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墓標のラビリンス 天使ヵ悪魔ヵそれとも魔女ヵ  作者: 楽田佳
☆最後のラビリンス編☆

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第49話 帰ろう

「効くわよねぇ。だって、あなたが一番恐れる感情から作った魔法だもの! あなたには返せない、作れもしない。私もそうだったけど、もう一人じゃない」


 内でセラとタッチ交代して、真っ黒な翼を引っ込め、対極の白い翼が六枚展開される。


「ガブリエル。あなたの力も貸して」


 計八枚、四対に増やし、ローズルの傍まで駆けていき、彼女は手を伸ばして、ローズルの胸に触れる。

 接触と同時に全ての天使の力を引き出し、内側に注ぎ込んで、内部から発火させた。火だるまに変える。


 ――あ、熱いっ! うわぁ、熱いよ!


「レトリ、あとはお願い。今を生きるあなたが、未来を切り開くべきと思うから」


 片手を掲げ、天使長の聖剣を呼び出して交代。

 その際、彼に使って貰いたかったと、悔やまれるような声も聞こえたが、今は振るうことができるような状態ではない。代わりに掴み、高く持ち上げた。


「ミカエル様、わたしが代わりに振るうことをお許しください。確かにゴルくんみたいにうまくは使えないと思います。でも、ずっと傍で見てきたから。こう構えて、こう!」


 斜めに斬り下ろす。と同時、ローズルの身から光が爆ぜた。

 眩しいその光が収まると、姿を消しており、神殿が砕け、崩壊していく。


 急いで三人を連れて行かないとと目を向けるが、瘴気に身を包まれており、呑まれて姿を消した。


「――うそ、まさかまだ!」


 大慌てで外にとび出し、辺りを見回し探すが、すぐに途方に暮れる。

 広い。なんて言葉では言い表せないほどに周りに広がる空間は広大。砂漠に落ちた一本の針を探すようなものだ。

 

「どこ、どこにいるの……、みんなどこーっ!」


 大声上げたって、むなしく響くのみ。

 それでも翼を大きく広げて飛び立ち、探し回るが、焦燥感が募るばかりで、一向に見当たらない。

 手掛かり一つ見つけられず、弱い気持ちに心を押し潰されそうになったその時、


『大丈夫。まだ間に合うと思うから』

『しぶとさが取り柄なんだから、諦めるなんて似合わないわよ』


 内で二つの声がして、持ち直す。一人じゃないんだと思うと勇気も湧いて、力も出てくる。何度も皆の名を呼び、枯れかけていた声に張りも戻った。


「うん、ごめん! まだ諦めないよ。ううん、絶対諦めるなんてしないから。みんなで帰るんだ!」


 二人からのエールに元気を取り戻し、もう一度、いやまだまだと探し回ろうとした瞬間、どこからか、小さく声がした気がした。


「どこーっ! みんなどこにいるのーっ!」


 呼び掛けてみれば、今度はもっとはっきりと聞こえる。


 ――こっち。こっちだよ。


 相手はローズルであったが、その声の方へ迷わず、彼女は一直線に向かう。

 無論、二人からの静止も掛かった。

 二人は罠を警戒していたようだが、彼女にはそんな風には聞こえなかった。


 孤児院でよくやっていたかくれんぼが頭に浮かび、寂しがっているのだと思う。そんな気持ちが声から伝わった。

 自身にも経験があり、誰にも見つけて貰えず、一人孤独に夕日を見た時などは特に寂しさを感じたものだ。


 早く誰かに見つけて貰いたいのだ。誰だっていいのだ。その寂しい時に手を差し伸ばしてくれるのなら。


「怖いよね、一人は。今いくから」


 結構近付いたようには思うが、まだどこかはわからない。もう一度声を上げれば、また声が返ってきて、もっと傍まで行く。


 しかし最後が難しい。

 本当に近い距離まで来るともう声を出さなくなる子も多い。

 自分から出てくる子もいるが、自らは前者であり、こっち、そっちじゃないとか思いながら、ドキドキしながらその時が来るのを待ったものである。


 ローズルもどうやらそちらのタイプのようで、出てこない。ゆえ、ここからは地道な作業となる。

 意識を集中して目を凝らし、周りに浮く物の陰、隠れられそうな場所を次々覗いていく。


 力業での解決をクリフォトに推奨されたが、却下だ。

 三人が傍にいたら目も当てられないことになる。

 心の中でしっかりそのことを伝え、注意していた時、セラから上と言われ、見上げた。


 前には大きな木が浮いており、生い茂る上の枝葉の中、いた。

 羽ばたいてそこまで突っ込んでいき、被ったものを身を振って払う。


「みーつけた。わたしの勝ち」


 ――見つかっちゃった。キミやるね。次は何して遊ぶ?


「もう遊ばない。みんなを返して」


 ――どうしてボクから友達をとりあげるの?


「友達だったらとりあげなんてしないよ。無理やり連れてったんじゃん」


 ――だって、ボクは一人で、寂しかった。友達が欲しかったんだ。


「やり方はすごく間違えてるけど、わかるよ。一人ってすごく寂しいよね。だからわたしが最初の友達だよ。名前はレトリ。よろしくね、ローズル」


 ――いいの? キミは、ボクのこと嫌ったりしない?


「それはわからない。お願いするんじゃなくて、自分で嫌われないようにしないと。無理やり人を連れてったり、悪いことするのは特にダメ」


 ――わかった。もうしないよ。


「偉い。ううん、やっぱりまだ偉くない」


 ――どっち?


「今まで沢山悪いことしてきたみたいだから、まずはみんなにごめんなさいって、謝らないとね。怒ってる人いっぱいだろうし、大変だよ」


 ――もう、謝ることもできないよ。


 ローズルは上を見る。物悲しさがその姿には映し出されており、内で天使達に話し掛けられ、彼女はそんな彼に微笑み掛けた。


「心の底から悔い、反省したのなら、戻っていいんだって。帰ろう、天界に」


 ――天、界? ボクは、戻っていいの? 帰ることができるの!


「うん。今から送り届けてあげる。大地に縛り付ける楔を絶つよ!」


 利き手に四天使の力を集中させ、彼女は拳を振るう。

 その瞬間、白い炎が迸って、ローズルの周りに無数の鎖が浮かび上がり、溶けて、消えた。


「ちょっと荒っぽかったけど、聖剣振るよりこっちの方が威力あるかなって。大正解♪」


 引きつった笑いが内と外からもれていたりもしたが、気にせず、四天使に呼び掛け、呼び出す。

 ローズルの周りに円を描くように現れ、光を上げ、天まで昇らせた。


 怨みの鎧を剥がしていき、愛嬌のある少年の姿を見せたローズルは、彼女の方へ指を向ける。十字を切った。


「あつ……」


 胸の所に火傷した時のような痛みがあり、思わず覗けば、光輝く聖印が刻まれ浮いており、ぎょっとして、彼女が顔を上げたら、ニッコリと笑うローズルが映る。

 

「待ってる。また遊ぼうねっ!」


 目の眩むような光が放たれる。

 気付けいた時には谷底で横になっており、身を起こす。

 ゴル、ビーティ、ウルフも傍に倒れており、子都の子達もみんないて、次々起き上がる。

 

 誰もかれもが何が起きたかわからない、と言った顔であり、事情を知る彼女だけが青い青い空を見て、感傷に耽る。

 しばらくそうしていると、急に背をはたかれびっくりし、振り返る。やった相手はゴルで、こちらを見ていた目が、空へと向かう。


「ありがとな。俺の代わりにやってくれて」

「……、何が?」

「お節介な天使長様が、わざわざ言いにきてくれてな。本音を言えば俺がぶった斬ってやりたかったんだが、いいさ。なんかもうどうでもよくなった。この青い空を見てるとな。姉さんを、やっとあの空の上まで送ってやれたんだ」


 ビーティ、ウルフも隣にきて、皆で見上げる。終わったのだ。全部。


「わたしさ、良いことしてたと思う。間違ってなかったんだって、思った」

「お前は急に何言ってんだ」


「魂の解放者は良いことしてるのか、悪いことしてるのか。最初のころ、野宿してきのこ食べてる時その話したじゃん」

「聞いた覚えはまったくないぞ。大体お前きのこ食わなかったろ」

「そうだっけ?」

「そうだよ」


 はぁ、と小さく溜息落とすや、思い出したと言って、何故か彼に頭をぐりぐりされたが、痛いと思うより楽しさが今は勝る。


「いたい! いたいってゴルくん!」


 口ではそう言ったが。その後、多少困ったことも起きた。

 今は深い深い谷の底。どうやってここから戻ればいいのかわからない。


 もう翼も出せない。そこで思い出した。

 あの後、天使と悪魔のセラにお別れを言われ、さようならをした。


 魂を囚われていた子達も、核に宿る魂達と共に天へと昇り、全員そのことに気付いた後で、皆でお別れを言った。空に手を振る。


 もう囚われた魂は一つもない。

 この時を持って、ラビリンスを巡る旅も終わり、魂の解放者の役目も終わりを迎えた。

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