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異世界転移した日に世界最強になってしまったんですが  作者: ペテグリュー
第二章 レギオス王国
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閑話 第一王女


マーラ=パレストは獣国の国【パレスト】の第一王女である。

王族であり、可憐な美しさを持つマーラは、幼き頃から多くの獣人を虜にした。


だが彼女のことを詳しく知った獣人はすぐに彼女の元から去っていくのだ。

なぜなら彼女の才能が、王族にも関わらず凡人並みだったからである。


獣国は実力主義の国だ。

力の強い者が上に立ち、力がない者は強者に従う。

まさしく弱肉強食の世界だ。


マーラの父、現王も圧倒的な力を他者に見せつけ、その地位を築いてきた。

つまり獣国の王とは獣人最強の者がなるのであり、決まって王の血が繋がっている王族は強者であるのだ。


だがマーラは弱者ではないものの、平凡な才能を持った王族であった。

獣人が惹かれるのは強い者であり、逆に弱き者は蔑みの対象となる。

そしてそんな平凡な獣人が王族でいいのか、という不満を持った者も現れていき、マーラはどんどん孤独になっていった。


唯一、マーラに優しくしてくれていたのは父、ルモスと侍女のアンナだけであった。

母や兄弟こそ優しくしてくれなかったものの、父だけは深い愛情で見守っておいてくれた。

時には守ってくれた。

なのでマーラは父だけには深い親愛を持っている。

侍女のアンナは力で差別をしない優しい心を持っていた。

そんな者はごく少数であり、アンナも外ではマーラに優しくできなかったものの、王城の中では何かと尽くしてくれ、その持ち前の優しさで何度もマーラは自分の孤独の辛さを癒してくれた。

そんな差別をしない優しさを持ったアンナを、マーラは尊敬している。


そしてそんな二人がいてくれたからこそ、マーラは楽しく過ごすことができたのだ。

だがついにその日がやって来る。


現王ルモスの部下であるガルドーラが、王の座を狙い、クーデターを起こしたのである。


ガルドーラは王族に一切情報を知られずに、何万の獣人に協力を呼びかけていたのだ。


なぜここまでの勢力が集められてしまったのかというと、それはやはりルモスに反対する者が多かったからだ。

ルモスは平和主義者であり、他の国々とは暴力ではなく、言葉で渡り合っていたのだ。

そうなるとやはり、戦争がなくなっていく。


そこに不満を持ったのが強欲な獣人達である。


なぜ敵国を倒し、全てを奪わない?

俺達にはその力があるというのに。


そう考えた獣人達は、同じ意見を持っていたガルドーラに呼びかけ、協力したのである。


そして王城は何万もの獣人に囲まれる。




〜〜〜〜〜〜〜〜



「王女様!逃げてください!奴らがやってきます!」


危機迫った声で呼びかけてきたのは侍女のアンナである。

私もこの状況がどういうことか分かっていた。

早く逃げなければ。

そう思っていた。


だが、父を残して置いてはいけなかった。

私を愛してくれた父親。

幼いころの私にとってどれだけの救いであったか、想像もできないであろう。

そんな父親が狙われているのだ。


自分が何もできないのは知っている。

自分が平凡であることも知っている。


だが一人だけ逃げるのは辛かった。

だから全力で抗議した。


「いいえ私はここに残ります!」

「何をおっしゃっているんですか!よく聞いてください!ここは危険なんです!早く!」

「父を置いては行けません!」


どれだけアンナが説得しようもしても私は抗議を止めようとしなかった。


だが私はついに黙ることになる。


「王女様のためです」


そんなアンナの優しさを含んだ声を聞いた瞬間、アンナの姿が目の前から消え、私は意識を手放したのだ。

今思うと私はアンナに気絶させられたのだろう。



気づけば馬車の上だった。

これまで乗ったことのないようなオンボロの馬車。

きっとそこまで切羽詰まっていたのだろう。

他の獣人も多く乗っていた。

どこへ向かっているかすら分からなかった。

不安しかなかった。


そしてそんな私にさらなる試練がやって来る。

人間族の冒険者に出会ってしまったのだ。

そしてその人間族は私達を見た途端、まるで良いカモを見つけたかの様な顔で、襲いかかってきたのだ。

なぜ襲いかかってくるのかが意味不明であった。

父が王になってから、戦争はなかったはずなのだ。

私には分からなかった。

そして私は再びそこで意識を手放した。



気づけば檻の中にいた。

見たことのない様な汚い部屋。

まずは状況確認。

と思ってキョロキョロと周りを見渡そうとすると、不意に耳と右腕に痛みを感じた。

まるで何かを思い出したかの様に、痛みはどんどんと酷くなっていき、苦しむことになった。

なんだと思い、左手で確認して…気づいた。


腕がない。耳がない。


そこから先はただただ叫びまくった。

発狂した。

人間族がムチを打ってきていたが、そんなものは気にもしなかった。


なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで




数日経ち、私は諦めた。

理不尽を受け入れた。

こういう人生であったのだ。

私はこうなるしかなかったのだ。

そう言って割り切った。


発狂したせいかどんどん支給されるご飯の量も少なくなってきている。

私は近いうちに衰弱死するだろう。

私は死ぬのだ。


そんな時に私は救われる。



私はご主人様と出会ったのだ。










次から三章に入ります。

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