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【完結】もしも聖女を死なせたら ~聖女を殺した私の未来~  作者: カイ


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40/80

40 決断

さらに領地での時間は過ぎて行く。

去年は、楽しいだけだった夏休みが嘘のようだ。

たった1年しか経ってないのに・・・私の運命が大きく動いた1年であった。


「リズ、そろそろクリスティン殿下が見えられる。私たちも心を決める時だ。」

「はい、お兄様。」

「選択肢は3つ、隣国へ逃げるか、クリスティン殿下を選ぶか、エドウィン殿下を選ぶか、だ。」


エドウィン殿下の選択肢は、ない。

口では正妃とかなんとか言っていたけど、どうせ側妃にされてどこかに幽閉されるに決まっている。

それに、エドウィン殿下の側には聖女様がいる。

私にとっての地雷がある場所に、わざわざ自分から近づきたいとは思わない。


しかし、疑問が残る。

クリスティン殿下にどういう得があるのか、まったくわからない。

「お兄様、お聞きしたいのですがよろしいですか。」

「なにかな?」

「クリスティン殿下が私を求める理由が・・・いくら考えてもわからないのです。」


お兄様はしばらく逡巡し、その重い口を開く。

「リズ、ノワール家とイシュタル家に共通していることがある。わかるかい?」

「共通しているもの・・・側妃が出る家、ということですか?」

「ん~、それも理由かもしれないが・・・少し違うな。ほら、地図を見てごらん。」


私は壁にかかっているアクオス王国の地図を見て、ハッとする。

「・・・・・・どちらの領地も、リスティア帝国に接している・・・。」

「そうだ。私には隣国にパイプがあると言ったね?それは、東も同じことだよ。」

「まさか・・・まさか・・・」

「どうやら私と同じ考えを持つ者がいるらしくてね。この二家が手を組めばどうなるかな。」

「ノワール家とイシュタル家が帝国に寝返れば、アクオス王国は・・・お兄様は・・・。」


お兄様は、困ったような顔をして笑った。

「私は、自ら王国に盾突く気はないよ。ただし、帝国が攻めてきた時に最前線になるのは北と東。私は領民の命を預かっている。その後は・・・言わなくてもわかるね?」

私はこくりと頷く。

力で他の諸国をねじ伏せてきた帝国が本気を出せば、この王国なんてひとたまりもない。

お兄様は、領地や領民を守るため、無用な戦はしない選択をされたんだ。


「幸い、この土地は自然豊かであり、王国の食糧庫として機能している。帝国もそんな土地を無残に荒らすような真似はすまいよ。そのように交渉しているからね。東には、どういう思惑があるかはわからないが、私と同じように考えているのだと思う。」


「私が一人隣国へ逃げたとしたら・・・」

リスティア帝国に、この王国を攻め入る口実を作るのではないだろうか。

この領地を本拠地とすれば、攻めやすくなることは明らかだ。

でも、それではお兄様が無事であるとは限らない。

最悪、謀反人として処刑されてしまう可能性だってある。

そんなこと、させられるわけがない。


そうなると、私に残された選択肢なんて、最初から一つしかないではないか。

すべてを見越したうえで、クリスティン殿下があのような話を持ち掛けてこられたのなら、エドウィン殿下よりよほど恐ろしい方だ。


「お兄様・・・クリスティン殿下はあのように恐ろしいお方だったでしょうか。」

「正直、私も驚いているよ。まさかここまでとはね。」

「私の選択肢は、実は一つしかなかったのですね。」

「リズがエドウィン殿下から離れることを選んだからこそ、クリスティン殿下も動かれたのだと思う。リズは後悔しないかい?」


「・・・少なくとも、エドウィン殿下を選ぶよりは後悔しないと思いますわ。」

「それがリズの答えだね。リズ、妹を自由にさせられない不甲斐ない兄ですまない。それでもお前が少しでも幸せになれるよう、手を尽くすよ。」

「お兄様、そんなこと仰らないで。そこまで想ってもらうだけで私は充分幸せなのです。私がクリスティン殿下のお手を取ることで、お兄様の力になるのなら、迷わずそうします。」


私の心は、決まった。

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