17 夏休み
学園には夏に長期休暇がある。
期間は2か月ほど・・・随分と長い休暇である。
長期休暇の前に、中間試験があった。
私の成績は、全体で20位だった。
Aクラスでは上位であるが、Sクラスには一歩及ばない、という微妙な成績になった。
これには教師も周りも驚いていた。
不正を疑う者もいたが、試験は厳格な管理体制のもと行われており、いくら侯爵家とはいえ介入の余地はない。
これで、権力でAクラスをもぎ取った、という汚名は晴らされたと思う。
長期休暇中、専攻学科より課題が出される。
経営学科は、『自分の領地についての研究』という課題であった。
タウンハウスにある蔵書に目を通せば、ある程度の知識は得られる。
どうしようかと悩んでいた時、ある噂を聞いた。
それは、長期期間中に、聖女様のお披露目パーティーが開催されるらしい、というもの。
その噂を聞いて、私は領地に帰ることに決めた。
セレーネ様のエスコートは、きっと殿下がなさるに違いない。
公式行事であれば、殿下がエスコートするのは私ということになるが、たとえ共に入場したとしても、放置され壁の花になるのは目に見えている。
そんな針の筵のような場所に行ったら、なにをするかわかったものではない。
ノワール家の領地には、しばらく帰っていない。
最後に帰ったのはいつだったか。
兄の記憶もほとんど残っていない。
でも、自分の家だもの、帰ってもおかしくないはず。
そうと決まったら、父親や母親から横やりが入る前にさっさと帰らなければ。
私は執事を呼んだ。
「セドリック、長期休暇の間、領地に帰りたいのだけど手配をお願いできるかしら。」
「ご領地に、ですか。」
「ええ。学園の課題が、領地のことでね。この際だからきちんと調べたくて。リタも一緒に連れて行きたいんだけどいいかしら。」
「それは・・・ご自分の家にお帰りになるのにいいも悪いもありませんが。旦那様や奥様には・・・」
「ああ、あの人たちは私がどこにいようと気にしないでしょう。ほとんど帰ってこないんだし。後から謝罪するわ。」
「お嬢様・・・。かしこまりました。それでは先ぶれを出しておきましょう。出発はいつ頃で?」
「そうね。長期休暇が始まるのが来週からだから・・・すぐに向かいたいのだけど。」
「かしこまりました。お嬢様の仰せのとおりに。」
ここから領地までは、馬車で一週間ほどの距離だ。
お披露目パーティーに出席するため帰ってこい、と言われたところで気軽に行き来できる距離ではない。
執事とリタには申し訳ないが、急ぎ準備をしてもらうことにした。




