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異世界転移した日に世界最強になってしまったんですが  作者: ペテグリュー
第三章 獣国までの道のり
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第十七話 門の前で


「行きましょ!」


そう言ってアリスは家のドアを開けた。

あれからアリスの荷物を用意し、ついに準備が整った。

この旅、なぜか一番乗り気なのがアリスであった。

準備している間も、何か歌を口ずさみながらウキウキしていた。


アリスは無断でこの国を出て行くわけだから、バレたらエグいことになりそうだけどな。

まあ本人は気にしていない様なのでその問題は放置しておこう。


さて俺達は徒歩で行くことを決めた。

なぜかと言われると、これはマーラの意見である。



こんなやりとりがあったのだ。


「マーラ家族が心配なんだろ?転移で行くか」


転移の方が早く移動できるからだ。

俺は当然転移で行こうとしていた。

するとマーラは少し寂しそうな顔をして、


「いいえ歩いて行きたいです。それにご主人様、それだと旅ではないですよ?」


と微笑みながら言ってきたのだ。

この言葉を聞いて、俺はマーラの気持ちが分かってしまった。

叡智さんによるとクーデターが起きたという話だが、もう時間が経ち過ぎてしまっている。


きっと心のどこかで、家族達のことを諦めているのだろう。

もう生きてはないと。


だがまだ完全に諦めたわけではない。

だからこの旅での時間では希望を持っていられる。

まだ分からないから。まだ決まったわけではないから。

そう思うなら行かない方がいいんじゃないかと思うが、きっと彼女なりにケジメをつけに行こうとしているのであろう。

ゆっくりでも現実に立ち向かおうとしている。


そんなマーラの意見を今回は尊重した。

俺が持っていない強い心を持った少女だから。

やはり買ってよかったと思う。


「よしアリス、マーラ。行くか」

「そうね!」

「はい!ご主人様!」


そうして俺達はアリスの家を出た。

あばよマイホーム。いやマイではないな。


俺とマーラはこの辺のことをあまり知らないので、アリスに案内してもらう。

どうやらこの国からは東門から出るそうなので、東に向かって行く。

早朝なので、あまり人はいない。

人混みあんま好きじゃないからな。

素直に嬉しい。

もうずっと早朝で生活しようか。

早朝に生活する動物はなんて言うんだ?

朝行性?


そんなことを考えながら数十分歩くと、いつの間にか大きな門が見えてきた。


アリスは俺達に「ちょっと待ってて」と一言言うと、フードを深くかぶり、受付のような所に向かって行った。

なんでフード?

ああ変装か。

いやもう少しなんかあっただろ。


だがアリスはバレなかったようですぐに門が開いた。

門が開いて王国の外が見えると、これから旅なんだという実感が今更湧く。

まあ地球じゃ旅なんてしたことなかったからな。

興奮するのも無理はないだろう。

気持ちを抑えるために俺は二人に声をかける。


「行くか」

「はい!ご主人様!」


するとマーラは俺の右腕に抱きついてきた。

おい待て。これは違う種類の興奮になってしまう。


「何やってるのよ!」

「抱きついているだけですが?」

「ていうか貴方奴隷のわりに主人に馴れ馴れし過ぎてない?」

「いや私達は契約をしましたので…」


そのマーラの言葉を聞き、アリスの顔は驚愕の表情になる。


「ねえまさか夜空?」

「はいなんでしょう?」


敬語になってしまった。

なんか有無を言わせない威圧がアリスから放たれている。


「貴方マーラと契約したの?」

「いや奴隷契約ならしたぞ?」

「違うわ、そっちじゃなくて!夫婦の契約よ!」


夫婦の契約?

そんなもの俺はマーラにした覚えはない。


「はい、ご主人様は私の耳を触って下さいました」

「おいまさかマーラ!」

「はい、獣人が耳を触らせることはプロポーズなのです」

「そして耳を触ると…」

「はい。受け入れたことになりますね」

「何やってるのよ!!」


アリスの怒りの声が聞こえてくる。

まじかよ。マーラ策士!


「いやでもあの時会ったばかりじゃなかったか?」

「一目惚れみたいなものでしたから…」


そう言ってマーラはくねくねする。

俺のどこに一目惚れする要素があるのだろうか。

研究しよう。

いや俺が生きている間では解明できなさそうだ。

だが知らなかったとしても俺が触ったことに変わりない。

それにマーラはいい子だしな。

突然だけど認めよう。俺には勿体無いぐらいだが。

喜んでくれるのなら。


「分かった責任は取る」

「やりました!」

「何言ってるのよ!わ、私だって…」


そういけばアリスも俺に好意を向けてきてくれていたな。

本当俺のどこがいいのやら。

俺じゃ無理だから誰か解明してくんないかな。

ノーベル賞与えるからさ。安心しろ、金ならある。

だがマーラだけというのも不公平である。

アリスにも俺は嫌いな要素など一つもない。

言うとしたら働かせようとするところだが、最近は言われないのでむしろ好意しかない。

本当俺には勿体無いな。この二人は。


「安心しろアリスもだ。俺達はずっと一緒にいよう」


童貞ぼっちだが頑張りました。

もはやプロポーズである。

いやプロポーズだ。


すると二人は幸せそうな笑顔を向けてきながら、


「「はい!」」


と言ってきた。

受付の人や周りにいた人が拍手を送ってきた。

やめて恥ずい。死ぬから。


しかし自分でもまさか突然門の前で女性二人にプロポーズすることになるとは思ってもいなかった。

人生何があるか分からないものだ。

まあ俺は幸せだからいいや。ハーレムだけど。

人生は楽しんだもの勝ちだ。











なんか急展開になってしまった気がする…。

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