21 特別授業
翌日、お兄様の執務室に呼ばれる。
「リズ、レポートを読ませてもらった。よくできていたよ・・・でも80点だな。」
「えっ・・・なにか間違ったことでも書いてましたか?」
「違う、その逆だ。出来すぎなんだよ。」
出来すぎで点数が低いってどういうこと?
「これから王都に帰るリズのために、私が特別講師をしてやろう。まずは、レポートを返すよ。」
返されたレポートを見ると、要所要所に赤いペンで修正されていた箇所があった。
「その課題についてだが、どういう目的があると思う?」
「目的、ですか?領地を運営するにあたって、必要となる能力を養うためではないのですか?」
「それもあるが・・・一番の目的は、主要な貴族のパワーバランスを調査するためだ。」
「えっ・・・?」
「経営学科を専攻する者は、たいてい商人か後継者。当然真面目に取り組むし、その分、レポートにはかなりの信憑性が出る。リズのレポートのようにね。」
「ということは・・・逆に言えば弱みを握られることに繋がるのですね。」
「そういうことだ。いち貴族に力を持たせては危険だからね。提出されたレポートはすべて王室のしかるべき部署で検閲されるんだよ。」
知らなかった・・・。
まさか、学園がそういう場になっていたとは・・・。
「だから、中央に知られて困るところは、少し手を入れさせてもらったよ。ごめんね。」
「そんな目的があったとは気付かず・・・申し訳ありませんでした、お兄様。」
「気付く者はほとんどいない。それより、一番先に私に見せてくれてありがとう。感謝するよ。」
お兄様が優しく微笑んだ。
「リズ、経営学科を専攻して、わかったことがあるね?」
「・・・はい。この王国が一枚岩ではないということですね。」
「そのとおり。さすがは私の妹だ。」
お兄様に褒められると、嬉しくなる。
「第一王子の後ろ盾には我がノワール家がいる。第二王子の後ろ盾はどこの家かわかるかい?」
「いえ、そこまでは・・・」
「リズもまだまだ勉強不足だね。側妃の出自は、東のイシュタル家なんだよ。」
「それは・・・次期後継者の座を巡って、侯爵家が対立する、ということですか?」
「そう。南のサリオン家と西のウィンダム家は、今のところ沈黙を貫いているが・・・情勢次第ではどちらに転ぶかわからないね。」
聖女様を殺めないようにと、そればかり考えていた私だった。
その裏側では、貴族を巻き込んだ後継者争いが繰り広げられていたなんて、思いもしなかった。




