第二十話 大きなかぶ
新しい朝がきた。
希望の朝が。
いや果たして希望か?
毎日の仕事や学業、家事などが辛い人は大勢いるはずだ。
そんな人に対しては絶望の朝とも言える。
なんせやらなければならないことができるからだ。
毎日やって来る朝。
これはある意味一日の試練の始まりとも言える。
そんな朝を楽しめるのは、人生を謳歌している者であり、すなわちリア充である。
爆発しろ。
いや今の俺はそっち側だった。
そんなことを朝から考えながら、起き上がる。
両脇にはアリスとマーラが寝ている。
結局二人は言い争った結果、この状態に落ち着いたのである。
ぶっちゃけて言うと、なかなか眠れなかった。
こんな経験なかったからな。
そして絵面的には何かそういう行為をしたようにも見えるが、俺はいたって正常な童貞である。
俺は二人を起こしにかかる。
度胸のある者はここで何かをするのかもしれんが、俺は声をかけるだけである。
俺はジェントルマンなんだ。
ヘタレじゃないぞ?
勘違いするなよ?
「おーいアリス、マーラ、起きろ」
二人はムニャムニャと言い、目をこすりながら起きてくる。メッチャ可愛いな。
「おはよう夜空」
「おはようございます。ご主人様。……というか私ちゃんと奴隷できていない気がします」
まあ確かに主人に起こしてもらう奴隷って…。
奴隷っぽくはないな。
まあマーラは俺の婚約者だからな。
「いいよいいよ。なんなら奴隷契約解除するか?」
「…!いやそれはいいです。私とご主人様の愛の結晶ですから」
愛の結晶…なのか?
いや隷従契約だがな。
まあマーラがそう言っているので、その件については放置しておこう。
するとアリスが、
「何が愛の結晶よ!ただの奴隷契約じゃない!」
うん、それ俺が言いたかったやつや。
「羨ましいんですか?」
「………羨ましくなんてないもん」
おい、間があったぞ!間が。
自分から奴隷になりたい婚約者とは。
誰かググってくれ。
まあその話は置いておいて、俺は明日この街を出ようと思っている。
取り敢えず、そこまで急いでいるわけでもないし、マーラもゆっくり行きたいと明言しているのだから。
そして思ったんだが、俺はまだ旅をちゃんと楽しんでない気がするのだ。
化け物でも観光がしたい!
この異世界にしかないものを体験して、楽しんでみたい。
ということでこの街を一日楽しむ。
アリスにオススメポイントを聞く。
「この街ねえ…うーんとね、やっぱり有名なのは勇者の遺跡かしら」
「勇者の遺跡?」
そういえばなんか騎士団長が勇者がどーたらこーたら言っていたな。
詳しくアリスに聞いてみると、この街の近くには勇者の遺跡という場所があるらしい。
そこの遺跡には、伝説の勇者が使っていたと思われる聖剣が、突き刺さっているらしい。
だがその剣は誰にも抜けないそうだ。
アリスも抜こうとしたのだが、抜けなかったらしい。
見兼ねたレギオスの王が国民で協力し、抜こうともしたらしい。つまり、大きなかぶ大作戦だ。
だが国民総出でもかぶは抜けなかったらしい。
どんだけヤバイんだよ。
この件があり王国、及び他の国々は聖剣を放置することを決め、観光地的な物となっているらしい。
「それに夜空なら抜けるかもしれないし」
「ああ、確かにいけそうだ。だが観光資源なのだから、取ってしまっていいのか?」
「ああ大丈夫よ。聖剣を抜いた者が所有者になるらしいし。それにもう皆諦めてるから」
「それなら完璧だな」
面白そうでもあるし。
おじいさん一人だけで、大きなかぶを抜いてみせるぜ。




