68 結果発表、そして・・・
卒業試験の結果が出るのは一週間後。
今日は、試験の結果発表の日である。
放課後、学園長室に呼ばれた私とクリス様が座っている目の前に、学園長がいらっしゃる。
いつもは穏やかなお顔が、厳しく見える。
もしかして・・・芳しくない結果だったのだろうか。
「では、試験結果を発表します。クリスティン殿下、おめでとうざいます。」
最初にクリス様の結果・・・さすがはクリス様。
「アイリス・ノワール嬢・・・」
名前が呼ばれ、私は自分の手を思いっきり握りしめる。
すると、私の手を優しくクリス様が握ってくれた。
「おめでとう。結果は殿下と共に満点です。論文もなかなか見事なものでしたよ。我々も正直驚きました。頑張りましたね。これであなたも卒業です。」
学園長が、にこやかな顔で私に告げた。
「え、あの・・・本当ですか?合格ですか?」
本当に・・・?夢ではないの・・・?
「ええ、本当ですよ。殿下もアイリス嬢も・・・ご事情があるのはわかりますが、実力を隠されるのは学園としては見過ごせませんね。」
「あはは、すみませ~ん。こちらもいろいろとあって。そこは察してくださいよ、学園長。」
「本当にあなたたちときたら・・・Aクラスから飛び級で卒業生が2人も出たなんて学園始まって以来のことですよ。少しは自覚をお持ちになっていただきたいものですね。」
「僕たち、もしかして伝説になっちゃうとか?ルーク義兄上も超えちゃったかな?」
「クリス様ったら、お兄様にまた叱られますよ。」
二人で目を見合わせて、微笑み合う。
「ゴホンッ。嬉しい気持ちはわかりますが、淑女としてはまだまだですね、アイリス嬢。」
「あっ・・・学園長、大変失礼いたしました。」
すると、学園長からすっと笑顔が消えた。
「クリスティン殿下、この後はどうなさるのですか。卒業式には出席なさいますか?」
「う~ん、そうだね。・・・アリスはどうしたい?」
「私でございますか?」
学園では、友人も出来ず、ずっと一人だった。
みな、私を遠巻きに見ているだけ・・・向けられたのは好奇や嫌悪の視線ばかりだった。
「今年卒業される方とは面識もございませんので・・・クリス様にお任せしてもよろしいでしょうか。」
「それもそうだね。それに・・・兄上より先に大々的に卒業しちゃうと、さすがにいろいろマズイからね。学園長、申し訳ないけど僕たちは欠席するよ。」
「承知いたしました。大変残念ではありますが、致し方ありませんね。残りの学園生活につきましても、お二人は出席日数も足りていますから、どうぞご無理はなさらず。」
クリス様の表情が、真剣なものに変わった。
「学園長、いろいろと無理を言ってすまなかったね。おかげで二人とも無事に卒業できた。感謝するよ。」
「もったいないお言葉です、殿下。この結果はお二人の実力であるのは間違いありません。どうぞ、胸を張って卒業なさってください。」
もしかして、学園長はクリス様の事情をご存知なのかもしれない。
エドウィン殿下より年上で、成人する年齢だということも、本当の第一王子だということも。
学園長のクリス様への態度は、生徒以上のものを感じられた。




