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聖戦士の遺跡調査ーエピローグー

数日後。

またも千慧に呼び出されて彼女の自宅に来た幸広は、渡されたモノを見て呆然とした。

「…………なんですか、コレは」

それは木のベニヤ板で出来た人形(ひとがた)だった。

思い違いでなければ、先日久美が人を呪う時に使うとか言っていたような気がするのだが。

「先生…これで誰かを呪えとか言うつもりじゃないでしょうね?」

「ばっかねー、そんなわけないじゃない」

千慧が腰まであるその長い髪をいじりながら、ウグイス嬢のような優美な声で言った。

「じゃあ、まさかとは思いますが…これで私を呪うつもりですか」

「ちょっと望月くん。一体私をなんだと思ってるの」

千慧が本気で怒りだした。いくらやりかねないとはいえ、さすがに言い過ぎたか、と反省したその時。

「呪いたい相手に呪いの道具送るなんてとんまに見える? そんなことして呪詛返しでもされたらどうするのよ」

「……………………」

幸広は二の句が継げなかった。彼女は[簡単に人を呪う]という目で見られるより、自分が低く見られることの方が許せないらしい。とはいえ、一般人の幸広に呪詛、ましてや呪詛返しなど出来るわけもない。はっきり言って千慧の杞憂だ。

というか、だったらこれはなんだ。いきなり渡されても激しく意味不明なのだが。

「それはね、望月くんの身代わりなのよ。呪いのわら人形でも、わら人形を傷つけた場所に呪った相手が怪我するじゃない。これはその逆。望月くんが怪我したところを、この人形が肩代わりしてくれるってわけ。ただし、身代わりだってずっとしてくれるって訳じゃないわ。大した怪我でもないのに身代わりになって、それが蓄積して壊れたりしたら勿体ないから、死ぬような怪我をした時って限定しておいたから。だからもしあなたが死んでも、一度なら生き返れるわよ」

まさか彼女からそんなすごいアイテムをもらえるとは思わなかったので、幸広は驚いた。

しかしそんな効果もあるのなら、呪術も悪いものばかりじゃないのかもしれない。

千慧もなんだかんだいって報酬の件を気にしていたのだろう。

「ありがとうございます。こんな報酬を戴けるなんて、呪詛をただでしてもらうよりよっぽどありがたいです」

そう思ったのも束の間。

「報酬? 誰がそんなこと言ったのよ? あなた私からの報酬断ったじゃない」

「え? じゃあこれは…」

「望月くん、近々旅に出るんでしょう? 今の内に恩を売っておこうと思って。もしそれを使うようなことになったら…、わかってるわよね? あ、言っとくけど隠しても無駄よ。身代わりが壊れたらすぐにわかるようになってるから。まぁ私に少し使われるくらい、自分の命と比べたら安いモンでしょ?」

彼女は優しくふふふと笑ったが、その笑顔が逆に恐ろしかった。

幸広は自分の体が凍りつくのを感じた。

これ以上千慧に振り回される理由を作りたくない。しかし、死ぬような事態を避けるアイテムなので、返すわけにもいかなかった。

「……死なないように努力します」

幸広は苦笑しながら受け取った。そして数ヶ月後、まんまと千慧に借りを作ることになったのだった。

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