4 最初の私
長い夢を見ていた気がする。
ゆっくり目を開けると、知らない風景が飛び込んできた。
ふかふかの広いベッド、広い部屋、大きな窓・・・。
そして、ベッドサイドのテーブルには、高そうな花瓶に薔薇の花が活けてある。
私はゆっくり体を起こす。
自分の両手を見つめ、握ったり開いたりしてみる。
白い肌に、適度に肉づいた私の両手・・・痩せこけて骨と皮になったそれじゃない。
動く・・・自分の意志で、体が動く・・・。
不意に視界が遮られる。
あれっと思ったら、私の髪の毛が前に垂れ下がって来た。
黒い髪、そして、長い髪。
洗っていないのか、少しベタベタしているが、ツヤがあって豊かな髪。
部屋の扉が、ガチャリと開いた音がした。
そちらに目を向けると、驚いた顔でこちらを見ている女性がいた。
「ア・・・アイリスお嬢様!!お目覚めに・・・す、すぐに医者を呼んで参ります!!」
『アイリス』?
私の名前は、あやめ。
あ・・・もしかしてここは、あのカミサマが言っていた最初の世界?
『アイリス』とは、最初の私の名前?
慌てて出て行く女性の後姿を眺めなながら、目が覚めるまでのことを思い出す。
「ほら、あそこでウンウン唸っているのが、最初の君。体調を崩して熱が出ちゃったみたいだね。ちょうどいい機会だから、さくっと入っちゃおっか。」
「ええ・・・でも、あれは私じゃないのに、本来の私?はどこにいくんですか?」
「ああ・・・そこは・・・あまり深く考えないでいいよ。僕に任せておいて。熱が下がるまでにまだ時間がかかりそうだから、この世界のことや最初の君のこと、いろいろと教えてあげるよ。」