第十一話 マーラの治療
転移でアリスの家に戻ってきた。
確か名前はマーラだったな。
マーラをベットに座らせる。
いやそういうことするんじゃないよ?
童貞ぼっちの俺にはそんな度胸はない。
「『叡智』発動。マーラを治すためには」
『光魔法の完治を使うべきだと思います』
光魔法か…。
確か俺は全属性を含んだ、スキルの魔法LVMaxを持っていたはずだ。
そういえば俺は魔法をまだ使った事がなかったのか…。
初魔法だ。失敗したくない。
まあスキル『魔法』を持っている時点で、使い方が頭に入ってるから失敗するはずがないんだけどね。
俺はいまだ諦めた表情をしているマーラに向けて、手を広げ詠唱を開始する。
「光の精霊よ……」
いやちょっと待てよ。詠唱面倒臭くね?
しかも俺、噛まずに言える気がしないんだけど。
生麦生米生卵の早口言葉すら言えないからなあ。
ここはいっちょ無詠唱を習得したい。
俺は『操作』で『無詠唱』とステータスに書き込む。
良かった。習得出来たようだ。
以前、家事スキルが習得出来なかったことから、この世界にないスキルは習得出来ないと分かったので、書き込む時がドキドキなんだよな。
そして俺はもう一度、マーラに向けて手を広げ、
「『完治』」
と唱えた。
すると、マーラの傷が一瞬にして癒えていき、なくなっていた右耳と右腕も再生した。
あとは綺麗にしてやるか。
「『浄化』」
浄化によって、マーラの汚れが消えていく。
そして次の瞬間、俺の目に映ったのは整った顔立ちに、太陽のように輝いている綺麗な金髪、そして可愛らしい獣耳と尻尾を持った狐の美少女であった。
想像より容姿が美しかったので、少し驚く。
「ふぇ?」
マーラが変な声を出した。驚いているのだろう。
というか声綺麗だな。
地球だったら、声優さんとしてやっていけるんじゃないか。
するとマーラは自分の体をペタペタと触りながら、
「あれ?耳は、右腕は、傷は…?」
「落ち着け、全部治った。自分で見てみろよ」
そしてアリス愛用の手鏡をマーラに渡す。
許せアリス。近くにあったんだ。
マーラは自分を写した手鏡をまじまじと見つめ、それから目に涙を浮かべると、俺に抱きついてきた。
「わ、わ、私ぃ。もうダメだと思ってたんですぅ」
と俺に抱きつきながら号泣する。
こういう時の対処法が分からない童貞ぼっちです。
だがきっと辛すぎたのであろう。
体の一部がなくなったことも、奴隷商にいたことも。
王女ならなおさらだ。
俺は優しく静かにマーラの綺麗な金髪を撫でる。
耳が当たりそうになるが、触らないように注意する。
嫌がるかもしれないからな。
するとマーラは安心したのか、俺の胸に顔をうずめて更に泣き始めた。
俺はずっとマーラを撫でていた。
〜〜〜〜〜〜〜
マーラが泣き始めて一時間ほど経っただろうか。
急にマーラが静かになったので、どうしたと思い、よく見るとスヤスヤと眠っていた。
起こそうと思ったが、その寝顔を見てやめた。
とても安心した表情だったのだ。
きっと奴隷商では絶対に見せなかったであろうこの寝顔。
この表情が見れただけでも、買って良かったと思う。
今は一緒に寝るとするか。
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