ネサラとネフェニー
「よぉ」
「…ネサラ」
いつのようにルーファウスの部屋に行くと、彼は心配そうな顔をした。
「大丈夫なのか。君には長としての任務があるはずだが。それにこんなことを続けていれば、その立場自体も危うくなるぞ」
「はっ。立場だと?そんなもんくそくらえだ。第一、お前にそんなこと心配される筋合いはないな。お前はただの炎天使だ。そうだろう?」
彼はもう神じゃない。だから、もう何も気にする必要はない。あの時のことも。
「……すまない、ネフェニーのこと…。助けられなかった」
わざと冷たく言ってやったのに、こいつはなんでもお見通しだ。だから嫌いなんだ。
「ふん。あいつが弱かっただけだ。優しさと強さは別物だからな」
他人がうっとうしくて嫌だった。他の種族と異なり、神々から独立して生き、魔物との戦乱が起きても見て見ぬふり。何を守るでもなく、ただ長の就任争いに時を費やす。そんな時天使という存在が嫌だった。
だけど。
「あ、ネサラ!」
腰まで伸びた紺色の髪に、大人しそうな目をした時天使――ネフェニーが自分を呼んだ。
「…何か用か」
「ううん…。別に用はないけど、姿が見えたから」
その時、チチチと小鳥が数羽、彼女の周りに集まった。さえずりながら彼女の頭や肩にとまる。
「フフ…なぁに?貴方達お腹空いてるの?」
ネサラはそれを見て、少し複雑な気分だった。
「……ちっ。相変わらずそういうのになつかれるの早いよな、おまえ。俺なんか餌食べるのに5日かかったぞ」
それを聞いた彼女はクスクス笑い出した。
「何がおかしい!」
「だって…ネサラが鳥に餌あげてるの想像したら…なんか可愛くて」
「てめぇ、バカにしてんのか?」
彼女は尚も笑いながら言った。
「ごめんごめん。…でも、そうよね。ネサラは顔も怖いし口も悪いけど、根は優しい人だもんね」
「…なんか褒められてる気がしねーな」
あの頃が一番幸せだった気がする。けれど、彼女はもういない。
「……もうすぐだろ。クロウとの対決。負ける要素は一つもないはずたが、もしそんなことになったら計画に支障が出るんじゃないのか?」
そう問うと、ルーファウスは神妙な面持ちでネサラを見た。
「たとえ彼らがクロウに負けて計画に支障が出たとしても、やり残したことがある以上引くわけにはいかない。…ネサラ。私はね、ラファエルを殺したことは後悔してないんだ。ただ一つ心残りなのは、ミカエルを一人だけ生き残らせたこと…。だから、今度こそ彼を殺すために、世界を造り替えてみせる」




