5歳になり、あっという間に幼稚園を卒園を迎えていた。おめでとうと実桜に伝えるのと同時に両親は別の悩みが出てきた。


それは勉強についていけるだろうか、学校に馴染めるのだろうかと不安は尽きないでいた。

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