忍者なので、忍んで姫様を御守り致します故!
拙者の役目は姫様の護衛でござる。人々から暴君として恐れられる上様はあらゆる方面から怨み辛みを買っていて、その矛先は娘御であらせられる姫様にも向けられることがあった。なので、何時如何なる場合でも不届きな輩の魔の手から姫様を御守りするのが拙者の任務でござる。姫様の憂いは拙者が掃う!
「最近、やたらと視線を感じますの。困りましたわ」
それはいかぬ!憂い顔の姫様は、近頃ため息ばかり吐いておられる。拙者が何とかせねば!手始めに屋根裏にいた草の者を殺しておくとする。
「最近、自室の物が勝手に移動していますの。父上に頂いた簪は無くなっているし。困りましたわ」
それはいかぬ!憂い顔の姫様は、近頃顔色が宜しゅうない。早速姫様の御部屋に出入りしている女中の首をはねる。
「最近、湯浴みの最中を覗かれている気がしますの。困りましたわ」
それはいかぬ!憂い顔の姫様は、近頃頬の肉がげっそりと落ちている。直ちに風呂場のそばで控えていた近習を斬り伏せる。
「最近、朝起きると全身に違和感を覚えるの。長襦袢も乱れているし、とても気味が悪くて。困りましたわ」
それはいかぬ!憂い顔の姫様は、近頃心労から臥せておられる。女中も近習も居らぬ今、拙者が御世話致すしかあるまい。
姫様が気を失うように床に就いた後、気配を殺して枕元に降り立つ。汗を拭う為に衿を広げ、序でに麗しき尊顔を拝する為に、覆い被さるように姫様を跨ぐ。嗚呼、何度拝見してもお美しい。 姫様が身動ぎされたので寝苦しいのかと思い、布団を剥ぎ取って衽へと手を伸ばした。
「待たれや」
か細い手が拙者を阻む。拙者の手首を握り締める姫様は、怒りと恐怖で震えている。
「お前か、曲者めが。妾と父上の会話を盗み聞きし、我が城の忍や女中、近習達を次々と殺めたのは………!」
そんなに怯えた顔をしないで下され。姫様の事は拙者が御守り致します故!