第十三話 差別
まずは荷物の準備だ。
取り敢えず食料を買い込まないといけない。
腹が減っては戦はできぬって言うし、旅の途中で食料が無くなるのは困る。
まあ腹が減ってても戦は出来ると思うんだけどね。
なのでマーラと商店街へとやって来ている。
昼頃来たからか、商店街は多くの人で賑わっている。
地球で聞いたことのあるような、売り込みの声が四方八方から聞こえている。
「ご主人様。さっきから周りの人が私を見ているんですが…」
そう、さっきから周りの奴らはマーラに軽蔑に似た視線を向けてきている。すぐさま俺が睨み、顔を背けさせるのだが、どうやら気づいてしまったようである。
やはり獣人のことを多くの人は差別しているようである。マーラの顔を見ると、多くの人は好意の視線を向けるのだが、耳や尻尾を見るとすぐさま軽蔑の視線に変わる。
俺からすれば気分の良いものではない。
「早めに買い物を終わらせよう」
「…?分かりました」
〜〜〜〜〜〜〜〜
買い物には意外と時間がかかってしまい、気づけば夕暮れ時になっていた。
早めに終わらせようと思ったのにこれかよ…。
俺とマーラは二人でアリスの家に帰ろうとしていた。
「意外と時間がかかっちまったな」
「そうですね。でも私はご主人様とデートが出来て、楽しかったですよ?」
「冗談言うなって。本気にしちまうから…」
「…別に冗談ではないのですが」
最後にマーラが小声で何か言った気がするが、上手く聞き取れなかった。
童貞ぼっちこと俺は、些細なことでも勘違いしてしまうのだ。
現に中学の時は痛い目を見た…。
とそんな時だった。
突然人ごみの中から、一人の男が短剣を持ち、マーラに斬りかかってきたのである。
一体なんだと思いながら、『武器創造』で日本刀を創り出し、軽々と受け止める。
マーラは怯えており、俺に抱きついてきている。
マーラのことを思い、少し怒気を含んだ声で言った。
「なんだ?お前は」
「なぜだ!なぜ庇う!獣人は敵だ!皆殺しだ!」
と男がヒステリックに叫び始める。
なんか頭おかしい奴に出会ってしまったな。
「なぜそんな獣人を嫌う?」
「俺の親友は獣人との戦争によって殺された!なぜ!なぜ殺されなければならなかった!獣風情に!」
なんだこいつは。
というか人間族は獣人とも敵対しているのか?
まあ策はあるので、獣人の国には行けるだろう。
今はそれより、マーラを怯えさせ、馬鹿にしたこのクソ野郎の断罪だ。
「うるせえよ」
俺は男の顎に蹴りを一発入れる。
すると男は弾丸のように吹っ飛んでいき、見えなくなった。
うん、手加減はしたからきっと死んでない。
多分…ヤバイ自信がない。
「ご主人様……」
マーラが泣きそうな顔でこちらを見てくる。
なんでこんな美少女を斬ろうとするかね。
というか全国の獣っ子が好きなオタクに謝れよ。
「取り敢えず帰ろう」
すぐにこの場を後にしたかったため、俺達は転移した。




