24 新学期
とうとう王都に到着してしまった。
馬車から降りると、玄関で執事のセドリックが待っていてくれた。
「お嬢様、お帰りなさいませ。ご領地はいかがでしたか?」
「とても楽しかったわ。セドリックには忙しい思いをさせたわね。」
「それはようございました。長旅でお疲れでしょう。」
「・・・お父様とお母様は?」
「相変わらずですよ、お嬢様。今回はルーク様のはからいにより、すべて丸く収まりましたのでご安心ください。」
「そう、良かったわ。お兄様には感謝してもしきれないわね。」
「そうでございますね。湯あみの準備は整っております。まずはゆっくりと疲れを癒してくださいませ。」
「ありがとう。そうさせてもらうわね。」
湯あみをしてサッパリし、軽い食事を終えた後で、お兄様からいただいたレポートを取り出した。
お兄様の字・・・そっとなぞって、あの温かい大きな手を思い出す。
お兄様のために頑張らなくては・・・。
そして、学園に提出する課題をまとめ上げた。
領地から王都に戻り、一週間が過ぎ、秋の風に変わるころ、また一人で学園に登校する。
馬車から降りた私を見て、またヒソヒソと話している人たちがいた。
今さら・・・と思ったが、いつもと様子が違う。
なんだろう、と思って振り向くと、王家の馬車から殿下とセレーネ様が降りてきた。
「どういうこと?殿下がセレーネ様とご一緒なんて。」
「殿下にはアイリス様が・・・。まさか婚約破棄されたの?」
「そんな話は聞いてないわよ。」
そんな会話が聞こえてきた。
殿下と見つめ合うセレーネ様は、誰がどう見ても相思相愛のカップルだった。
心臓がまたギューッと痛くなる。
手袋の中で、また宝石をギュッと握りしめる。
殿下は、どこまで私をないがしろにすれば気が済むんだろう。
アイリスが、感情のあるただの女の子だってこと、忘れてるんじゃないだろうか。
そんなに聖女様が大切なら、さっさと婚約破棄すればいいじゃない。
あなたも・・・アイリスの父親と同じなのね。
そう思ったら、フッと体が軽くなった。
足が自然に動き、フイっと殿下に背中を向けて校舎へと歩いていた。




