第7話:終わり
大変遅くなりましたッ!本当にすみません!
次から前書きは書かずに後書きだけ書くようにしたいと思います.....
最初から前書きが書いてあると読みにくいと悟らされたので....
あと、今回は三人称にッ....!
リヒトに対するカーダーの執念が生み出したと言えるであろう.....
本来、十三歳の子供が持っているはずのない対障壁用という障壁を破るための小剣の性能を大いに活かした、勝ちたいという想いが乗せられた障壁をも切り裂くほどの斬撃。
二人の距離はほぼ零に等しいものであり、互いに術を発動する間はない。
もはや決定打になるのは、カーダーの攻撃....リヒトに向かって振り下ろされている小剣による斬撃のみ・・・であるかのように思われた。
リヒトに接近し、障壁を無効とした後、小剣を振り翳した時のカーダーは勝利を確信していた。
自らの家から黙って持ってきた対障壁用の剣。戦の時のために生み出されたそれは、このような模擬戦時に無断で使用することは許されていなかった。
戦時による使用、無許可の使用の禁止。
そのような規制を設けるほどの素晴らしい効果を発揮する小剣は、今自分の手の中にあり、たとえ小剣の障壁を無効にする回数が約三回ほどであろうとも、それが無防備で立っている相手に振り下ろされているのだ。
カーダーはこの状態で自らの勝利を確信しないほうがおかしいとまで思っていた。
だが.....最後の最後となって彼は、油断もしくは隙を作るという、勝利への道を前にしてすべきでは無いことをしてしまった。
もはや "油断" や "慢心" というものを、自らの内から全て根絶させたと言っても過言ではないリヒトの前では、その油断は致命的であった。
たとえ、カーダーがまったく油断していなかったとしても最終的な結果は変わらなかったであろうが、それまでの過程は大いに変わったはずである。
そして・・・
カーダーのほんの少しの油断とリヒトの覆ることのない決意が、全てを変えた。
「え、ァ・・・?」
リヒトに致命傷を与えるはずだった斬撃ーーそれは、少しも掠ること無く空を切り、斬られるはずだったリヒトは、カーダーの目の前から姿を消していた。
いや.....リヒトが姿を消したのではない・・・
リヒトは一切その場から動いていなかった。
動いたのは彼自身.....自身の意思に反し、眼に映っているはずの倒すべき相手が自身の視界の中から消されたのだ。
リヒトが自身の目の前から消えた時、彼の見る世界は反転していた。
パンンッッ!!
「 が、はッ・・・!」
空中に投げ出されているような状態で、何も理解出来ない刹那の間に彼を襲ったのは、今まで感じたことがない途轍もないほどの衝撃。
肺にあった空気は押し出され、それを補うための呼吸をすることすら自らの意思で行えない。
尚且つその衝撃は、彼がその場にいることを許さないと言うばかりに、彼がいた場所から二十メートルは離れているであろう闘技場の壁へと、勢いよく吹き飛ばしていた。
このままでは、彼の身体が粉砕されるであろうと容易に想像できるほどの吹き飛び様・・・
けれども、それは杞憂に終わるーー
闘技場の壁は、魔法術や武器の使用による決闘することを考慮した上で対魔法耐性、対衝撃耐性を備えられている。
カーダーは自らがまったくもって知覚できなかった衝撃により、知らぬ内に意識を失っていたが、壁....正確には壁に組み込まれている衝撃耐性を持つ障壁に衝撃し、その時生じた激痛によって意識を取り戻した。
「い、いっ.....た.....い、何....が.....」
一定以上の衝撃であったことにより、殺しきれなかった衝撃を身に受け、衝突してなおその場で転がるように投げ出された。
身体の節々に超過のダメージを負い、もはや立ち上がることすらままならない状態のカーダーは、朦朧とする意識の中で自らの身に起こった事だけでも理解しようと、必死に試みようとする。
そこへ掛けられる声。
「 あなたに感謝を 」
舞い上がる砂煙で姿が見えない中聴こえた強い想いが伺えるはっきりとした声・・・
その声はカーダーの返答を待っているわけでもなく、言うべきことを言うためにさらに声を発した。
「 カーダー先輩、あなたのおかげで、僕が忌むべき過ちを犯すことも無くなりました。自身の力の足りなさ、想いの弱さを、生きた年数に関係なくこの身に刻むことが出来た。故に感謝を。もはや僕に慢心はありません。油断も無い。受難も無い。驕りも無い。苦戦も無い。消失も無いーー 」
「 だから、ここで憂いを断ち切るために...."始まり" から始めさせて貰いたい 」
そして、その言葉から一区切り間をあけた後、淡い白色の光を発する術が発動された。
「【 瞬く間に照らし癒す 】」
それは、治癒魔法術の中級に位置する "一定の損傷と魔力を回復させる" というもの。
本来、中級の魔法術では回数を重ねなければ回復するはずがないカーダーの身体の外部と内部の損傷.....それが見る見るうちに、決闘前の身体の状態へと変わっていった。
リヒトの魔力の質により、一回の発動.....さらには短時間で効果を生み出すことになったのだ。
僅かでも動かそうとする....いや、動かそうとしなくても、あまりの絶え間ない激痛に精神がガリガリと削られていき、只々もがき苦しみ続けるという地獄のような世界から解放されたカーダーは、顔を俯かせながら立ち上がり、解放されたことに対する安堵とその安堵にも勝る "嫉妬" という感情を沸き起こらせていた。
「......お前は.....お前は!お前はッ!いつも!いつも!いつもだ!力があるくせにそれを使おうとしない!!」
突如、沸き起こった嫉妬をそのまま言葉に変え、リヒトへとぶつけた。
一度吐露されたその思いは止め処なく溢れていき、今まで胸の奥底で燻っていた様々な感情が流出する。
「馬鹿にされず、蔑むまれることがないはずの力を持っているにも関わらず使おうとしない!!僕だったら使う!使うに決まってる!そんな力があれば、家族から馬鹿にされて見捨てられることも無かったんだ!」
「・・・・・」
「いくら努力しても追いつけない!いつも見上げるしかない!もとからあった才能のせいでその差を埋められない!」
「・・・・・」
「.....なんでお前なんだ.....なんで僕じゃないんだよ....何でだよ....何でだよ....頼むよ....教えてくれよ・・・ 」
打って変わり弱々しいものへと成り果てたカーダーは、今に消えてしまいそうなその言葉をリヒトに問いかけた。
「・・・・・」
「 はは、ははははは.....また、無言か・・・」
乾いた笑いと共に空を見上るカーダー。
「いいだろう.....なら望み通り相手をしてやる・・・何もせずに只々負けてやるよ 」
諦めきった表情を顔に浮かべ、敗北を容易に受け入れようとするカーダー。
今まで無言を突き通してきたリヒトは、ここにきて一言.....彼に対して言葉を告げた。
「あなたはこれからずっと敗者だ 」
「......なんだと?」
その言葉を聞き、顔色を変え、睨むようにリヒトを見るカーダー。
リヒトはそれに構わず言葉を続ける。
「 愚かであった僕が言えることではないけれど、これだけは言わせてもらう・・・努力することをやめ、停滞することを望み、ひれ伏すことを受け入れるあなたは、未来永劫ずっと敗者のままだ 」
「 ッ!・・・お前に何がわかるッ!!今まで"弱さ"というものを知らなかったお前がそんな戯言を!舐めるのも大概にッ....」
「 僕にはわかる 」
「 ・・・なに?」
「 僕は....護りたいものを護れなかった弱い人間だったから.....あなたとは、思い進むべき道は違えど力を欲するものという括りでは同じ・・・」
カーダーはリヒトの言葉に対して疑問を投げかけようとした。
けれど、その言葉を投げかけたようとする前に、リヒトの強い視線を受けてたじろいてしまう。
リヒトはカーダーを直視したまま、言う・・・
「 人は.....ほんの少しの気持ちで変わることが出来る。幾ら失敗しようとも、幾ら挫けそうになろうとも、立ち上がった者が、最後に勝つことが出来る。死ななければ、そして、立ち上がれば、それが勝利だ 」
そして、砂煙が収まった中で静かな時が2人の間にほんの少し流れる。
「・・・くくく、くははははは!戯言だなっ!戯言だよ!それは力がある奴の言葉でしかない!!」
そう言いながら、ちょうど目の前にあった模擬剣を手の平でしっかりと握り締め、リヒトを前に立ち上がる。
「お前を倒してやるぞ!いつの日かお前を倒し超えてやる!後悔させてやる!だから.....まっていろ!」
カーダーの中にあった負の感情はこの闘いの中では消えた。
そして、代わりに彼の中には闘志が宿っていた。
◇ ◇ ◇
「・・・・・」
「・・・・・」
無言で向き会う二人。
一人は剣を構え、全身に闘志を漲らせている。
一人は自然体のまま、けれど一切の隙もなく無手で佇んでいる。
今の二人の闘いに合図はない。
観客であった生徒達や教師達は誰も喋ることなく、二人の闘いを見ている。
だから、誰かから合図を求めること無くカーダーはリヒトへと駆け出す。
リヒトとの距離は三十メートルほど・・・
リヒトは自然体のまま・・・
カーダーはリヒトのその姿をしっかりと確認し、さらに距離を詰めた後、速さに全てを掛けた。
「【 駆ける者 】!!」
音速や光速などの領域に立ち入ることは無くとも、常人の1.5倍から2倍ほどの加速力を発揮するこの術は、戦いの場において重要で必要性のある術である。
狭まった距離の中で、加速し、さらに距離を詰めたカーダー・・・
彼は加速力を維持したままリヒトの前で剣を振りかぶり、そのまま振り下ろすかのように見えた。
"駆ける者"という術は下級の位楷のものであり、加速方向は最初に与えられた力の向きによって決定される。つまり、加速して進んでいる最中には、向きを変えることが難しいのである。
しかし彼は直前で向きを変えた。
身体にかかる負担。
節々がギシギシというように軋み、悲鳴をあげながらも、彼は倒すべき相手に狙いを定める。
重心を身体の右に移動させ、右足を軸にして、身体を回転させる。
加速により遠心力を大いに持った剣は、それを握る右手と共に自然体で佇むリヒトに向けて放たれる。
そしてリヒトは、ほんの少しの時の中で言葉を紡いだ。
「 術式転写」
術式を詠唱することなく発動させーー
「【 拳巌竜ノ 籠手 】」
左腕を左腰に構え、足を地に踏み込み、前に突き出したリヒトの右腕を籠手が覆うーー
肘から手までを覆うそれは、深く濃く重いダークブラウンの色を持ち、何物をも通さないとばかりの厳かさと威圧感を放っていた。
そして.....接触する剣と籠手・・・
バキィィンッ!!
放たれた斬撃は何も無かったように消え失せ、剣は付け根から剣先がパックリと無くなっていた。
加速し、身体を軋せながら放ったカーダーの斬撃を、リヒトは回避することなく真っ向から破ったのだ。
籠手で覆われたリヒトの右手による拳圧を受けたカーダーは、数メートル跳ねられるように吹き飛ばされていた。
「・・・お前、は、強い、な・・・」
カーダーは朦朧とする意識の中、仰向けの状態のまま晴れ渡る空を見ながら最後にそう呟き、憂いの無い顔をして、その場で意識を手放した・・・
「しょ、勝者!リヒト・ローゼンベルク!」
ワァァァァァァァ
沸き起こる歓声・・・
「・・・・・」
この闘いの勝者は、もう崩されることのない決意を胸に秘め、倒れたカーダーを自然体のままじっと見つめる、これからさらに昇っていく一人の少年となった。
読んで頂きありがとうございます!
皆様色々仰りたいことはあるかと思います.....
「書き直した方がいい」
「ここは~した方が個人的には好き」
「リヒトって主人公だよね?」
「なんかようわからん術が出てきたけど、それ何?」
「文体しっかり決めなさいな」
「はよ書け(笑)」
「お前はもう駄目だ....(ぽいっ)」
etc....
なんでも良いです。作者に言っちゃってください。
(ハートブレイクしない限り、)ご返事させて頂き、(なるべく)善処し(たいと思い)ます・・・
誤字脱字などもありましたら、教えてください!
p.s なろう!内でオススメの小説がありましたら、教えてください!最近読めてなくて飢えてます・・・