初めての世界征服
――――君を忘れたその日から、モノクロームが世界を征服した。
君との思い出、というよりも、君の〝形〟そのものこそが、僕を僕たらしめていたのだと、今更のように気がついた。
理想を求め過ぎたんだ、僕は。
知らぬ間にそれは現実から、〝君の形〟から離れていって。
いつしかそれは君じゃなくなった。
君を忘れたのだと気付いた時、世界は彩りを失ってしまった。
そうして僕の中にだけ、ギラギラと目立つ〝理想〟が、ふてぶてしくも残ったんだ。
けど、考えてみれば、君は何一つとして変わっていなくて、どころか、ずっとそばに居た。知ったときには、君は僕の〝目〟さえ届かないくらい高いところから飛び降りて、今にも消え入りようとしていた。
――――成り代わるのは僕の〝理想〟か? ……そんなのは、嫌だ。
迸るものがあればいい。この理想を解き放って、君を救えるなら。
この想いにも、意味があったと思えるから。
手のひらの中でチリチリと燃えるこの鼓動は、握りしめても潰えない。
かつてなく、胸騒ぎがした。
それは奥底でぐるぐると渦巻いていた何かが、にわかに込み上げてくるようで。
「――――」
届かなくたっていい。確かめるように僕は、この想いを叫ぶ。
君の元へと駆け出して、ためらわずそれを放った。……それは、僕の〝理想〟だった。
〝理想〟はたちまちはじけとび、〝幻想〟が雲となって君を包んだ。君を静かに地面に下ろすと、それはたちまち掻き消えて、
――――砕け散った僕の〝理想〟から、〝色彩〟が溢れだした。
正直、今回はあまり自信がありませんね……
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