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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

元ヒロインは忠告する

作者: 柊 風水

途中で残酷な描写・性同一性障害が出てきます。

無理な方はお戻りください

「えーと。こんにちは。皆さんお元気でしょうが。

知らない方がいるかと思いますので改めて自己紹介をさせていただきます。

私の名前は安藤あんどう幸也ゆきえ、一年A組陸上部高跳び専門です。

嬉しい事ですが高跳びでレギュラーを任されており、その責務を全うする為に日々精進させて貰ってます。

何故この様なビデオレターに出る事になったのは、私がある事情で皆様の前に出るを控えているからです。そして、私のせいで騒動が起きていると聞き、そして苦しんでいる人がいると聞いていても経ってもいられなく、せめてこの様なビデオ出演をさせていただいています。


ここで宣言します。

私、安藤幸也は一切の虚偽を言わず、本当の事を話す事を宣言します。



では、今問題になっている事をを確認させてもらいます。

一、私が数人の男性と不純な行為な事をした事。

二、私が大神おおがみ麗羽れいはさんにいじめられている事

三、私が大神麗羽さんに階段から突き落とされた事。

これが今現在問題となっている事です。これに当事者である私が包み隠さずお答えさせて貰います。


まず一つ目ですが、この数人の男性がさる大企業の跡取りや大神さんの婚約者である事が問題とされてます。しかも皆さんが私のせいで堕落していると聞いて大変驚いてます。

結論を言います。私は彼等とはそのような仲ではありません。なぜなら私は男性とお付き合いすることは絶対にあり得ません。

それに私はこの時初めて彼らの名前を知りました。

私とは別のクラスだったり学年が違ったりと接点がありませんし、唯一のクラスメイトである青地あおち君は大神さんの婚約者である事は入学同時から知っていますし、それほど親しくない筈です。

ただ、交流はそこそこありました。数回何気ない会話をしたのですが……。ああ、後食堂で同席したのか何回がされて話掛けられたら応対したとは思いますが、内容については申し訳ありませんが覚えてません。

それそんな事したら私が父に殺されます。比喩ではありません本気でやります父は。

父は警察官でそれも幹部なんです。それはそれは厳しい方で人道に反する事が大っ嫌いな人です。

中学の頃に私のクラスでいじめがありました。私はその時傍観者をしていたのですが、これが父にばれた時どんな目に遭ったのか私と同中の方はご存じかと。


顔をぱんぱんに腫れるまで殴られ、頭を丸坊主にされてわざわざいじめられている子の家に両親と一緒に謝りに行きましたよ。


いや~あの時は本気で殺されると思いましたよ。父の理論は『傍観者の中で何もしなかった奴、無関心な奴は加害者と同じ』な方でしたから。まあ、そのお陰でいじめがなくなったのですから結果オーライですね。

今度何かやらかしたら冗談抜きで父に殺されますから、絶対に複数の男性とお付き合いすることはありえませんし、するつもりもありません。今後もそのつもりです。


二つ目……私が大神さんにいじめられている? 私、いじめられてたんですか?

そりゃあ一年で部活のレギュラーを取ったら妬みや嫉妬は向けられるのはしょうがないと思いますし、陰口を言われている姿を私は何回もありましたけど、その中で大神さんがいませんでした。

第一大神さんは陰口をする位なら、相手に直接言う方なのは彼女を知っている人は分かっているはずですよ。

あ、数回注意された事はありましたけど……確か『提出物を期限ギリギリで出さない』『あまり男子にボディタッチは止めた方が良い』だったかな。

提出期限終了ギリギリまで提出しないから、委員長である大神さんから『社会人になったら大問題だよ』とキチンとした理由だったし、私は自覚はなかったけどボディタッチを男子にしてたんですよね。肩組んだり肩に軽く触れたりする程度だったけど、いらぬ誤解生むから止めた方がいいと大神さんに言われて、部活仲間からも確認したら本当だったからそれから意識的に男子のボディタッチをしない様に気を付けました。

……そう言えば青地君達に『何で最近触れてくれないんだ?』と聞かれて上の事を正直に話した様な……

後、モノが盗まれたって、まさか財布の事を言ってるんですか? 体育の後に財布が紛失してモノがモノだから盗まれたんじゃないかと言ったかもしれませんが……直ぐに部活動バックに入ってたのを見つけましたけど。アレは大神さんが『部活動バックの方には?』と言われたから見つけられました。

大神さんがいじめをしたなんて事実無根です。誰ですかそんな誹謗中傷する大馬鹿は!?


三つ目は、…………コレ、侮辱罪か名誉棄損で訴えられますよ?

あの時は朝連で右足首をひねってしまってそれを庇いながら階段を上ったんです。でも、途中で足首が痛んでそれに気を取られたら足を滑らせて落ちたんです。あまり登っていませんからお尻がちょっと痛くなった程度ですみましたけど。

大神さんは階段を下ってましたから私の目の前にいました。でもそれはかなり上の方でした。突き落とすどころか助けようとしたのか手を伸ばしてくれたんですよ? 保健室まで運んだのは誰だったかあの時一緒にいた部活仲間やその場にいた生徒は知ってますよね?」






「このビデオレターを見ている事は恐らく青地達が大神さんを大勢の人の前でありもしない罪を断罪しようとしている最中だろう。

しかも事の発端はの為だから、に惚れているからと聞いて思わず笑ったよ。

俺が何時そんな事頼んだんだよ。俺は人前で断罪しろって頼んだことあるか? それになあ、俺はお前らに恋する事は絶対零度レベルにありえない事だ。



だって俺事・・・・・安藤幸也は・・・・・男だからだ・・・・・


お前ら性同一性障害・・・・・・を知っているか? 芸能人でいたろ? 世界大会で二冠を取った人とかさ。アニメとか漫画とかドラマとかで知っている人もいるかと思うけど。

俺がソレなんだよ・・・・・・・・。俺小さい頃からずっと自分が女とは思ってはいなくってさ。好きになるのは女ばっかだからレズビアンかと思ったけど、でも、心奥底でずっと思ってた事は『どうして俺は女の格好をしなければならないだろう』だったんだ。

何年も悩んで悩んで、この間家族に絶縁覚悟でカミングアウトした。

そしたら親父がよ、あの型物の親父が『気付かなくってすまなかった』て頭下げたんだぜ? お袋も『ちょうど男の子が欲しかった所なの』て言ってくれてさー。中学生の妹の方はまだ混乱しているけど、思春期真っ盛りの時にこんなディープな話をしたらそうなるわな。まあ、あの子は良い子だからそのうち落ち着いてくれるだろう。

俺がこの場にいなかったのはこの学園を辞めたからだ。『女としての私』しか知らない奴ばっかだし、何より『私』がいたら迷惑掛かる人がいるしね。

俺の様な人間を受け入れてくれる学校があったんだ。その学校女子でもズボンがあるからな。そこで安藤幸也ゆきやとして生きていくよ。そんで成人になったら男になる手術を受ける予定だ。

それに俺は恋人がいる。言っとくが女の恋人だぞ? 名前は左宮幸さみやさち。もしかしたら知っている奴もいるかもしれない。


そう。中学時代に青地達にいじめられていた左宮幸だ。


あの騒動の後ちょくちょく交流があって、カミングアウトを始めて言ったのはコウだ。そして親父達にも言う様に説得したのも幸だった。幸の家族も俺達の仲を認めている。幸の仲も順調だよ。

それと幸に青地達の話をしたら少し苦笑いをして『あの人達まだやっているんだ』て呆れられてたぞ。

そういや幸をいじめた理由が少しふっくらした体型だからで、いじめの理由を作る為に盗難事件の冤罪を作った事周りは知っているはずだ。


これは安藤幸也ゆきえとしての青地君達の最後の忠告です。

一つ、世の中自分中心に回っていると考えるのを止めた方がいい。

二つ、人を貶める行為は自分に百倍返しで帰ってくる事を分かった方がいい。

三つ、大神さんは貴方のそんな所を知っても結婚を考えてくれる聖女の生まれ変わりの様な優しい方だから大切にした方がいいですよ。



まあ、この動画を見ている事は婚約破棄の後だろうがな。


陸上部の皆、先生方、クラスの皆、そして大神さん。迷惑掛けてごめん。アンタ達に出会えて本当に良かった。今度は『ユキヤ』として再会するかもしれないけど、その時は良かったら酒を一杯飲みに行こう!」














そうして安藤さん、いや、安藤君は笑いながら手を振ったところで。終わった。


修了式に大勢の生徒や教師達の眼の前で高らかにありもしない罪を断罪をして婚約破棄をする馬鹿に、嫌気がさしている時に厳つい顔をした男の人を先頭に、私の両親と元婚約者ばか達のご家族の方がいきなり体育館に入って来たのだ。そして父さんが私の前を立ちふさがってくれて、母さんは私の肩を守る様に抱いてくれた。馬鹿達の家族は頭や頬を殴ったり叱りつけたりしながら私との距離を離してくれた。

厳つい男の人が講壇に立って「私は安藤幸也の父親です」と自己紹介をした後、一枚目の安藤『ユキエ』のビデオレターを私達に見せた。

いじめられていると言われている安藤さんが『わたしがいじめをしていない』と証言をしてくれた。でも、彼女が言わなくてもこの学園にいる全員が知っている事だったけど。

だけど馬鹿達は未だ悪あがきをし続けて、あまりの醜悪さに私も両親もその場にいる生徒教師も彼等の親でさえ呆れていた。

安藤さんの父親は眉ひとつ動かさず、能面の様な無表情のままで(ソレが逆に恐ろしい)もう一つのディスクを入れた。

それが安藤『ユキヤ』のである。


『ユキエ』は絵本の可憐で可愛らしいお姫様の様な美少女でしたが、『ユキヤ』は打って変わって肩まであった髪をバッサリと切り、スカートからズボンに服を変えるだけで中性的な美少年にチェンジするとは思いもしなかった。憑き物が落ちて本来の『安藤幸也』が全面的に出たのであろう。


『ユキヤ』のカミングアウトに全員呆然としていたが、何人かは何か悟った様に頷いていた。その人達は安藤君と親しくしていた部活の仲間やクラスメイトで何か察していたのでしょう。

馬鹿達も間抜け顔でビデオレターを見ていたが、安藤君の恋人の話をした途端顔を青ざめた。

……どうやら本当の様ですね。

彼等は自分が気に入らない人を親の権力で貶めたり冤罪を作っていると、そんな噂がちらほら聞いていた。本当はそんな噂がする人と結婚なんて、と思ったけど、彼の両親……伯父さん夫婦は良い人達だからと結婚した後伯父さんの仕事を私に全て譲り渡し、馬鹿はお飾りの社長と計画していたので私はそれに乗っていたのだが、それを馬鹿達が全部壊してしまった。

伯父さん達は苦痛に耐えるように顔を俯いている。まさか自分の息子達が親の権力を乱用していたなんて思ってもいなかったようだ。(奴も親の前では大人しくしていたから)


「本当は二枚目のは出すつもりも作成する気もありませんでした」

安藤君のお父さんが重い口を開く。

「けど、息子が『絶対アイツ等はアレだけでは納得しない』と言って急遽作成しました。

本当は一枚目だけで彼らが反省してくれれば出すつもりもありませんでした。それは彼等の両親も望んでました。一枚目で彼らが自分達の罪を理解してくれたらと期待はしていたのですが……この様な事になって残念です」

安藤君のお父さんはそう言って〆た。









結局私と従兄弟の婚約は破棄された。そして彼等は跡取りから外され彼等の兄弟か従兄弟を養子に後を継いだ。私も伯父さんの会社を継ぐことになった。ただし養子にはならなかったけど。

彼等はとある家に全員養子に出された。そこで監視されているが、実はそこの家の当主がホモだと言う噂がされてあるが、定かではない。しかもこれは一部の人間しか知らないが彼等が子供が出来ない様に手術したのだ。下手に子供を作って問題の種を生み出しかねないと言う彼等の家族の判断の元、彼等が知らない内に処理をした。


そんな事が出来たのはその昔、今回と似たような事件が起きたのだ。しかも前回の馬鹿婚約者達は女の子にそれはそれは酷いイジメをした挙句、自殺未遂までに追いつめたのだ。ただし、今回と決定的に違うのは少女の親御さんが裏組織の幹部だったのだ。

その後の馬鹿婚約者達はどうなったのか定かではない。ただ、もう二度と日本の土を踏めることはなかったとしか聞いていない。


それ以降、名家や大企業の家族は身内の後始末や汚い仕事をその幹部に頼むようになったのだ。

幹部さんは特に今回の様な事件に張り切るようで、今回の刑罰を提案をしたのはその人だと聞く。

伯父さん達がソレを飲んだのはあんまりにもアイツ等のやらかした事がひどかった為愛想がついたのだ。

私もソレを聞いて「ソレ犯罪じゃないの?」と思ったけど、その幹部さんの所属している組織はかなり大物の組織だし、もう当事者じゃないからどうこう言う気はない。

……自分の身が何より大切だ。



安藤君のその後は知らない。

安藤君と親しかった人達は交流があるようだけど、私はその人達とはあまり親しくしていなかったから彼の情報を聞いていない。

ただ、安藤君とその恋人である幸さんと思われる人達は見た事はあった。

背の高いタンプトップとジーンズ姿の短髪の男が少しふっくらとした可愛らしい女の人の買い物袋を持って幸せそうに笑っている姿を。

もし、あの二人が安藤君たちなら……幸せになってて良かったと心からホッとしている。

















まさかヒロインが男になるなんて誰が予想できただろうか。


   登場人物

安藤幸也(あんどうゆきえ→ゆきやに改名)

実は転生者で前世は男だった。ただし、乙女ゲームなんて存在がある事も知らないのでこの世界が乙女ゲームの世界でしかも自分がヒロインなんて最後まで気付かなかった。

前世を思い出してから自分の性別に悩みに悩んだが、結局男として生きる事にした。実は麗羽が初恋だった。


大神麗羽おおかみれいは

悪役令嬢に転生した少女。色々頑張って逆断罪の準備をしていたが、幸也が男になったので計画がとん挫した。

伯父の会社を大きくして伯父の血縁者(優秀で優しい人)と結婚し子宝をもうけた。


青地達(ゲスで屑な男達)

ゲスでどうしようもない男達。あの後どうなったかは誰も知らない。因みに青地はAHOを無理やりアナグラムして作った。


左宮幸さみやさち

青地達に中学の頃いじめられていたが、幸也のおしおきされた姿のお陰でなくなった。

あの後幸に謝ったのは幸也だけで、それからちょくちょくと交流があって、幸が最初に幸也に恋をした。

少しふっくらした体型だが、そこまで太っていない。可愛らしい顔立ち。幸也から『コウ』と呼ばれている。


幸也の家族

父親は警察の幹部。かなり自分にも他人にも厳しい人。母親は大らかで天然。実は家庭では唯一父が頭を上げられない人。妹は中学生で美少女。現在思春期真っ最中。

実は幸也が男だと早い段階で夫婦で知ってた。幸也自身から言うまでその事は黙ることに夫婦で決めていた。

妹は色々思春期特有の衝突をしたが、後に和解。逆に姉らしい幸を慕い日夜兄と争っている。

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― 新着の感想 ―
[一言] あっ竜鬼組長だ。
2017/07/20 08:02 退会済み
管理
[一言] 思春期真っ盛りの時にこんなデープな話→ディープでは?
[一言] 男になる手術? そんなものあるんですね〜。 マジでやんの?
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