25 変化
2か月ぶりの教室に入る。
いつものように、窓際の後ろの席に座り、授業の準備をする。
クラスの皆の視線が集中していることを感じたが、知らないフリをする。
すると、私に話しかけてきた女性がいた。
「アイリス様、どうしていらっしゃらなかったの?」
ヴィオラ様だ。
身分の壁を気にしないのか、いつもながら勇気のある女性だ。
「いらっしゃるとは、どこにでしょうか。」
「セレーネ様のお披露目パーティーのことですわ。」
「ああ・・・領地に帰っておりましたので。知りませんでしたわ。」
「知らない?アイリス様、セレーネ様をエスコートしたのはどなたかご存じなの?」
「さあ・・・領地は遠いので、そういった話は聞こえてきませんでしたわ。どなたがエスコートされたのですか?」
「エドウィン殿下ですわ!」
やっぱりそうだったのか、思ったとおりだった。
「そうでしたか。さぞかし盛況なパーティーだったのでしょうね。参加できなくて残念でしたわ。」
「アイリス様は・・・本当にそれでよろしいのですか?あなたは殿下の婚約者でしょう!?」
プルプルと体を震わせているヴィオラ様。
小動物みたいで可愛らしい・・・失礼だけど。
「よろしいもなにも・・・殿下がそうお決めになったのなら仕方のないことでは?」
私が王都にいないと知って、さぞかし喜んだことでしょうよ。
大手を振って聖女様をエスコートできるもの。
呼び戻すと言った父親を、きっと止めたのでしょうね。
「アイリス様・・・」
ヴィオラ様がなにか言いかけた時、ちょうど担任がクラスに入ってきた。
なにか言いたそうな顔をしながら、席に戻るヴィオラ様。
もしかして、心配してくれたのかしら?
私のことを嫌いだって言ったのに・・・。
少しだけ、嬉しいと思ってしまった。




