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異世界転生のための異世界転生

1話完結するだけのカンタンな仕事。アットホームな雰囲気です。

 ルーブアジン=ゴルータイム。


 長ったらしいが、それが俺の名だ。

 俺はこれから異世界に転生する。つまり、死ぬ。


「本当に、覚悟はよろしいですね?」

「ああ。俺には誰よりも強い心があるからな」


 なんでわざわざ死を選ぶか、だって?

 そうだな。説明すると長いが、要は好きな人を助けに行くため、かな。


「キュアリパルはあちらの世界には、もうおりません」

「ああ。パルを助けるためには、あっちでパルを追い転生しないとダメなんだよな」


 キュアリパル=キヒャスス。

 俺がパルと呼ぶ令嬢だ。はっきり言ってカワイイ。


「なんで俺を待ってくれなかったのだ、パル」

「そればかりは本人に聞くしか。私も彼女を存在でしか認識できない身分でして」


 転生の神、ポンヌロス。

 彼は俺がいる世界で、望む者の前に現れ、人を転生させる。

 しかし転生には死という手続きが必須。そのためポンヌロスとしては不本意らしいが、ほとんど死神なのだ。


「あちらの世界、スーバババクでは別の神を探してくださいね」

「お、おう。それは仕方がないんだもんな、把握した」


 そしてポンヌロスが持つ転生の杖に胸を貫かれた俺は、痛みもなく意識を失った。




「ぎゃお?」


 ん、俺は今ぎゃお、と言った。

 おかしい。「ここは?」と言おうとしたのに、口から出たのは「ぎゃお?」なのだ。


「ぎぎゃん、ぎひゃぎん」


 とりあえず探索しよう、と言ったつもりだ。

 誰にでもなく、単なる気持ちを作るための独り言である。


 なんとなく背中がむずむずするので、思わず俺は翼をばたばたさせた。


(ん、……翼だと?)


 俺は束の間、空を飛んだ。

 そして自然と慣れた姿勢で下降しふわり、と着地。


「ぎゃんぎ、ぎぎゃぎん」


 なんだ夢か、と俺なりに言った。

 話せる言葉と、翼があるという事実。これらにより俺は信じがたい現実を直視した。


(ポンヌロスめ。魔物になるなんて聞いてないぞ!)


 パルがすぐ転生してしまった理由が分かった。つまり、おそらく彼女も魔物になってしまったのだ。


「うわ、魔物だ。インプ、インプがいるぞ!」


 俺を見た弱そうな若い男戦士が、遠くから叫んだ。


(俺、インプなのかよ!)


 小悪魔、という3文字がふさわしいだろう。ただし、あざとい女子の意味ではない。

 小さなツノ、小ぶりな翼に、紫の全身。

 頭髪などという優雅なパーツはない。スキンヘッドにツノだ。ちなみに眉毛もない。


 俺がいた世界では、そうだった。

 そして頭髪やツノを手で確かめられるので、やはりそうなのだろう。


(確か、火の魔法が得意なはず)


 俺は火を強くイメージし、戦士に向けた。


「うわっちい、メルジ様。水、水を」


 メルジと呼ばれたマント姿のジジイは俺に見えない草むらから出てきて、燃えさかる戦士に水魔法を唱えた。

 多分だが、戦士がパシりとなり魔物の正体を探っていたのだ。


「はあー。癒されまし……じゃない、早くアイツをぶっ殺しましょう!」


 弱そうな戦士と、魔法使いメルジが猛烈な勢いで駆けてきた。


 端から見れば、彼らこそが正義で俺は悪い魔物だ。


(くっ、飛んで逃げるか)


 翼をはためかせ、俺は空中に舞った。


「させるかよ!」


 思いのほか若々しい言葉遣いで、メルジは岩を降らせてきた。


「ぎゃんあ、ぎゃおあああ」


 俺の断末魔だ。ただ、これに翻訳はない。

 俺の叫び、その物だ。




「目覚めなさい。哀れな魔物よ」


 雲の上で俺は目覚めた。

 そこにはポンヌロスがいた。


「ぎゃぎぎ、ぎんぎゃぎゃん。ぎゃんぎぎん、ぎゃぎぎぎんぎゃん」

「ええ、いかにも私の名はポンヌロス。しかし様々な世界に私はいます。別の世界で私に会ったのですね?」


 ポンヌロスには俺の言葉が通じるらしい。

 ちなみに「お前、ポンヌロスだろ」以上の罵倒を浴びせたのは軽く無視された。


 怪しいが、同一人物にしか見えないが今は信じるしかない。

 まあ、前の世界とは違い、死後に来れるシステムだったのが俺にとっては救いだから交渉くらいしてやる、といった感じだな。


「ぎゃお。ぎっぎっぎっぎぎゃ」

「ええ。確かにキュアリパル様でしたら異世界に転生しております。同じ世界でよろしいので?」


 思わず俺はガッツポーズした。

 やっと運命の人と再会できるのだ。これが嬉しくないヤツがいる異世界なんてあるか?


 そして、「もちろん」という意志を俺はぎゃおぎゃおした魔物言語で示した。


「分かりました。前は知りませんけど、私のは注射ですから痛みます。我慢してくださいね」


 魔物のボディに注射。思わず俺はぎゃぎゃぎゃと笑ってしまったが、転生できるならなんでもオッケーだ。


 確かにチクリと左腕が痛み、俺の意識は遠のいていった。




「お目覚めください、今こそ。さあ」


 言われるまでもなく、俺は目覚めた。

 ていうか、誰だコイツは?


「魂で分かります。ルーブ様ですよね。アタクシです、キュアリパルですのよ」


 えっ。

 ちなみに明らかに目の前にはゴーレムしかいません。


 そして一方の俺は魔王らしい。


 転生の結果にムラがありすぎ、魔物に偏りすぎだろ!

 こうなったら俺は覚悟を決めるぜ。

 現世になんとしてもポンヌロスを呼び、シメる。


 だって今の俺には、愛しのゴーレム令嬢がいるのだから。

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