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異世界転移した日に世界最強になってしまったんですが  作者: ペテグリュー
第三章 獣国までの道のり
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第二十一話 勘違い


そこはお花畑でした。


俺は転移して勇者の遺跡に来ていた。

遺跡っていう遺跡はマチュピチュぐらいしか聞いたことがなかったので、楽しみにしていたのである。

しかもこれは寄り道であるため、転移で素早く来た。


だが目の前にあるのはなんだろう。

視界一杯に見えるのは花、花、花。

お花畑だった。

そしてその花は自然なものでなく、全て花壇に植えてあるのである。

まったくもって遺跡感がない。

てか遺跡と呼べなくね?

人もかなりいる。

ぶっちゃけフラワーパークである。

俺が落胆していると、両隣から、


「綺麗ですね」

「綺麗だわ〜」


女性受けは良いみたいだぞ、勇者の遺跡。

まさか勇者はこれを狙っていたのか⁉︎

相当な女たらしだな。

俺はなんの確証もなく、勇者をディスていると、花畑の真ん中に剣が刺さっているのが見えた。

そこには、大勢の人だかりがあり、どうやら剣を観賞しているようだった。

また長い行列もあった。

そうだここ観光地って言ってたな。

人やだなあ。


そう思いながらアリスとマーラと共に、剣の所へ向かっていく。

すると、一人の冒険者風の格好をした男が声をかけてきた。


「おう、お前も聖剣を抜きにきたのか?」

「まあ一応そうだな」

「だったらあそこから並ぶんだ。だが多分時間の無駄になるぜ?あれは無理だ」

「わかった、ありがとな」


俺達は長い行列に並ぶ。

前方を見ると、何人かの男達が雄叫びをあげながら、全力で聖剣を引き抜こうとしていた。

俺、ああいう熱い奴ら苦手なんだよな。

「もっと熱くなれよ」とか言うけど、そのまんまの意味で捉えたら、体温上がり過ぎて人間死ぬから。

というか人間に熱さは操れねえよ。

すると、マーラが話しかけてきた。


「暇ですね…」


まあ確かに暇である。


「暇だな」

「暇だわ」

「ご主人様、だったらイチャイチャしましょう」

「ほへ?」


暇だからと言ってその発想はなかった。

だが確かにマーラの言うことには一理ある気がする。

なにせ俺達はついこの間婚約したのである。

いわば新婚みたいなものであり、新婚さんいらっしゃいにも頑張れば出れる気がする。

なのに俺達は実際何もしてない。

夜の営みはまだ封印されているし、キスすらまだしていない。

だがな。マーラよ。

俺はこの人だかりでイチャイチャするような度胸は持ち合わせていない。

むしろリア充爆破し隊だった俺としては、自分を殺したくなる。

なぜ俺は見せつけているんだと。

それでは地球で見たバカップルと同じようなものである。

要するに、世の中には様々な人がいて、色々な気持ちをそれぞれの人が抱えているのだから、非リア、さらにぼっちを攻撃する、人前でイチャイチャすることは良くないことだ。

前の俺は腕組み程度のイチャイチャだったので、自分を許すことはできたが、さらにヒートアップした場合はヤバイ。

いいか!よく聞け、リア充諸君。

人前、イチャイチャ、ダメ絶対。

見せつけんなよ!二人でやれよ!

人の迷惑はかけちゃダメって習わなかったのか!

そこはリア充になっても変わらない心構えである。


「マーラ、それは帰ってからにしよう」

「帰ったらしてくれるのですか?」

「ああ」

「やりました!」

「夜空…わ、私も」

「分かってるよ。というか夜の営みはまだだからな?」

「なぜそんなにもご主人様は律儀なのか…」


マーラは嬉しい顔から、何か考えている表情になる。

そこから長々と会話をしていると、いつの間にか聖剣の前に立っていた。

見えたのは、綺麗な…いや違う何だこれは?

そこにあったのは日本刀である。

俺の武器創造で作った物とは少し違い、さらに刀身が長く、切れ味もよさそうだ。

だが日本刀が聖剣って…?

聖剣っぽくはないな。

この異世界、ちょいちょいそれっぽくないやつが、たまに出現する。

テンプレ異世界なのにな。


さてじゃあ抜いちゃうか。

俺はサクッと剣を引っこ抜く。

その瞬間、音が消えた。

見ていた観光客達が驚きのあまり、声が出せなくなっていたのである。

中には気絶している者もいるが今は放っておこう。


俺は刀をよく観察する。

うん、素晴らしいな。

これを俺の装備にするか。

そう決めていると、突然刀の鞘にあった宝石のような物が光り出した。

俺は気になって触ってみる。

すると俺は光りに包まれていき、意識を手放した。



〜〜〜〜〜〜〜〜



「勇者よ」


そんな声が聞こえてきて、俺の意識は覚醒する。

そこには黒髪、黒目の明らかな日本人である、イケメンがいた。


「勇者よ。よく剣を抜いた。」

「お、おう」

「すまないが、お前の質問には答えられない。これは残した映像でだからな」


映像か。

あれかバーチャルリアリティっぽいな。

ていうかそうか。


「あまり時間もないし、短く伝える。私は勇者だ。異世界人であり、人間族のために戦ってきた。この剣は俺の愛用していた剣だ。名をマサムネと言う」


やっぱ異世界人か。勇者だもんな。

というか剣の名前もうちょいアレンジするべきだっただろ。


「この剣は鍛え上げられた勇者にしか持つことができない。つまり君は数々の試練を乗り越え、人間族のために戦ってきた立派な勇者であろう」


いやすみません。まだ来て三週間くらいです。

仕事放棄したニートな勇者です。


「この剣が必要になったということは、人間族がまたもや生命の危機になっているのであろう。そんな勇敢な君に伝えておくことがある」


ヤバイ。なんか盛大な勘違いをされている。


「君は立派な勇者だ。そのことを自覚しろ。そして君なら絶対に人間族を救うことができる。諦めるな。信じろ。そして俺からも頼む。どうか人間族を救ってやってくれ」


待って、もう聞いてると、心が痛くなってきた。

ごめんマジでゴメン。

従いたくないから、勇者の仕事を放棄して、チートでいきなり強くなったクソ野郎です。

もう死にたくなってくるな。


「う、すまないが時間だ。大丈夫。お前ならできる」


そして俺の意識は遠のいていった。

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