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異世界転移した日に世界最強になってしまったんですが  作者: ペテグリュー
第二章 レギオス王国
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第十六話 アリスの気持ち


なぜ私は怒っているのだろう?


家を飛び出してきた後、アリスが一番に思ったことだ。

夜空とは特に何もなかった。

ただ家に同居され、お金を払わされ、邪魔だと思ったこともあった。


ただあるとすれば、夜空は他の人と違って私を怖がらなかった。

本当の私を見てくれた。



だが実際それだけだ。


それだけのはずなのに。

なぜ私は怒るのであろう。


あいつがどこへ行ったっていいじゃないか。

確かに孤独には戻るけれども、大して私にダメージはないはずなのだ。


それでも私が怒る理由。


多分それは私は夜空といる時間が好きだったのだ。


例え夜空が働かなくても、化け物であったとしても、夜空との時間は私にとって、とても楽しいひと時だったのだ。

この三日間の依頼中だって、早く帰りたくてたまらなかった。


そしてそんな楽しいひと時を作り出してくれた、夜空のことを好いているのだ。

前のような特別視ではなく、更に強いもの。

私は夜空を愛しているのだ。


だからさっきも夜空があの奴隷に膝枕されているなを見た時、一瞬頭が真っ白になったのだ。


てかなんなのよ夜空は!

そんなことのために奴隷を買ったの⁉︎


そして夜空を好いているからこそ、夜空がたった一言で、更に女連れで旅に出ることが許せなかったのだ。


あの奴隷も、夜空のことを好いているようだった。

このままでは夜空を寝取られてしまう。


ここで私がすべきこと。


それは夜空に付いて行くことだ。

どんなに邪魔にみられてもいい。

だがどんなことをしてでも彼に付いて行く。


なにせ私が初めて好きになった男なのだから。

いつか私に振り向かせる。


実のところ私は生粋の負けず嫌いなのだ。

あの奴隷にも負ける気はない。

そして絶対に諦めはしない。

覚悟はもう決めた。


家に帰ろう。

そしてお願いしよう。

旅に連れて行って欲しいことを。

理由を聞かれた時はこの思いを伝えよう。


ただ私は素直になれないからなあ。

頑張らないとなあ。


そんなことを考えている時に、アリスの目の前に一人の男が現れた。



〜〜〜〜〜〜〜〜



「あーアリス?」

「うわぁ!夜空⁉︎」


目の前に現れただけでここまで驚かれる。

いや驚くのは当然か。

いきなり前に人が出てくるんだ。

それはもはや、俺だったらちびるレベルだな。


だがなんと声をかけていいかが分からない。

まずアリスが怒った理由も分からないのだから。


うーんどうしようか、叡智に頼るか?


そんなことを考えていると、アリスの方から声をかけてきた。


「ねえ夜空」

「…なんだ?」


するとアリスは深く深呼吸し、胸に手を当てながら、


「私も旅に連れて行って欲しいの」

「ふぇ?」


俺は驚きのあまり変な声を出してしまった。

なぜ急に、とも思ったがなによりアリスはこの国の人間だ。

そして剣聖でもある。

この国の、いわば日本で言う人間国宝みたいなものであろう。

この国でやるべきことも多いだろう。

それを全て投げ出して、付いて行きたいと言ってきたのだ。


何かの冗談かと思い、アリスの顔を見るも、その眼差しは本気であった。

まるで覚悟を決めたような顔だ。


ただここで一つの疑問が浮かび上がる。

それはどうしてそこまでして俺に付いて行きたいのか、ということである。


「なあなんで連れて行って欲しいんだ?」

「……それは」


アリスの顔は急にトマトのように真っ赤になる。

だがアリスは自分の顔を叩くと、さっきよりも深く深く深呼吸をして、こう言ったのだ。


「夜空のことが好きだから」

「ふぇ?」


また変な声を出してしまった。

だがさっきアリスが言った言葉は、俺がこの人生で聞いたこともないようなものだったからだ。


アリスが俺のことを好き?

どうしてそうなった?

俺がアリスにやったことと言えば、家に居候し穀潰ししていたぐらいである。


「お、俺のどこが好きになったんだ?大して何もやっていないと思うんだが…」


するとアリスは更に顔を赤くさせながら、


「夜空といる時間が好きなの!」


と言ってきた。

ヤバい。心臓の鼓動がどんどん早くなっていくのを感じる。

これは完全な告白だ。

俺はこれに答えを出すべきなのだ。

なのに緊張で声が出そうにない。

いつも自分でも偉そうにしていると思っているのに、なぜこういう時だけ、こうなるんだ!

これが童貞ぼっちの固有スキルか⁉︎


するとアリスは追い討ちをかけるように、上目遣いでこう言ってきた。


「ねえ夜空、私を連れて行って?」


もう駄目だ。

と思った時、別の方向から綺麗な声が聞こえてきた。


「私のご主人様を取ろうとするとは!」


そして俺とアリスの間にまるで稲妻のように入って来た。

マーラである。

アリスはマーラのことを強く睨むと、


「私の邪魔をしないでよ!」

「いえ、さっきから話を聞いていましたが、旅には私一人で充分です」

「そんな…ねえ夜空連れて行ってはくれないの?」


断るのは無理だ。

ここまで俺に好意を向けて来てくれているのだ。

俺はなんとか声を絞り出す。


「…連れて行くに決まってんだろ」

「本当?やったあ!」


ぴょんぴょんとアリスが嬉しそうに跳ね喜ぶ。


「ご主人様がそうおっしゃるなら…」


マーラもなんとか納得して食い下がったようだ。

だがマーラは一言付け足す。


「やはりご主人様はハーレムを作ってしまいますか…」

「おい待てマーラ。ハーレムってどういうことだ?」

「そのまんまの意味です、ご主人様。まあご主人様の一番は私です。せいぜい頑張ってくださいねアリスさん」

「言っておくけど私は負けるつもりはないわ!私が夜空の一番なんだから!」


待てこの状況。

俺は二人から好かれている?

アリスのことは意外だったが、まさかマーラまでもだったとは。

だが俺はハーレムを作る気はない。

そんなラノベの主人公みたいな真似は出来ない。

ただえさえ童貞ぼっちなのに。

そのことをアリスとマーラに伝えるが、全く聞いてくれない。どうやら俺のハーレムは確実化したようである。



一言言わせてもらおう。





異世界転移した日に世界最強になったら、童貞ぼっちでもハーレムが出来たんだが。






これで二章は終わりになります。

次は獣国の予定です。

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