表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】もしも聖女を死なせたら ~聖女を殺した私の未来~  作者: カイ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

47/80

47 ささやかな願い

新学期が始まった当初は、いろいろな感情が混ざった視線をぶつけられていたが、私たちが常に一緒にいることが当たり前になってしまったのか、呆れられたのか、悪意のある視線は少なくなった気がする。

これも、クリス殿下が常に私の側にいて、ずっと矢面にたっていてくれるからだ。


これまでは、エドウィン殿下と聖女様に会わないように、とそればかり考えていたので、昼食も取らずにすぐ図書室へ行っていたのだが、新学期早々クリス殿下にバレて、ネチネチとお説教をいただいた。

それからは、学食で適当なものを見繕い、中庭で二人で昼食をとるようになった。


聖女様を伴ったエドウィン殿下とすれ違うこともあったが、エドウィン殿下を想うアイリスの感情に引っ張られることはない。

エドウィン殿下からは、変わらず嫌悪感の混ざった眼差しを向けらている。

まだ心臓はギュッと痛むけれど、宝石を握りしめるほどでもなくなった。

そんな時、クリス殿下が視界を遮るように私に顔を向けて、笑いかけてくれるから。


ある日の放課後の図書室で、クリス殿下が私に質問をされた。

「ねぇ、アリスはこれからも、放課後はずっと図書室にいるの?」

「え、ああ・・・そうですね。つい習慣で足を向けてましたが、あの、クリス殿下・・・」

「ん~、なに?」

言ってみてもいいだろうか。

私が・・・ずっと憧れていたこと。

「その・・・お願いがあるのですが・・・」

「お願い?アリスのお願いって珍しいね。僕ができることなら叶えてあげるよ。」


クリス殿下はどこまでも私に甘い。

これも、周りを欺くための演技なのだろうか。

そう思ったら、心臓がギュッとなった。

私は宝石を軽く握りしめ、思い切って口を開く。


「あの、ですね。私とお茶をして・・・いただけますか。」

「へ?」

「あっ、殿下のご予定もあるのに突然申し訳ありません。ご都合のよい時でいいのです。あの・・・」

やはり、ご迷惑なのでは・・・。

エドウィン殿下の、あのアルカイックスマイルを思い出し、また心臓がギュッと痛んだ。


すると、クリス殿下がふわっと優しい笑顔になった。

「アリスのお願いっていうから、つい構えちゃったじゃないか。そっか~、遊びに誘って良かったんだね。」

「え?」

「だって、アリスは放課後もずっと勉強してるからさ。ルーク義兄上になにか言われてるのかと思って、遠慮してたんだよね。なんだ、そっか~。ははっ、遠慮はいらなかったんだね。」

「えっと・・・」


クリス殿下が、私の黒髪をそっと撫でる。

「僕はアリスともっと仲良くなりたい。政略的なものではあるけれど、それがすべてじゃないよ。もっとお互いを知って、それで想い合える仲になったら、サイコーじゃない?」

「クリス殿下・・・」

「その為には、もっと交流が大切だ!アリスの好きなもの、僕に教えてよ。僕の好きなものもアリスには知ってもらいたいし・・・よし!それじゃ、今からデートに行こう!」

「え、ええ、今からですか?」

「善は急げ、だよ。王都の街に、僕のお気に入りのカフェがあるから、今日はそこに行こう!」


私の手を取って立ち上がり、私を引っ張っていくクリス殿下。

ああ・・・この方は、私が、アイリスが欲しかったものをすべて与えてくれる。


・・・・・・アイリスが、本当は『あやめ』だと知っても、変わらずいてくれるのだろうか。

それでも、私を受け入れてくれるのだろうか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ