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様々な性   作者: 遠藤りょうじ
3/3

第1章 3話 顔見知りからの誘い

 僕には行きつけのスーパーマーケットがある。


そこのレジの店員と何度も顔を合わせる内に声を掛けられるようになった。


今日は少し気分が良いのでそこに買い物に行くことにした。


まずは支度から始めた。


洗髪をし洗顔も済ませてから着替えた。


服装は黒いカットソーにブルージーンズ。靴は赤いスニーカー。どれも安物ばかりだけれど。


今は無職なので以前働いていた貯蓄をチビチビ下ろして使っている。


銀行にも寄って少しだけお金を下ろそう。


親の車は二台あり、今日は母の仕事が休みで家にいるので、了承を得てから車の鍵を借りた。


いずれは僕も仕事をして、中古のマイカーを買おうかなと考えている。


いちいち親から借りるのは面倒だから。


家を出る前に、「どこに行くの?」と訊かれた。


こういうことを訊かれるのもウザい。なので、


「買い物ー」


適当に答えておいた。嘘じゃないし。


それから目的地に向かった。


外は太陽が出ていて気持ちが良い。暑いくらい。風は少し吹いている。


今日も声を掛けてもらえるだろうか。そう思うと緊張してきた。


 店の駐車場には車がたくさん停めてあり、店内は混雑していた。


これではレジで話す時間がないかもしれない。


このスーパーマーケットは二階建てで、一階は食料品売り場。二階は衣料品売り場になっている。


一階をグルッと見渡して例の店員がいるか確認した。


いた! 細身の身体に茶色く長い髪を後ろで縛ってある。赤いエプロン姿だ。


僕が思うに結構可愛いと思う。


今度はこちらから勇気を出して話しかけようかと思っていたけど、この混雑ぶりでは無理そう。


ネームプレートを見ていなかったので名前はわからない。見ておけば良かったと後悔している。


でも、人混みに紛れているせいか、最近の体調不良の延長なのか、気分が悪くなってきた。


なので、例の女性とも話せそうにないし、飲み物だけを買って帰宅することにした。


 僕は自室のベッドに横になった。徐々に調子の悪さが増してきた。


また何か聞こえてきそうで怖い……。


シネ


コロスゾ


やっぱり聞こえてきた……。


お寺に行こうかな……。でも、面倒だな……。聞こえてくるのさえ無くなればいいのだけれど。


僕は重たい腰を上げてお寺に行くことにした。


お布施はいくらが良いのだろう。


適当に銀行から下ろしてきたお金を封筒に入れた。


お寺と言ってもどこにあるのかよくわからないので、自宅から一番近い山の方にあるお寺に向かった。


ちなみそこは、祖父が亡くなった時にお世話になったお寺だ。


 二時間後、お祓いを受けて帰ってきたが何の変化もなかった。


そこにいた住職というのだろうか老婆が言うには、精神科に受診してみてはどうか、と言われた。この声は「幻聴」という症状らしい。いったい何という病気なのだろう。皆目見当もつかない。


病名については、ここは病院ではないから医者に訊いて欲しいと言っていた。


今は午後三時頃。


調子はあまり良くないけれど、例の女性と話したかったので、自宅には戻らずそのままスーパーマーケットにむかった。


十分程走って到着した。


さっきよりはだいぶ車の台数もへった。


入店してみると、お客さんの人数もすくないように感じる。


レジをみるとお目当ての女性はまだはたらいていた。


話せそうなので、缶ジュースをひと缶もっていき彼女のレジにむかった。


会計のとき、


「あら、こんにちは!」


と声をかけられた。うれしい。僕も、


「こんにちは、元気ですか?」


と言った。


「うん、元気よ。あなたは?」


「まあまあかな」


僕は咄嗟に嘘をついた。


「名前なんていうの?」


積極的な人だと思った。


「山宮剛輝っていうんだ」


「剛輝くん。つよそうな名前ね。アタシは風間瑠璃かざまるりっていうの。よろしくね!」


「よ、よろしく」


僕は突然名前を訊かれて戸惑ってしまった。


風間さんは顔を近づけてきて、


「ねえねえ、今度あそばない?」


と、小声で言った。


「え」


僕は予想外の展開にびっくりした。


「いいけど」


そう答えると、いらないレシートに連絡先を書いた紙をくれた。


「そこに連絡して。アタシのだから」


これは逆ナンというやつか。


でも、うれしかった。


夜にでも電話してみよう。勇気をだして。


「ありがとうございます」


僕は礼を言った。


これから楽しくなればいいけれど。

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