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16 二人だけの舞踏会

「あ、すまない。……つい、きみなら僕のことを怖がらずに受け入れてくれるような気がしてしまって……」


 青年は一度差し出した手を引き、首飾りをギュッと掴んで、沈んだ声でつぶやきました。

 その様子を見たペティは慌ててしまいます。

 

「ち、違うんです! 私は貴方のことが怖いだなんて思っていません。舞踏会で倒れた私を介抱してくれたのですから、貴方はきっと優しくて思いやりがあって素敵な方に違いありません!」

「それなら、どうして?」

「私なんかがお相手するのは申し訳なくて……」


 今度はペティがスカートをギュッと掴んで、沈んだ声でつぶやきました。

 その様子を見た青年は慌ててしまいます。


「き、きみの言っている言葉の意味が僕には分からないのだが……きみの言う『私なんか』とはどういう意味なんだい?」

「私は皆に、みすぼらしい女と言われてしまいましたので……」

「それは皆の目が濁っているに違いない。だって、こんなにきれいな花で彩られたこのブロンドの髪も、この青い海のように揺らめくドレスも、きみの魅力を存分に引き立てていると僕は思う。それに、装飾を抑えた靴もとても踊りやすそうだ。きっとこれは腕の立つ職人に作らせたものだろう?」


 不思議なことに、青年の言葉を聞いているうちに、ペティの心に突き刺さっていた(とげ)が一本一本抜けていくように感じられました。


「ありがとう。私もこの髪飾りとドレスと靴はとっても気に入っているの!」


 ペティは笑顔を見せました。すると青年は、レースの首飾りで口元は見えないけれど、とてもホッとした表情になりました。


「では、改めて。お嬢様、僕と一緒に踊ってください」

「でも……」

「まだ何かあるのかい?」

「あの……私、正式なダンスを踊ったことがないんです」

「大丈夫。僕がリードするよ。さあ……」


 差し出された青年の手の上に、ペティの手が重なります。

 壁を隔てて聞こえてくる音楽隊の演奏が転調した瞬間、手をぐいっと引かれて少し慌てたペティでしたが、青年の優しいリードのおかげですぐにリズムに乗ることができました。


 優しい音楽に包まれて、ペティと青年、二人だけの舞踏会が始まります。

 



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