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異世界転生したのに虚しくてハーレム中断

意外と1話完結いけた。

 軽鳩 大河。

 それが、俺の名前だ。


「フカル兄たま~」

「おい、フカ。何をぼんやりしている」

「べ、別にタコフカなんか心配してないんだからねっ」


 フカル=ヴァハイ。

 それも、俺の名前だ。


 つまり、この世界――魔法世界ジャトーラにおける俺。

 それが色黒白髪の銃剣使い《縮銃のフカル》。


 そして、以下ハーレムものに御用達のメンツ。


 猫耳巫女妹系貧乳ロリ娘のフア=ペッコー。「兄たま、ハーレムなんていけませんッ」

 人類最強の魔導師にしてクーデレ姉系巨乳女子のアルン=ジャスティカ。「何か言ったか。いや、言うな。耳が腐る」

 そしてツンデレ一般市民的な光の微乳精霊のシェウナ=シラ。「なんでおっぱい見てんのよ。本当タコでスケベね!」




 うらやましい?

 いや、それはこの現実を理解していないからそう言えるんだ。


 無双チート持ちなのはいい。

 女神ケールスーンに誰にも負けない縮銃・ダーク=バックを与えられて負け知らず。

 更に今では復剣アウト・ブレイドもあるから事故率ゼロだ。

 なんでも吸える銃となんでも復元する剣。

 おかげで、仲間は誰一人死んでない。


 この世界に慣れたのも問題ない。

 というか、転生前の俺はアラサーどころかアラカン……アラウンド・還暦のガチクズ生活保護男。

 恋人どころか友人すら不安定。

 近所のガキには定期的にディスられる。

 そんなホームレス以下の過保護な猿みたいな、なんにも出来ないゴミだったんだから未練なんかない。


 アイテムボックス。

 転生前から路上に捨てられた雑誌で知っていたが、確かにこりゃ便利魔法だ。


「コマンド使用。アイテムボックス!」


 うっすらと水色が着いた、ほぼ透明な箱が目の前に現れた。

 色と透明レベルは、オプションとかいうコマンドでいじくった。


 そして俺が(力強化の巻物)と念じると力を永続的に強化する、いわゆるステータスアップのアイテムが箱からポコンっと飛び出し、俺の手の平に乗った。


 要は四次元ポケットだ。

 なんでも入るし、入ってさえいるなら念じることで望むアイテムがちゃんと出る。


「本当、フカ兄はアイテムボックス好きよね。フアはそんな兄たまが、だ~い好きなのです」

「そ、そうかそうか。ははッ、俺もその……好きだぞ」

「あーッ、ニャア子だけ抜け駆け……って、べべ、別にあーしにはカンケーないし」

「単純ね、シェウ」

「あ゛? 乳を噛むぞコラ~ッ」


 アイテムボックスが好きなわけでは断じてない。

 ただ、この魔法を使えるのは世界中を探しても、なぜか俺1人なのだから仕方ないのだ。


(要は、コイツもチート魔法なんだろーな)


 ついでにステータス画面を開く。


 プレイヤー:フカル=ヴァハイ

 クラス:ウィザード(銀河、黒竜)

 レベル:255

 HP:9999/9999

 MP:9999/9999

 力:9999

 守:9999

 魔:9999

 速:9999

 運:0


 申し分ない。

 強いていうなら女神の気まぐれで運はゼロだが、スタート地点で拾った謎のお守りの効果【覇道】のおかげで実質、運もカンストだ。


「グェニビァアア」

「あっぶない、タコフカしゃがめ!」


 言われた通りにしゃがむと、シェウナの光レーザーが猫系の上位魔物、ケット・シーを昇天させた。


「ふふ、相変わらず私の出番がないな」


 アルンは余裕ぶってはいるが、どこか悔しそうだ。


 それもそのはず。


 様々な攻撃魔法を極めたアルンよりも光レーザーだけで実力を上回り、回復も復活も、挙げ句には強化魔法までこなすシェウナ。

 ゲーム世界のルールを無視して際限なく強くなる彼女さえいれば、下手したら縮銃の出番すらなくなる。




 いや違う、そうじゃなかった。

 そうだけど俺は、この世界で――。


「フカ。もしかしてチュンミスが気になるか?」


 チュンミス=トーンオワブ。


 貴族に生まれながらも幼い頃に勘違いで追放され、長きに渡って乞食として生きてきた少女だ。


「アルン、実は……そうだ」

「実は、どころか、お見通しだが?」

「えっ。フカ兄ってやっぱり、やっぱりなのですか?」

「バカタコね、タコフカ。あーしが可愛いからって、あの子を嫌いなフリなんて最初からムダなんだからね」


 みんなの心づかいが眩しい。

 だって俺は60年近くのキャリア底辺。そんな仲間なんていなかった俺に、好きな子がいるなんて言い出せるはずなかったんだ。


 そう、底辺でしかなかった昔なら。


「みんな、俺。ここでお前らとはお別れだ」


 ごめん、とは言わなかった。

 だって揃いも揃ってアイツらは世界最強。俺がいなくたって絶対に大丈夫だ。


「たまには遊びに来いよな!」

「ああ。これからもフカは私たちの仲間だ」

「タコフカ……う、うぇっ、う、……泣いてないんだから」

「フカ兄、おっぱい成長したら見せに行きますの」


 そして、俺の冒険はそこで中断した。




 現実世界。


「大河さん。そこの建材、取らなくて良いんで数、数えてください」

「うん、あいよあいよ」


 年の功には敵わない。俺は朽ちかけの腰を持ち上げ、建材の数を確認し始めた。


「大河様~。お弁当、忘れてますわよ」

「えぇ! チュンってば、今日は早帰りだと」

「はうあー! 絶対的勘違い発動警報ですわあ」


 色々あって元の世界に転生し直した俺。

 貴族の養女となり、つまり貴族になれたチュンミスとそれなりに幸せな生活を送ってる。


 そして、

「フカ兄~」「フカ!」「タコフカ」

 と、なぜか中断したはずのハーレムまでもれなく転生した俺の人生。

 それはもしかしたら、――まだほんの序章なのだ。

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