5 アイリス・ノワール
君の名前は、アイリス・ノワール、今の年齢は15歳。
ここはね、アクオス王国という国。
君は、その王国に4家存在している侯爵家の娘だよ。
君には、両親と、この家を継ぐ兄がいる。
そして、父にあたる人は、王国でも重要な役職についているエライ人だよ。
君は親の権力と金にモノを言わせて、この国の第一王子の婚約者の座を勝ち取った。
あ、第一王子って・・・さすがにわかるよね。
君も、病院のベッドの上で、いろんな小説を読んでたもんね。
まあ、そんな感じだよ。
君は、さながら悪役令嬢って立ち位置だね。
この国では、お貴族サマは15歳から3年間、学園に通うことになっていてね。
君はこれから、2回目の学生生活を送ることになるね!
そこで、婚約者の第一王子に運命の出会いが訪れる・・・それが聖女様。
うん、そうそう、身分は君より低いからね、お決まりだよね。
だって、悪役令嬢だもんね。
学園を卒業すると、成人扱いとなって、晴れて結婚ができる。
うんうん、君が思っている通りだよ。
王子様は、聖女様と結婚するために、君と婚約破棄をしようとしてね。
君は、邪魔者を排除するために、とうとう聖女様を殺しちゃったってワケ。
え?どうして婚約者になる前まで戻してくれなかったのかって?
そこは・・・ごめんね。
僕の力不足でさ、ここが限界だったんだよね~。
だいたいこんな感じ。
今の君と最初の君がこれまでに得た知識や経験、思いなんかは共有するからね。
だから、マナーや言葉なんかは心配しなくても大丈夫、きっと体が覚えているよ。
あとね、君にはちょっとだけど、僕の加護もつけてあげる。
聖女様ほどじゃないけど、癒しの力が使えるよ。
自分の切り傷や擦り傷を治す程度だけどね。
間違っても、聖女様みたいに他人を治さないようにねってか、治せないから。
それと、大事なことをもう一つ。
聖女様に直接手を下さないのもそうだけど、君も自ら死を選ばないこと。
死を選んだ時点で、ゲームオーバーだ。
最後に、君と王子様は政略的な婚約だったけど、君はそうじゃなかったよ。
王子様のことが、好きで好きでたまらなかったみたい。
王子様に会えば、きっとわかると思う。
アイリスの想いは、すごく強いから、それに引っ張られないように注意して。
君は自由だ。
もちろん、婚約者の座を降りてもいいし、家出なんかしちゃうのも面白いかもね。
その健康な体で、自分が思う通りに生きるといいよ。
もし、君が本当に困ったことがあったら、僕を呼んで。
いつもってわけにはいかないけど、話くらいなら聞いてあげる。
それじゃあ、未来の君のために、いっておいで。
幸運を祈っているよ。