第五話 剣聖
騎士団を倒し、廊下を走り、階段を降りていくうちに、裏庭のような場所に出ることが出来た。
あとは、目の前の塀を乗り越えるだけで城から出ていけそうだ。
「案外、簡単だったな」
さてどう登ろうか。普通に筋力で登ってもいいのだが、それはセンスがない。やはり男ならば、格好良さを求めるものだ。誰も見てないんだけどね。
そして悩んだ末、俺はスキル欄に『浮遊』と書き込み、浮かんで乗り越えることにした。
スキルを発動しようとした時、急に後方から声がかかった。
「何をやってるの?」
振り返るとそこには、綺麗な赤色の長い髪を持った美女がいた。少し目つきが鋭いからか、王女とは違った美しさを持っており、例えるのであれば戦女神のようだ。腰には剣をぶら下げている。
「…ちょっと散歩をしてるんだ」
「ま、貴方のやっていることなんてどうでもいいわ。城の敷地内に入っただけで、立派な捕獲対象だしね。」
と言って俺に剣を抜いて向けてくる。
どうやら俺は城に忍び込もうとしていると思われたらしい。
いや逆だから。
だがどうしたものか。取り敢えず、レベル下げて無力化するか。うん、そうしよう。
俺は『鑑定』を使い、美女のステータスを見る。
名前 アリス
性別 女
種族 人間族
年齢 18歳
レベル 123
体力 252
筋力 185
耐久 150
敏捷 320
魔力 256
〈スキル〉
剣術LV7、身体強化LV6、柔術LV4、火魔法LV5、光魔法LV3、鑑定LV4
〈称号〉
剣聖と呼ばれし者
お、 剣聖だったか。確かに凄いステータスだ。だが剣聖ですら剣術はLV7か。
まあ自力でここまで上げたのだから凄いことか。
さて、レベルを下げようと思っていたが、俺も剣術のスキルがどれくらい使えるのか試してみたい。なので俺は、自分のステータスに『武器創造』を書き込む。武器がないからな。
思い浮かべるのは日本刀。博物館で一回だけ見たことがある、あの滑らかな等身。
「『武器創造』」
気づけば右手に日本刀を握っていた。切れ味も良さそうだ。初めてにしてはよく出来たな。
俺が自分自身を褒めていると、剣聖が驚愕の表情を浮かべて、
「その武器何処から⁉︎」
「どうでもいいだろそんなこと」
「良くないわよ⁉︎」
なんかこいつと仲良くできる気がしてきたんだが。
まあ今は剣術優先だ。こっちから行くか。
「行くぞ!」
「くっ!」
始めは身体強化を使わず、剣術のみで戦う。
ーーーーそうしようと思ったのに。
目の前に見えたのは、衝撃で気絶している剣聖だった。
やっべ忘れてた。俺のステータス。筋力が、身体強化使わなくてもえぐいわ。ステータス下げんの忘れてたー。
どうしたもんか。流石にここに置いておくのはなあ。
しょうがない。
「『叡智』発動、剣聖の家は何処だ?」
「ここから東に約二百メートル先です。」
いや、そういう答え方されても分かるわけねーだろ!
何このスキル⁉︎
でもスキル『転移』とか使えば行けそうか。
あ。
ーー最初から転移で城から抜け出せば良かったじゃねーか!!
ちなみにこれで一章は終了です。少し中途半端感はありますが……。二章からは王都生活編となっています。
途中、閑話を挟みたいと思っています。
これからもよろしくお願いします。