プロローグA
初投稿です。勢いで書いたため不定期更新ですが、とにかくなにか起こらない限り書きたいと思います。誤字脱字などありましたら、ご報告よろしくお願いします。
「...い...ルクの...時間...、んで.....しら?」
空ろな意識の中で、突如聞こえたささやき声に驚きながらも、うっすらと目を開けると目の前に見えたものは壁。薄く白味がかった透き通るような肌色で壁にしては弾力のありそうな、いや.....実際弾力のあるぴちぴちとしたものだった。触ってみるとぷにぷにとした感じがする。
今、それに自分が押し付けるられるような状態になっているのである。
そんな状態ではあるけれど、何故か心から落ち着けるような、そんなことを感じさせるとてもいい匂いがした。
(えーと、いったい・・・どうなってるんだ?)
周りを見渡そうとしても、思うように首を動かすこともできず、さらには何故か瞼さえ充分に開けることすらままならない状態だった。
そんな今の現状に混乱しながらも、自分は今いったいどうなっているのか?と考え、今まで自分は何をしていたのか?と思い出そうしてみる。しかし、不思議なことにこれ以前の記憶にもやのようなものがかかって上手く思い出せないなかった。
(えーと、バイトの帰り道の途中で、それから確か・・・あー思い出せん。.....とりあえず現状をどうするかだな。)
弾力ある壁に顔面をやや埋れた状態でどうしようか考えていると、自分の頭上から先程の声と同様の綺麗な透き通る女性の声がした。
「どうして飲まないのかしら?皆ほかの子達は、きちんと飲んだのだけれど...あまり泣いていなかったようだし、まさか病気なんてことはないわよね?」
そんなイマイチ理解できない言葉を聞いた後、弾力のある壁が離れていく。まさか自らなにも行動を起こさずに簡単に助かるとは思っていなかったので、おー助かった!と声に出そうとして、実際出た声が・・・
「おぎゃーおぎゃー!」
(・・・おぎゃあ?...え?今おぎゃあって言った?今僕が出したの?)
自らが出したものとは到底思えないような声を聞いてしまい、さらなる混乱を呼び込んでしまった。
わけがわからずにおぎゃおぎゃわめいている(注:もはや何を言っているのか自分自身ですらわかりません) と自分が出しているであろうわめき声とは対称的な....先程の透き通るような声の持ち主が、さっきまでの沈んだような声とは違って、嬉しそうに弾んだ感じの声で.....
「あらあら、ようやくちゃんと泣いてくれたわね~。ちゃんとと言うのも変だと思うけれど、これでミルクさえ飲んでくれれば安心だわ~」
と仰った。
その言葉の意味は、まったくもってわからないものであったけれど、発声源が気になった。いや、だってこんな綺麗な声の方とか、顔を拝みたいでしょ。(真顔
そこにはなんと美しい女性がッ!!人生19年の中でこんな美女、そう何度もお目にかかったことがありません!!透き通るような肌、腰まで伸ばされている長い黒髪、碧色の綺麗な瞳、整った顔立ちをした女性が自分に眩しいまでの笑顔を向けてくれているとはッ!
「おぎゃおぎゃおぎゃああ!(今まで生きていてよかったあ!)」
今の並々ならない事態さえどうでもよくなってしまいそうになり、ホクホクしながら思わず笑顔になってしまった。
やっぱり人の笑顔って素敵だね!それが美人さんならなおさらだと思う!何故かおぎゃ語なのが非常に残念なところではあるけれど!!
そんなことを思いながら女性と向かいあっていると、どうやらどこかへと運ばれているようだ。
心拍数がぐんぐん上昇しながらも、少し落ち着いて冷静に考えてみると、またさらに混乱の極みに陥れられた。
(えーと、今さらなんだけれども.....なんか地に足がついてる感じがしないんですが...しかも視野がいくらか狭い感じが...)
もはや現状理解など頭の片隅に追いやられていたのだが、さすがにそうはいってられないらしい。
身動きができず、さらには浮遊感覚を持ったまま移動とはこれ如何に!
(とは言ったものの、実際本当にどうしようもないんだよな~...今までなんも人様に恥じる様な悪いことはしてこなかったとは思うんだけど....まぁ、誰も心配するような人もいないはずだろうし、どうなろうとあまり問題はないんだが.....)
と、ここで移動が止まり、身体の向きを女性と睨めっこする向きから180度回転させた方向に向けさせられる。
なにをするつもりなのか静観していると、目の前には光を反射する銀色の板、いわゆる鏡、そこに写る先程の女性とその女性に抱えあげられるようにして抱っこされている、中々可愛らしい赤ちゃん。鏡に写る人はこの2人だけ。自分の目から見える視界には鏡を正面にして2人だけ。
鏡の中の女性の人差し指が、赤ちゃんのほっぺをツンツンしている。それと同時に、自分のほっぺであろうところに感じるツンツンされているという感覚。
つん、つん
なんか照れ臭い.....
「あなたの名前は、リヒト。リヒト・ローゼンベルクっていうのよ~。私があなたのママよ~」
鏡の中の赤ちゃんのほっぺをリズミカルにツンツンと押しながら、嬉しそうにつぶやく女性。僕のママらしい。
・・・・・
・・・
「おぎゃあああああああああああああ!?(えええええええええええええ!?)」
突然の大きな泣き声にママンはびっくりしてしまったみたいだ。困惑した顔で大人な僕(赤ちゃんです)を宥めようとあやしてくれている。
いつもだったら、こんな美人さんを困らせるとは何事かッ!となりふり構わず助けようとするのだけれど、今回ばかりは本当にすみません。さすがの【 比類なき不屈王 】と呼ばれていた僕でも無理です。(注:本人はなんのことを言われているのかまったくわかっていません。ただなんかかっこいいという理由で認知しているだけです。)
・・・・・
いままでの経緯から仮定するに、自分の霊体が赤ちゃんに乗り移ってしまったのか、はたまたどこぞやらの裏組織の人体実験によってこうなってしまったのか、もしくは赤ちゃんに生まれ変わる、つまり《転生》してしまったのか.....そんなふうに、考えられる可能性について思考している内に、自分が意識していなかった睡魔に突然襲われ、理解が追いつかぬ間に暖かい闇にのまれていった.....
◇◇◇
いきなり眠くなったことには驚いたけれど、これまた目を覚ましたら、今度は真っ白な空間にいた.....。
どうなってるのか理解しようとするどころか、もはや思考を放棄してもいいのでは?とさえ思ってしまった。
というよりも、だいぶ眠いので寝させていただきます。
おやすみーと、何故か今度はおぎゃ語ではなく日本語として発声出来たことを不思議に思いながら、仰向けになり、夢の世界に旅立とうとすると、、、
「なにしておるのじゃあああああ!! ここへ来て寝ることないじゃろうがああああ!!」
と叫びながら、いきなり目の前つまり僕の上に跨って現れた銀髪の美女、いや美幼女。
幼いながら、均整の取れた文句なし (文句あるやつとか怖い) の顔立ち。ふれると壊れてしまいそうな儚さを纏いながらも、強い意思の窺える黄金の瞳。腰まで伸びる綺麗な美しい銀髪。胸はまぁ.....
「へぶらぁッッ」
なんかいきなり殴られたんですが!?しかも無言ッ!!首が折れるかと思った!!決ッッッして、気持ち良かったとかいうわけではない.....うん。
いきなり、なんで!?と叫びながら幼女様を見る。すると何故か涙目の幼女様.....
訳のわからない場所だけれど、さすがに女性(幼女様)を泣かせるとあっては男が廃る!!
おろおろしながら理由と聞くと、胸のことでどう思われたかわかったと...
すみませんでしたああああ!!と幼女様に跨がれた状態で、心の底から全力で謝った。なんか途轍もなく自分が間抜けな奴だと一瞬思ったけれど、そんなこと言ってられない。
謝ったら本心からの謝罪だとわかったのか、幼女様はすべすべしてそうな頬を膨らませながら渋々許してくれた。
か、可 愛 す ぎ る ッ ! !
お持ち帰りしたい衝動に駆られたけれど、理性という名の精神の堤防で抑えることができた。紙一枚の厚さの堤防だけれど、とりあえず話題を逸らす意味でも、ここはどこなのか?と聞くと、それについては今から説明してくれるらしい...
そして、幼女様は僕の上に跨りながら(具体的に言うと股下以上臍以下のところですね。はい。)説明をし始めた。
数刻後・・・
幼女様のおかげで色々なことがわかった。
まず、幼女様は神様の一柱であるとのこと。
そこらへんのところは自然と納得してしまった。この真っ白な空間 (幼女様曰く客室らしい) もその一因であるけれど、こんな綺麗な絶世の幼子が存在する時点で、その子は神様だよ!(本人はマジです)
このことに関してはとても大事なことだけれど、とりあえず置いておくとして、僕の現状についてわかったことは.....
どうやら僕は死んで転生したらしい。
死んでしまった原因は、バイトの帰り道にトラックの信号無視で引かれそうになった女子高生を助けた拍子に逆に僕が引かれたと...
誰かを助けて引かれるとかいうことはよくあったから、死んでしまったこと自体にはあまり後悔はないけれど、一つ心配事としては、その女子高生が僕の酷い有様になっているであろう身体を見て、心に深い傷を残してしまうのではないかということ。
今までは多少の傷で済んだけれど、さすがにトラックだと多少どころか多多だろうねー
と思い悩んでいると、幼女様は慈母のようにニッコリと微笑みながら、多少の傷はあったようじゃが、綺麗な死体で満足気に笑っていたぞと教えてくれた。
幼女様がそんな微笑みをしてくれたのか不思議だったけれど、話を聞く限り大丈夫そうなので、とりあえず安心した。
それから、もといた世界の僕が死んだその後など聞かずとも幼女様自ら進んで教えてくれたりしたのだが、何故僕が転生したのか?することになったのかについては、秘匿事項じゃと言って教えてくれなかった。神幼女様の秘匿事項とあっては、しょうがない。
何故幼女様が僕の生前を知っているのか不思議。
あとは転生する世界について。
「詳しくは実際に体験してみればわかるじゃろ」と投げやりに言ってきた。
教える教えないというよりも、これについては説明するのが面倒くさいとのこと。
本来は、どの子もなにもわからずに生まれてくるのだから、知らなくても大丈夫じゃろ?と言われ、それもそうかと思ったり思わなかったり。
ひと通り説明が終わったところで、幼女様が当然立ち上がった。
何事かっ!?とビビりながら、幼女様の顔を直視。なんか幼女様、顔が熟れたトマトみたいに真っ赤で、しかも俯むき状態。
なにか気に障るようなことをしてしまったのだろうか...?それとも熱でもあるんだろうか?
そう心配になって、どうしたんですか...?と聞くと「な、なんでもないっ!!」と拒否されてしまった...うぅ。
こんな可愛い幼女様に拒否されてしまった日には、もう死ぬしかないとまで思えてしまう
...死のう...(注:もう死んでます)
幼女様がなにやら慌てて謝ってきた。
拒んでしまったわけではなくて、乙女には色々と深い事情があるんだって。そうと言われてしまっては、僕も落ち込んではいられない。深い事情とやらには掘り下げないことにした。
なりやら、ぶつぶつぶつと幼女様がつぶやいていたけれど、僕の視線に気づいて慌ててやめてしまった。可愛いな~
幼女様は姿勢を正して、もう1つ謝ることがあるのじゃ。これが主だったことなのじゃがと仰った。
えー、謝罪の内容については幼女様曰く、本来は転生させる前に先程の詳しい?説明をするのだが、魂を管理する神が 怠慢で無能な豚 で、尚且つ転生される魂はあまり例がないものらしく、準備を色々怠ったらしい。
深々と頭を下げてきた。
とりあえず、あまり気にしていなかったし、大丈夫だと言っておいた。幼女様を困らせた豚は許さない....塵ぃまってろよ....
だが、幼女様が顔を上げた瞬間、色々と大丈夫じゃなくなった。
幼女様が顔を上げた拍子に、幼女様が着ていた白いワンピースの裾が捲れて、中が見えてしまった。
大人の女性がはく黒のあれだった...
お分かりになられるだろうか?
この白と黒のコントラストの凄まじさが!
こればかりは直視したまま、思わず「黒...」とつぶやいてしまっても仕方がないと思う。
目を逸らすことが出来なかったが、なにやら幼女様から途轍もない“ オーラ ” というか “氣 ” というか、よくわからないものを感じた。
幼女様は俯きながら瞼を閉じ、小さな可愛らしい拳を思いっきり握り締めている。顔も真っ赤でさっきの顔の朱さとは、だいぶかけ離れているように見える。
確かに、見えてしまったのは不可抗力だ。そして、つぶやいてしまったのも不可抗力だ。
だが、たとえ不可抗力だったとしても、見てつぶやいてしまったことには変わりがない。
ということで、命いや魂の存在の危機を察した僕は即座に謝ろうとした。(ビビったわけじゃないよ?本当だよ?)
が
幼女様が受け入れるのは謝罪ではなく、僕ちゃんのお命らしい。
伸ばされる幼女様の左腕。こめかみに食い込む幼女様の中指と親指。そして、不気味な笑い声をあげる幼女様。
「フフ、フフフフフ....人が真摯に謝罪しておるというに...此奴は、何をしておるのじゃろうの?...灸を据えてやらねばならんようじゃ...フフフ」
正直ちびりそう。恐すぎて謝るどころではないッ!
脳の中で瞬時に出てきたのがこれだ。
→1. 死にますか?
→2. 死にますね?
頭が湧いてる間に、死刑が確定した。
「 無強化詠唱 【 神の第一審判 】」
それはー...神々しいまでのー...光の奔流
人など、存在すらおこがましいと....これ以外全てのモノはあってはいけないと思えてしまうほどの厳威さを持つ神の一撃。
神は全てを生み出したモノ。一にして全なるモノ。世界を眺め、傍観するモノ。
その神の一撃が直撃した・・・
もはや魂の一片すら遺さぬであろう一撃を浴びながら、痛みは一切なかった。
けれど、遠くなる意識。
意識を失う前にはっきりと聴こえた声。
神様の慈しみ愛するような声を聴いた。
「我は、おまえをいつも、いつまでも見守っているぞ・・・」
と...
そして、僕は幸福に包まれながら、意識を手放した。
読んでくださりありがとうございます。
プロットは大体でき上がってると思ってるんです(←え)が、文章にするとなると大変ですね....
4/9
key4869様のご指摘により、一部修正しました。key4869様、ありがとうございます!