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異世界転生しても底辺かよ俺

1話完結トマトソース添え。

 職歴なし、才能なし、彼女なし。


 もちろん40過ぎて嫁なんていない俺は過労死した。

 ブラック企業?

 ハハッ、そんな生易しいモンじゃないさ。


 アルバイト。

 そう、俺はアルバイトという底辺ギリギリの身分でありながら過労死したんだ。

 倉庫内作業、残業祭り。

 だってやらないとクビだぜ。やっても機嫌損ねたらクビだぜ?


 で、クビにならなかったけど俺は死んだ、そういう事だ。


 ただ色々あり、今、俺はブリギンス=ロムという竜槍使いだ。


 正確には、金持ちロム家の七男、ブリギンスの肉体に死んだ俺の魂が入って生まれちまった。


 だが今ではコワモテの20歳、自分で言うのもなんだが銀髪ツーブロックのちょいワル兄貴だ。

 それについては最高さ。

 だって前世じゃ油てっかてかキモオタ無職。経歴どころか見た目も底辺だったんだからな。


 竜槍は良い。強いからな。

 本当に強くて最高なんだけど、なぜか俺の人生は底辺だ。

 いや、なぜも何も理由はある。


 竜槍使いは人気職。

 発想次第では一発逆転もある不遇職のメリットすらない、完全なる競争社会だ。

 だから竜槍がいくらドラゴンすら一撃で倒せる強武器でも、討伐魔物数を回転率良く稼ぐトップ・クラスには敵わねえ。


 そう。

 俺は強武器を手にしたのに仕事がない底辺竜槍使いなんだ。


「あら、ブリギンちゃん。今日もお茶していく?」


 ため息をつく俺をどこからか必ず見つけて、しつこくお茶に誘う赤髪魔女帽子のコイツはベニパ=ラメンサ。

 転移魔法のプロらしいが、あとは貴族令嬢って事しか知らない。


「ラメンサさん。俺にそんな時間はない」

「ねえ、ブリギンちゃん。いつになったらベニパ……愛してるって言葉を口に出来るの?」

「あのね、ラメンサさん。まずベニパって呼ばない時点で、他人だって理解してください」


 どうも俺はラメンサさんが苦手だ。

 だからラメンサさんとしか呼べないし、敬語になる。


「ふーん。まあ、いいけど」

「じゃあ、仕事がありますから」


 これは完全なる嘘だ。仕事なんてない。

 だってギルドで行列に並んで依頼待ちしても大体、なんだか間に合わないんだ。


 いわゆる面接落ち。本当、なんで強武器ありで面接落ちするんだ。そもそも、なんで面接なんて存在する?


 要領の良いヤツは直接、貴族から依頼を受けるらしいが俺にはギルドくらいしか宛てがない。


「チッ、仕方ない。しこしこレベル上げるか」


 一応ここはVRMMOっていうバーチャル・オンラインのゲームの1つ、スパーダの世界だ。

 だからレベルという概念が存在するし、念じればメニューとか出てくる。


 一応とわざわざ断るのは理由がある。


 それはここがゲームの性質も持ちながらスパーダによく似たリアルな世界、つまりもう1つの現実って事だ。


「はあ、今どき誰も相手しないコボルトなら数で稼げる。そう思っていた時期が俺にもあったな」


 コボルトというのは、ざっくり言うなら犬頭の獣人だ。毒に耐性が強いくらいで、まあザコキャラだ。

 だがスパーダになかった、この世界のルールとして『著しくレベル差がある敵からは経験値が手に入らない』という厳しいものがある。


「ま、薬草とか毒消し草はドロップするし、売れば底辺バイト並みには儲かるけどな」

「ふーん、ブリギンちゃん。コボルトなんて中々良い稼ぎ知ってるじゃない」


 でえええ。


 心でそう叫んだ俺の背中には、そんな事より明らかに何かが当たっていた。


「あの、当たってますけど」

「バカね。当ててんのよ」


 やたら弾力があると思ったら、ノーブラらしい。


「俺はこれから、薬草とか売りに行くんで。それじゃ」

「待ちなさいよ!」


 振り返ると、なぜかラメンサさんの両の目には涙がたまっていた。


「ど、どどど、どうしました?」

「うるさいうるさいうるさーい。鈍感バカなんて、もう知らない」


 そう言うとラメンサさんは、一昔前の映画とかドラマで魔女が乗るような竹ぼうきに乗り、どこかへ飛んで行ってしまった。


「……何だったんだ」


 近くの町で薬草を売り、毒消し草は一応とっておいた。

 そして得たお金で食事をしていると、何やら近くが騒がしい。


「オラオラ、お嬢さん。よくも我の竜槍に傷を付けてくれたよね~」


 一見チャラチャラしてはいるが、俺には全く勝てそうにない。いわゆるトップ・クラスの竜槍使いだ。


 俺と同じ銀髪って、それはまあどうでもいい。

 なぜなら、お嬢さんというのが、


「あっ、ブリギンちゃん。助けて!」

「ラ、ラメンサさん」


 という事なのだ。


「む、無理です。転移で逃げてください」

「ちょうどマナがからで無理い」


 マナとは、いわゆるMPだ。つまりラメンサさんは転移無理と言っていた。


「くっそおお。ヤケクソだあ」




 その後、そう叫んだ俺は竜槍に秘められた奇跡のなんとかで光の速さにブーストして勝ったらしい。

 気絶したのであまり覚えてないけど。


「バカよあなたは。竜槍の奥義を1つも知らないで生きてきたなんて」


 意識が戻り、まさかの膝まくら。

 そう。今の俺の後頭部の座標はラメンサさんの膝上の座標に一致してしまっていた。


 あれ、これってまさかの……ハッピーエンド?

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