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あくまたたき  作者: 永山てりあ
2 二刀の侍と巨斧の牛王

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6 リセマラ不可

 お風呂を済ませ明日の学校の支度を終えた私は、昼とは別のお気に入りゲームキャラパジャマに身を包んで、自室のベッドに座りながら、枕元に置いたスマホのアプリで神様と通話していた。

 内容はもちろん、今日二度も襲ってきたザガンの話。二度あることは三度ある。三回目に備えて、私と神様は第二回ザガン対策会議を開いていた。私と神様に遊んでる暇はないのだ。


「尻尾切れたぁ!」

「ナイスじゃ小乃葉ぁ! 剥ぎ取るのじゃー!」

「ってゲームしてる場合かっ!」


 本日二度目の私のツッコミを、神様は「とはいえのう、こちらから出来ることは何もないからのう。今ワシらに出来ることといえばハンターのランクをあげることしかないのじゃ」と本日二度目のセリフで受け流しながら、キャラを操作してモンスターの尻尾からアイテムを回収する。


「それにしても前回のケルベロスもじゃが、今回のザガンも頻繁に襲ってくるのう。悪魔共、他にすることないのかのう?」

「暇な奴らですね」

「まったくじゃ。奴らと違って、ワシらは忙しいというのに。迷惑な奴らじゃのう」

「ですよねー。私なんて明日学校ですよぉ? あっ、モンスター弱りました!」

「よーし捕獲じゃー! 罠を置くのじゃ小乃葉! ワシがモンスターをその罠のとこまで誘導するからのう!」

「あいさー!」


 画面内の私のキャラが地面に罠を設置しはじめる。


「捕獲で思いついたんですけど、ザガンってケルベロスと違って会話ができるんですよ。だから、今度ザガンが来たら生け捕りにして、拷問していろいろ情報を聞き出すってどうですか?」

「お主、怖いことを思いつくのう。平和な日本に住んでいる中学生女子とは思えない、その野蛮で苛烈な発想はどこから生まれてくるのじゃ?」

「あのねぇ、私ぃ、思いついたのぉ。今度ぉ、ザガンが来たらぁ、お願いしてぇ、何が起こってるかぁ、教えてもらうってぇ、どうかなぁ?」

「今更可愛く言っても遅いのじゃ。過去の改変なんて神にも出来ぬことなのじゃ。……しかし、さっきの小乃葉、媚び売り過ぎていて、ちょっとイラっとくるのう」

「失礼な、可愛いだろうが。……過去改変って神でも無理なんですね。ってことは、神様でも失敗したら取り返しがつかないんですか?」

「小乃葉、神はのう、失敗なんてせん。よし、モンスターを連れてきたのじゃ! ぎゃーー!」


 ゲーム内で神様のキャラがモンスターに吹っ飛ばされて、力尽きる。


「神様ぁ!」


 ゲーム画面のど真ん中に「クエストを失敗しました」という文章が表示される。神は失敗しないとは?


「す、すまぬのじゃ小乃葉。まさか神であるわしがやられてしまうとは……」

「神様がやられたか……しかし奴は小乃葉四天王の中でも最弱」

「神であるワシをお主の部下に組み込むな。ちなみに四天王の残り三人は誰なのじゃ?」


 考えてなかったな。私の部下かぁ。ベッドの近くの棚の上に置かれた三体のゲームキャラのぬいぐるみが目に止まる。よし今日から君らは小乃葉四天王だ。


「残りはぬいぐるみとぬいぐるみとぬいぐるみです」

「四天王の四分の三が無機物!? しかもわし、最弱じゃから、ぬいぐるみ以下なのじゃ!」


 不満そう。しょうがないなぁ。


「じゃあ、ぬいぐるみを一体減らして、代わりに白狼(しろう)くんを四天王に組み込みます」

「ワシの部下を勝手にお主の四天王に組み込むでないっ!」

「駄目かぁ。……白狼くん元気にしてます?」


 ケルベロスとの時に助けてもらい、それ以来会ってない道士服姿の狼の少年のことを思い出す。


「うむぅ。白狼かぁ。元気ではあるのじゃが……」


 神様が言葉を濁す。白狼くんの身に何かあったのかな……? 不安な気持ちになり、心が騒めく。


「白狼はのう、マルバス、ケルベロス、そして今日のザガンと最近活発化している悪魔の動向を調査し対策をとるために、他の神使と連絡を取ったり、命令を下したり、天界の防衛網や各地の状況確認と、現在大忙しの状態なのじゃ。今だって、宮殿にはおらぬ」

「そうなんですか、白狼くん大変なんですね」

「うむ」

「上司はゲームで遊んでいるというのに」

「う、うむ……いやワシだってちゃんとやることやっておるのじゃぞぉ!?」

「ホントかなぁ? ……あっ!? 白狼くんがいないってことは、万が一ザガンが〈真化〉した時はどうするんですかっ!? まさか私一人っ!?」


 無理無理っ! 地獄の番犬に散々地獄を見せられて理解したけど、私一人で〈真化〉した悪魔と戦ったら瞬殺だよ。もちろん、やられるのは私の方。


「じゃから小乃葉、ワシだってちゃんと仕事をしておると言っておろう。代わりの神使に待機してもらっておるから、安心するのじゃ」

「そっかぁ、よかったぁ。どんな神使の人なんですか?」

「牛の神使――名を聖牛(せいご)と言うのじゃが、戦闘に関する実力はあるのじゃが性格がのう……少々プライドが高くて、頭が固いところがあるのじゃ。そのせいか神使と比べて力の劣る人間を軽んじているところがあってのう、興味はあるみたいじゃから嫌いというわけではないようなのじゃが……」

「よし、別の人で。今からアカウント消せば、神使ガチャリセマラできるかな?」

「勝手にわけのわからないシステムを天界に作るでない。不安になる気持ちはわかるがのう、なんとか確保した代わりがいない貴重な戦力なのじゃ。どうか、上手く力を合わせてくれんかのう?」

「むぅー、神様がそう言うなら我慢しますけど……大丈夫かなぁ?」

「神であるワシと仲良くなれた小乃葉なのじゃぞ? きっと大丈夫なのじゃ!」

「……そうですよね! それにムカついたら殴ればいいし!」

「あっ、やっぱ駄目そうなのじゃ……ワシも不安になってきたのじゃ……」


 えぇ……?




 時刻は二十三時。すっかり夜も更けた時間。夜は老けたけど、まだ中学生な私は明日の学校に備えて、そろそろ寝ないといけない。登校中に欠伸でもしていたら、またはーちゃんに「ゲームのしすぎ」って怒られるし、そもそも起きられなくて遅刻なんてしちゃったら目も当てられない。


「神様、私、そろそろ寝ますね」

「わかったのじゃ。とりあえず明日の朝まではザガンを気にしなくてよさそうじゃな」

「えっ、どうしてです?」

「それはもちろん小乃葉が寝るからじゃ。そうなると〈門〉が〈器〉を見つけることが出来なくなるのでのう、〈悪魔顕現〉が機能せぬのじゃ」


 へぇー。よくわかんないけど。

 待てよ、それなら……。


「じゃあ、悪魔が〈真化〉しそうってなったら、その瞬間、私が寝れば〈真化〉を阻止できるんですか?」

「そんな緊急時に一瞬で寝付けんじゃろ。まぁ寝られたとしてもじゃ、その間は悪魔の力の増加が止まるだけじゃ。結局は、小乃葉が起きた瞬間に〈真化〉するじゃろうな」

「駄目かぁ。まぁ、寝ている間は気にする必要がないってわかっただけ、いっか」

「うむ。じゃから明日に備え、しっかり休むのじゃよ」

「はーい。おやすみなさーい」


 神アプリを終了し、スマホを充電器と接続してから枕元に置く。照明のリモコンを操作し電気を消して、掛け布団をかぶり、目を瞑る。

 今日も色々あったなぁ。ザガン潰したり、ケーキ食べたり。明日は平和だといいけど。

 おやすみなさい。

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