3 カミサマ・・・?
「助けるってどういう・・・」
「ん~、君の魂を、最初の君に送るからさ。そこでやり直してよ。聖女様を殺めなかったら君の勝ち。この賭けに勝ったら、これから先の君は普通に寿命を全うできるよ。何歳かはわからないけどね。」
「もし、その聖女様が死んだら、この呪いは続くってことですか?」
「そうだよ。あ、でも、向こうが勝手に死んじゃったり、別の誰かに殺されたりしてもそれは大丈夫。大事なのは、君が手を下さないってことだからね。どう?簡単でしょ?」
「簡単って・・・。どうして助けてくれるんですか?」
「君がこれまでやってきたことは、確かに酷いことが多かったけど、一つだけ褒められることがあるんだよね。」
「褒められること?」
「そう。君さ、どんなに悲惨な状況でも、自ら命を投げ出すことはしなかったんだよ。尊厳を踏みにじられても、痛めつけられてもね。だからさ、ちょっと可哀想だな~って。呪いが薄くなってきた今なら、助けてあげられると思ってね。」
「あなたは、もしかして・・・カミサマ?」
「ああ~、ちょっと違うんだけどね~。でも、そう思ってくれていいよ。で、やってみる?」
未来の私のため、過去の私の行いを変える・・・。
今の私の運命は、変えられないってことだろうか。
たとえその賭けに勝ったとしても、『茨野あやめ』の人生は終わるのかな。
「もし、その賭けに勝ったとして、歴史を変えても大丈夫なんですか?」
「あはは、もう勝った気でいる?そういうことは賭けに勝ってから心配しなよ。」
「え・・・だって、人を殺めないなんて、当り前のことじゃないですか。」
「そうだね。でも最初の君の世界は違うよ。食うか食われるか、隙を見せたら負けの世界だ。平和ボケしてる君にとっては、辛い世界だと思うけどな~。」
「そうなんですね・・・やっぱり簡単な事じゃないんですね。」
「怖気づいちゃったかな?」
「・・・その世界で、私は健康ですか?」
「え?心配するのは、そこなの?」
キョトンとして、機械に繋がれている私の姿を見たカミサマ。
「そこは大丈夫、保証する!」
「そうですか・・・じゃあ、やってみます。」
賭けに勝ったとしても、今の私が生きている保証はなんてない。
だって、カミサマは「未来の私」って言ったもの。
たとえ失敗したとしても、私が死ぬことに変わりはないなんだ。
それなら、健康な体で、自分の意志で動かせる体で、自由に歩きたい。
知らない世界でも、きっとできることはあるはずだ。
「わかった。それじゃ、今から一緒に行こうか。お手をどうぞ、お嬢様。」
私は、カミサマの手を取った。