46 サプライズプレゼント
クリス殿下と別れ、私は教室へ向かい、いつもの席に座る。
昨年の新学期とは比べ物にならないほどの視線を感じる。
「君は僕が選んだ女性」とクリス殿下は仰ってくれた。
そして、この婚約の裏側には事情がある。
大丈夫、大丈夫・・・、私には守るべきものがある。
自分にそう言い聞かせ、またギュッと宝石を握りしめる。
担任が教室に入ってきた。
その後ろに誰かが・・・あれは、クリス殿下?どうして?
「え~、今日からこのクラスに編入する、クリスティン殿下です。殿下は必要な試験を受けられ、すべて合格したため、飛び級が認められました。今年の残りの期間はAクラスに編入となります。」
「みなさん、今日からお世話になりますクリスティンです。まあ、色々あって飛び級してきました。そこは察してくれるとありがたいな~。というわけで、これからよろしく!」
人懐こいクリス殿下の挨拶に、教室の中に漂っていた緊張感がなくなるのを感じた。
さすがはクリス殿下。
あのお兄様を篭絡しただけあって、人心掌握はお手の物だ。
なんて感心しているが、あまりにショッキングな出来事が続いた私は、平静を保つので精一杯。
クリス殿下の言動に、気持ちが追い付かない。
「それじゃあ席は・・・」
と担任が言っている最中に、こちらにズカズカと歩いてきて、私の隣に座った。
「じゃあ、僕はここで!」
クラスの目が、一斉に私たちに向けられる。
・・・は、恥ずかしすぎる!!
朝の登校時も、そして今も、クリス殿下はどうしてこのように堂々と振舞えるのだろう。
「はい!皆さん前を向いてください。授業を始めます!」
担任が、パンパンと手を叩くと、こちらに向けられていた視線から、ようやく解放された。
とはいえ、まだ、チラチラとこちらを見ている人もいる。
「クリス殿下・・・どういうことでしょうか・・・」
「これが、アリスへのサプライズプレゼントだよ。同じ専攻だし、一日中ずっと一緒だね。」
「は・・・え、えええ・・・」
「ふふ・・・可哀想なアリス。僕からは逃げられないね。」
その日の授業の内容が、まったく頭に入らなかったのは、私のせいじゃないと思う。




