表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あくまたたき  作者: 永山てりあ
2 二刀の侍と巨斧の牛王

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/30

14 次回予告

 天界。

 人間の住む世界とは別の世界。その天界に浮かぶ大陸のような大きな雲の上には、町のような巨大な宮殿がそびえ立っていた。


 その宮殿の一室。

 会議室に、道士服姿の狼少年――狼の神使である白狼(しろう)はいた。

 部屋の中央には大きな円卓があり、それを囲うように椅子が十二個、大きく間隔を開けて配置されている。置こうと思えば三倍の数の椅子が置けそうだ。

 そんな広い会議室を使って、これからはじまるのは悪魔への対策会議。


 しかし、はじまる前から会議で決めるようなことは、なにも残っていなかった。

 すでに神使の長である白狼(しろう)が各神使に最適な任を割りふり終えており、その命にしたがって皆が行動済みだったからだ。

 つまり会議というていをとってはいるが、ディスカッションすることは何一つなく、実際は神様への報告会に近かった。


 そんな必要のない会議。

 当然、集まった者は少なく、この場にいるのは四人だけ。すでに集合の時間は過ぎている。これ以上、人数が増えることはないだろう。

 しかし、そんな現実を認めたくないのか、白狼(しろう)の横、部屋の入り口から最も遠い位置に座る神様は、会議をはじめようとはしなかった。


 困った、神様のプライドを傷つけずに会議を始めるにはどうすればよいのか、と白狼しろう)は悩む。


 円卓に集まった者のそれぞれの位置を時計の文字盤で例えると、神様は十二時、白狼しろう)は十一時の位置に座っていた。九時の方向には侍姿の青年、牛の神使の聖牛(せいご)が腕を組んで座っている。

 彼は、白狼(しろう)の助けを求めるような視線に気づくと、慌てて目をつむり寝たふりをはじめた。


 白狼(しろう)は「こいつ、僕に全部押しつける気だな」と心の中で舌打ちした。

 聖牛(せいご)が駄目ならば――三時の方向を見る。そこには、鳩の神使――鳩遠(くおん)が座っていた。

 灰色の翼とミリタリーロリータファッションが特徴的な童女は、白狼(しろう)の視線に気づくと首を左右に振った。


 はぁ、と白狼(しろう)はため息をついてから、神様へと話しかける。


「神様、時間もおしていますし、そろそろはじめましょう」

「じゃ、じゃが白狼(しろう)よ。まだ神使が、お主含めて三人しか集まっておらぬぞ?」


 悲しそうな神様の声が、広い会議室に響く。本人もこれ以上人数が増えないことを、うすうす察しているようだった。

 白狼(しろう)は神様のプライドを傷付けぬよう、フォローする。


「皆、悪魔への対処で急がしいようです。一狐(いっこ)は小乃葉様の周辺調査、雅鷺(がろ)は例の悪魔像の捜索、子央(ねお)は〈悪魔顕現〉の解析、と。他の神使も同様に忙しく、宮殿に戻っていない者がほとんどです」


 フォローのため白狼しろう)はそう言ったが、彼の言っていることは真実でもある。数少ない神使たちは、人間界にあらわれるようになった悪魔たちの情報収集に追われていた。

 手が空いている者は、技術開発や諜報活動が苦手で、主な任務が戦闘となる者。つまり、この部屋にいる聖牛(せいご)鳩遠(くおん)が、それに該当している者であった。


 白狼(しろう)の報告のふりをしたフォローによって、神様は気を取りなおす。


「そ、そうか。ワシらは少数精鋭で人手不足じゃからのう。集まらないのも仕方ないことじゃな。……そうじゃ、兎藍(とあ)はどうしたのじゃ? 先日、宮殿に戻ってきたであろう?」


 神様の疑問に、白狼(しろう)がどう差し支えなく答えようかと悩んでいると――。


「あいつなら部屋で一人ファッションショーして遊んでるのです」


 鳩遠(くおん)が、ぼそっと答えてしまった。


「あ、あんじゃとぉー!」


 神様が立ち上がり、叫ぶ。しまったという感じで自分の口を押える鳩遠(くおん)だったが、すでに言葉にしてしまったものを戻すことはできなかった。

 瞬間、白狼(しろう)聖牛(せいご)が視線を交わし、小さくうなずきあう。白狼(しろう)が急いで言葉をつむぐ。


「それよりも神様、先日のザガンの件で聖牛(せいご)から話があるそうです」

「むっ? なんじゃ? 何か報告忘れがあったかのう?」


 そう問われ、聖牛(せいご)は立ち上がって話しはじめる。頼んだぞ聖牛(せいご)、と白狼(しろう)は心の中で彼を応援する。


「実は、その、ザガンのことですが」

「うむ。なんじゃ?」

「ザガンは、その、拙者が思うに体がとても大きいので」

「うむ」


 これは駄目そうだと判断し、白狼(しろう)鳩遠(くおん)を見る。

 助けをもとめる視線に気づいた鳩遠(くおん)は、こくりとうなずく。


「はいなのです!」


 授業中の小学生のように勢いよくあがる手。


「突然どうしたのじゃ、鳩遠(くおん)聖牛(せいご)が話しておる途中じゃぞ?」

「いえ、拙者の報告はもうありませぬ」

「な、なんじゃとぉ!? ワシ、何か聞き逃したかのう? ザガンがでかいということしか記憶にないのじゃが……まぁ、よいか。して、鳩遠(くおん)。どうしたのじゃ?」


 頼むぞ鳩遠(くおん)、なんとか神様を傷つけぬようにこの会議を閉幕させてくれ。白狼(しろう)聖牛(せいご)が見守る中、鳩遠(くおん)は口を開いた。


「この会議、やる必要ないと思うのです」

「皆が集まらない時点でそんな気はしておったのじゃー!」


 会議室から飛び出す神様を、白狼(しろう)は急いで追いかけた。




 魔界。

 人間の住む世界とは別の、地獄と呼ばれる地域が存在する世界。

 その地獄から少し離れた、別の地域の空。


 天界や人間界同様、魔界にも空はある。そして、天界の空に宮殿を建て統治する神様のように、地獄から少し離れたこの魔界の空にも統治者はいた。


 赤黒い空を銀の星が流れる。星の正体は、悪魔デカラビアだ。銀色の五芒星の形をした悪魔。

 まるで巨大な海星、もしくは宇宙船のような姿をしたデカラビアは、周囲に鳥の魔物をはべらせながら、飛行していた。

 魔界の空を切り裂くように飛んでいたデカラビアだったが、突如、目の前にあらわれた存在に気づき、急停止する。


「シラノイ、シラノイ」


 デカラビアが無機質な音をだす。一昔前の機械音声のような抑揚のない声。


「なんだよ、せっかく会いに来たってのに冷てぇなぁ! お茶でも出して歓迎してくれよ!」


 デカラビアの行く手を遮るように現れた線の細い男――ベルゼブブは、背中の虫の羽を羽ばたかせながら、飄々とした口調で喋った。

 突然あらわれたベルゼブブを警戒し、デカラビアの周囲にいる鳥の魔物たちは「キーキー」と威嚇しはじめる。


「おぉー怖っ。そんな敵視すんなよ。今日はいい話を持ってきてやったんだからさ」

「ミチミミシチ、ミチミミシチ」


 デカラビアが興味を持ったことを確認したベルゼブブは、ニヤリと笑った。


「地獄の奴らに借りを作れ――」


 ベルゼブブが言い終わるより先に、デカラビアは五芒星の体の中心から、レーザーを放つ。一筋の光はベルゼブブを貫き、そのまま魔界の空を駆け抜けていく。


「おぉ、怖っ! 当たってたら穴が空いちまうところだったぜ!」


 レーザーに貫かれたにもかかわらず、なぜか無傷のベルゼブブは「ぎゃははははっ!」と下品に笑ってから、話を続けた。


「そうカッカすんなって。アンタが一部の地獄の悪魔を嫌ってるのは、オレだって知ってるさ」

 

 領土争い、力の誇示、資源の争奪と魔界では悪魔同士の争いが絶えない。その中でも特に地獄は争いが顕著であった。


 かつて、地獄の空を制していたデカラビア。

 悪魔の中でも特に好戦的な性格のデカラビアは、争いの多い地獄で中心になりがちであった。

 そんなデカラビアを危険視した地獄の悪魔たちは手を組み、デカラビアを地獄から追い出したのであった。

 そのため、デカラビアは一部の地獄の悪魔を嫌っていた。敵視していた。憎悪していた。


「安心しろよ。借りを作れるのはアンタの嫌いな連中じゃない。アンタ側だった奴らの方だよ。どうだ? 話を聞く気になったか?」


 ベルゼブブ。何を考えていて、何をしようとしているのか、どの悪魔も理解することができない信用ならない悪魔。

 だが争いが好きで退屈をしていたデカラビアは、ベルゼブブの話を聞くことにした。




 天界と魔界、それぞれの思惑によって動く者たちにより新たな戦いが起きようとしている中、人間界――人間だけでなく動物、植物、微生物と様々な生き物が存在する世界にある、日本という国の埼玉県の一軒家、姫野家は平和であった。


 姫野小乃葉は自室の窓から外を見ながら、直前まで通話していたスマホをスリープ状態にする。

 通話の相手は神様だ。内容は『神の沽券が脅かされている』という話だった。


 なんとかしてあげたいけど、私にはどうしようもないなと思いながら、小乃葉は窓の外を見る。雲の無い夜空には、いくつも星が浮かんでいた。

 この調子じゃ明日は晴れだな、と小乃葉は思う。ということは、明日の学校行事は決行されるだろう、とも。


 小乃葉にとって学校行事は二種類あった。一つはいつもの授業をやらずに済む、楽しい行事。遠足や、修学旅行。

 もう一つはいつもの授業のがマシだなと感じる苦痛な学校行事。その代表が持久走大会だ。

 明日の学校行事がそのどちらになるかは、初めて体験する行事なので、小乃葉にはわからなかった。


 ちょうど、小乃葉の見ている窓の外で流れ星が落ちた。

 明日はゆるく過ごせますように。そう、小乃葉は星に願った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ