表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】もしも聖女を死なせたら ~聖女を殺した私の未来~  作者: カイ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/80

20 レポート

ノワール家の領地は、アクオス王国の北に位置している。

夏は涼しいが、冬は寒くて雪も積もる。

夏は避暑地として人気で、貴族の別荘も数多くある。


そんな自然豊かな北の地は、当然王都とは逆の・・・いわば田舎だ。

母親が王都から帰らない理由は、このためだった。

貴族の別荘はあるとはいえ、流行の最先端のドレスも華やかな社交界も存在しない。

そういう場所がないと生きていけない母親にとっては、ここは苦痛でしかないだろう。


私は、お兄様と共に領地を巡り、産業や農業を視察する毎日を送った。

そしてこの領地の特色、問題点や改善点などをレポートにまとめていく。


聖女様のお披露目は無事に行われたようだ。

セレーネ様のエスコートは誰がしたのかとか、詳しくは知らないし、知る必要もない。

当然、王都にいる父親から帰ってくるよう手紙が届いていたが、お兄様が「勉学優先」を理由に断ってくれていたらしい。

さすがは、頼れるお兄様、私の家族だ。


私がここで、いつもの手袋をすることはなかった。

それだけ、心が乱されることなく、満たされた時間を過ごしていた。


そんな穏やかな時間はあっという間に過ぎていく。

そろそろ、王都に戻らないといけない時期になっていた。

帰りたくはなかったが、学園は卒業しなければならない。


学園を卒業したら、平民になる予定でいたが、今は迷っている。

お兄様の仕事を手伝いたい、という気持ちが芽生えている。

たった一人の私の家族・・・微力でもお兄様の力になりたい。


そして、課題であるレポートをまとめ上げ、お兄様に提出する。

「お兄様、レポートが完成しました。見ていただけますか。」

「わかった。今夜見ておくよ。結果は明日な。」

「はい。お忙しいのにごめんなさい。よろしくお願いします。」

「このくらいどうってことない。気にするな。」

お兄様はそう言って、私の頭をグリグリ撫でてきた。


「お兄様ったら。子ども扱いはやめてください。せっかくリタが綺麗に整えてくれたのに台無しじゃないですか。」

「ははっ。それは悪いことをしたな。そうだな、もう立派なレディーだもんな。」


お兄様の大きな手は、どこまでも温かい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ