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ステ振り!  作者: キミマロ
第一章 生徒会長は魔法使い?
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第十一話 占いとロリータ

さりげなく過去最長記録を更新。

このペースで毎日書けると良いんですけど……リアルがきついです(笑)

 先輩は翌日も、翌々日も学校には来なかった。家にも連絡は付かず、彼女がいまどこで何をやっているのかは完全に不明な状態である。すでに校内はその話題でもちきりで、ファンクラブを中心に噂は広がる一方だった。一体、何が起きたのか……。俺たちは七瀬のこともあって気が気ではなかったが、捜す伝手がないのでどうしようもない。出来ることと言えば先輩の無事を祈ることぐらいだ。


 ひとまず俺は、小夜のステータスを「問題が解決するまで保留、解決したら知能極振り」ということにした。中間テストがいよいよ二週間後にまで迫ってきていたので、小夜は一も二もなくそれに賛成した。……と言ってもたかが5ポイントだから、効果にはあまり期待はできない。平均が誤差程度でも上がれば上出来だろう。小夜の方はそれに期待しまくっているようだけど。


 死にかけていた佐伯は一時学校を休んだが、あれから三日経った今日は普通に登校してきていた。まだ完全というわけではないが、あの時のやつれた様子からはだいぶ回復している。顔色も良くなり、元の浅黒い肌へと戻っていた。何でも、休んでいる間に新作のゲームをやりまくったかららしいが……理由はともあれ、元気になることはいいことだ。あのまま突き進んで居たら確実にやばかったしな。


「何だか、気味が悪いな」


 ゾンビが大暴れし、その翌日には魔導師である千歳先輩が姿を消した。普通に考えれば、その後に何か起きてもおかしくは無い。だが現実は酷く平和で、それまでとほとんど変わらない日常がすっかり戻ってきていた。まさに喉元を過ぎれば熱さ忘れるの状態だ。これはこれで、下手に騒動が大きくなるより過ごし易くていいのだが……何か嫌な気がする。虫の知らせとでも言うべきだろうか。俺たちが平和に暮らしている下で、得体の知れないものがエネルギーを貯め込んでいるような気がしてしまうのだ。それはちょうど、遥か大地の下で誰も気づかないうちに膨大なエネルギーを蓄えるプレートの様である。


「なに深刻な顔をしてるんだ? 相変わらず、お前は肝が小さいなぁ……」


 長い髪をかきあげ上がら、実に能天気な様子で声をかけてくる小夜。あれだけのことがあったと言うのに、実に神経の図太い奴だ。きっと心臓から超合金のワイヤーでも生えているに違いない。


「あれだけのことがあって、しかも先輩が行方不明なんだぞ? そりゃ心配にもなるさ」

「まあな。でも、いつまでも心配していたって仕方ないだろう? 佐伯も意外とあっさり回復したんだし、問題ない」

「そりゃそうなんだけど……何だかなぁ」

「そんなに気になるんなら……聞いてみたらどうだ?」

「はあ、誰に?」


 先輩の行方は教師でさえも知らないのだ。この学校の生徒はおろか、この町の人間では誰も知らないに違いない。そんなのがもし分かる人間が居たとしたら、それは神様か先輩本人ぐらいだ。


「私も聞いた話なんだが、竹田のひい婆様が占い師をやってるらしいんだよ。それがまた、よく当たるって評判なんだ」

「へえ、占いねえ……」


 俺は基本的に占いなんて全く信じない。血液型とか星座とか、まともに当たったためしがないからだ。何が恋愛運絶好調だよ、それで彼女なんて出来た試しがねーぞ! けれど……竹田さんの関係者なら、信用できるだろう。まして血縁者だ、何らかの能力を持っている人には違いない。


「試してみるか。よし、放課後すぐに四組へ行くぞ」

「ああ、わかった」


 こうして俺たちは、竹田さんのひい婆様に占いをお願いすることに決めたのだった――。




「はあ、『美代姉さま』に占いの依頼ですか……」


 放課後。俺たちが占いのことについて話すと、竹田さんは妙に渋い顔をした。もしかして、ひい婆様とは仲が悪いのだろうか? 少し悪いことを聞いてしまったかもしれない。


「もしかして、仲が悪いのか?」

「いえ、そんなことはないですよ。美代姉さまは私を可愛がってくれてますから」

「じゃあ、占い自体を今はやってないとか?」

「とんでもない! 今も現役バリバリです。月に一度はやってますよ。ただその……料金が……」


 こちらから眼を背けて、申し訳なさそうな顔をする竹田さん。そんな彼女に対して、小夜がドンッと胸を張る。そう言えばこいつ、塾頭をやっているのでその分の給料を家からそれなりに貰ってるとか言ってたな。


「いくら何だ? 金ならある」

「…………一回百万円です」

「ぶべらッ!?」


 小夜はカッと目を見開くと、秘穴を突かれたような叫びを上げた。俺もまた、驚きのあまりゴクリと唾を飲み込むと、竹田さんの方をじーっと見つめる。


「な、何でそんなに高いんだ!? あの太木数子でも一回数万らしいじゃないか!」

「そのですね……経費がかかることはかかるんです。特別なものを多々使いますので。ですがまあ……本人がお金を必要としていると言うのが一番大きいですね」


 老人がそんなにお金を必要とするって、一体何をやっているんだ? 毎日寿司でも食べているんだろうか。それとも、パチンコとかその類で金が消えてしまうのか?


「部外者が言うのも何だけど……そのお婆さん、ギャンブルにでもハマってるのか?」

「うーん、そう言うのではなくてですね……。とにかく、見ていただければ分かると思いますよ。一度、家に来てみますか?」

「……わかった、行ってみよう」

「そうだな。事情を話せば分かってもらえるかも知れん」


 こうして俺たちは、問題の人物がいる竹田さんの家へと向かうことにしたのだった――。




 竹田さんの家は、町の中心からやや離れた山間に位置する、満福寺という大きなお寺だ。小さい山を丸ごと一つ寺が所有していて、麓から山頂にかけての間に本堂や七宝塔などさまざまな施設が点在している。そのうち美代さんが住んでいるのは、山の頂上近くにある小さな庵だそうだ。どうやら、彼女は結構な人嫌いであるらしい。


「ふう、ずいぶん遠いな……」


 麓の本堂裏にある登山道から、山を登り始めて十分。気を抜いたら滑り落ちてしまうような急峻な山道を登ってきたが、まだそれらしき建物は見えない。オタク学生で体力の低い俺は、早くも息が切れ始めていた。まったく、よく老人がこんなところに住むもんだ。若者でもきついぞ。そう思って足を止め、額の汗をぬぐっていると前方から怒号が響く。


「こら、休むな!」

「だってこれだけきついんだからさ……仕方ないだろ」

「だらしない。引っ張ってやるから登れ!」

「うおッ!?」


 レッカー車よろしく、物凄いパワーで俺を引っ張る小夜。それに引きずられて、俺の身体が山道を猛烈な速度で進み始める。そうして進むこと数分。急に森が開けて、小さなお堂のような建物が見えてきた。古びた瓦屋根には草が生え、格子の扉には何やら大量のお札が張り込められている。その意味するところはわからないが……何だこりゃ。中に住んでいるのは妖怪か何かなのか……? 俺は森を抜ける風の冷たさに、たまらず身を震わせた。それは小夜も同じだったようで、握った手が汗を掻き、僅かに湿り気を帯びてくる。


「こ、ここか?」

「はい。美代姉さまーー! お客様を連れて来ましたよ!」

「おう、客か。久しぶりよの」


 中から老婆特有の低くしがわれた声が響くと、扉が音もなく開いた。そして現れたのは――白いのっぺりとした顔を持ち、腹のあたりが不気味に震える異様なヒトガタだった。


「よ、妖怪だァ!!!!」

「で、出たな!? 成敗してくれる!」

「待て! 落ちつかぬか!」


 腹に響くような一喝。そのただならぬ気迫に、俺と小夜は動きを止めた。その間にヒトガタは自らの顔に手を掛けると、ぺりぺリとそれを剥ぎ取っていく。その中から現れたのは……ごく普通の老婆の顔だった。皺に埋もれていてよくはわからないが、その顔立ちは竹田さんにほんのりと似ているような気もする。……この人が美代さんのようだ。


「済まぬな、パックをしていたことをすっかり忘れておったわ」

「……では、そのやたらとブルブルしているお腹は?」

「ああ、これか? これはの、通販で買った最新式のトレーニングマシンでの。腹に巻いておるだけで脂肪がグングン取れるすぐれものなのじゃ!」

「は、はあ……」

「さ、中に入りなされ。わしに用があって来たんじゃろう?」


 くいくいと手招きをする美代さん。俺たちは彼女に促されるまま、怪しげな雰囲気のする庵に足を踏み込む。するとそこは、古びた外観に反してしっかりした作りの和室となっていた。まだ青い畳。天井から下げられた蛍光灯。部屋の奥には万年床が敷かれ、その脇の小机には最新型のパソコンが置かれている。さらに、部屋中を埋め尽くす胡散臭い感じの美容グッズの数々。それを見た俺と小夜は、美代さんが金を必要としている理由を瞬時に察した。


「大丈夫か、このお婆ちゃん……」

「ステを見てみよう」


 不安げに呟いた小夜にそう答えると、俺は早速ステータス画面を呼び出した。するとそこには、見た目や行動に反して非常にまっとうな数値とスキルが表示されていた。


・名前:竹田美代

・年齢:101

・種族:人間

・職業:占い師 滅魔法師

・HP:90

・MP:70

・腕力:40

・体力:45

・知能:65

・器用:55

・速度:35

・容姿:30

・残りポイント:110


・スキル:竹田流除霊術 霊視 古式占術


 とりあえず、占いをする分には問題ないだろう。MPをたくさん持っているし、きちんと古式占術のスキルを持っている。何より、職業が占い師だ。能力的には非常に信頼できる。


「能力はばっちりだ」

「ん、そうか。……では、お願いするとしよう。実は――」


 小夜はつらつらと、先輩が居なくなるに至った経緯などを説明した。美代さんは時々相槌を打ちながら、その話に真剣に聞き入る。そして話が終わると、ふうっと大きな息をついた。


「なるほどのう。この町にそのようなことが起きておったとは、知らなんだぞい。して、そなたらが占って欲しいのはその千歳という娘の行き先じゃな?」

「はい、できますか?」

「もちろんじゃ!」

「おおッ!!」


 さすが、職業「占い師」だ。俺たち三人はやったなとばかりにアイコンタクトを交わす。けれどまだ、一番超えるべき課題を超えていない。途方もない高額報酬の件だ。


「あの……料金の件なんですけれども……」

「事情が事情だしの。特別に割り引いてやろう」

「やった!」

「そうじゃの、七十万でいいぞい」

「おぶあッ!?」


 割り引いて七十万かよ! 確かに三割引きって数値的にはそれなりに凄いけどさ! 俺たちは思わずその場でひっくり返りそうになった。このお婆さんは学生の所持金の相場とかを知っているんだろうか。七十万なんて、ポンと出せる学生はそれこそ漫画のF14とかそれぐらいじゃないだろうか。俺はニイッと笑った彼女の顔に、いやらしい何かを感じてしまう。


「美代姉さま、もうちょっと何とかならないんですか?」

「わしも近頃入用でのう。近々、ドイツ製の美顔器が新発売されるんじゃ。買わねば!」


 このアンチエイジング婆さんめ……! 俺は腹の中がぐつぐつ煮え滾るような思いがした。けれどここで……ふと思い付く。オーガ♀がアイドルも真っ青の美少女になれるのだ。もしかしたら、老人でも意外と行けるかもしれない。


「あの」

「ん、なんじゃ?」

「もし、美顔器がいらなくなるぐらい美代さんを綺麗に出来たら……占ってもらえますか?」

「もちのろんじゃ。しかし、そのようなことできるのかの?」

「まあ任せてください」


 どれぐらいを求めているかわからないので、ひとまず俺は美代さんの持っているポイントを70ポイントほど容姿に投入してみた。これで容姿100、かなり綺麗になるだろう。するとたちまち、美代さんの小さな身体をまばゆい光が包み込んで行く。そして――


「………………ロリババア?」


……たぶん、ヒロインにはならないはず。

ひとまず感想や評価などを頂けるとありがたいです。

※美代の所持ポイントとステ振りを変更しました。

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