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墓標のラビリンス 天使ヵ悪魔ヵそれとも魔女ヵ  作者: 楽田佳
☆最後のラビリンス編☆

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44/50

第44話 最終決戦見据え、首都へ

「ララ、ミザリー、ティア、パム。見ていたか。ゴルが仇を取ってくれたぞ。無念を晴らしてくれた」

「そういや、あいつらそんな名だったな。忘れてた」

「……、ショックでだろう」

「いいや、嫌いだったからだよ」

「そんな風には見えなかったがね」

「気のせいだろ。人を玩具か人形みたいに扱いやがって。ずっと暑苦しい奴らだって思ってた」


「そうかね。なら今はそういうことにしておくとしよう」

「おう。そうしとけ」


「ゴルくんってさ、どんな時でもゴルくんだよね」

「だからその妙な言い方やめろ」

「だって、ゴルくんだし」

「そうね。ゴルって感じがしたわ」

「オレも思った。わからないが、ゴルだって」

「お前らな」


「ハハ、気持ちの整理もやっとついた。そろそろ墓を立ててやらねばな。怒られそうだ」

「まだだよ。まだ立てんな」

「……、それは、自分で立てたいという意味で」

「違う。まだ姉さんを連れ戻してない。あいつらもだ。あの中にはいなかった」


 脱出の際に見た霊達は、皆大人だった。彼は隣のレトリを指す。


「詳しくはこいつに聞いてくれ」

「そんないきなり。えーとですね、ラビリンスで死んだ子達は、悪戯の神ローズルに魂を囚われていて、あ、ローズルっていうのはロキのことで、その悪戯が原因で天界から落とされることになって、ラビリンスの悪魔に――」


 途中で止めたのは、ウィルの顔を見た感じ、話についてこられていないような気がしたからで、平気なのか尋ねれば、こくっと頷かれる。


「ほんとに?」

「ハッ、何度も驚かされて慣れてきた感じもあってね。普段なら荒唐無稽に思える話も今ならすっと信じられる。それは君に宿る前の聖女から聞いたのかね」

「わたしじゃなくて、核にです。中にいたのは別人格? クリフォトっていう名のセラなんですけど」


 ペンダントを引っ張り出すと、手のひらを向けて返される。

 深いしわを眉間に寄せ、険しい顔付きを彼は見せており、一つ大きな溜息が吐き出されると、どこか疲れたような笑みを浮かべた。


「なるほど。そこには天使が宿っているものと勝手に思い込んでいたが、違ったか」


「はい。最初にわたしを選んだのがさっき言ったローズルの力で深淵の魔女クリフォトと変わったセラで、今のセラとは全然別人で」


「あー、わかったわかった。そういう魂胆なのかね。君は私を混乱させまくって楽しんでいるのだろう。これはもうそうに違いない」


「ち、ちがいますよ!」

「違わなくはないと思うのだがね。もはや何がなんだか……、頭が痛い」


「ウィル。そういう時はこう言うんだ。ウルフ、今の話わかったか」

「わからないぞ」

「そういうことだ。今は理解を放棄しとけ。そのうち理解もする。次は死の谷へ行く。まだ帰るわけにはいかないんだ。お前らはどうする。そのローズルって邪神がいると噂の地に行こうって話だ」


「いくでしょ。ここまできたら。世界を救わせて貰うわよ♪ 窮地に陥ってる感じもないけど」

「ね。世界を救うって感じでもないけど、当然わたしも――、あ、待って」

「セラが話しかけてきたか?」

「オレもそう思った」

「二人共当たり♪ このまま行っても絶対勝てないから、しょだいおう? のメシアに会いにいけって」

「メシアだあ!?」

「まさかの建国者!? それって過去に飛べってこと? 天使の力なら可能?」

「ううん。まだいるみたい。生まれ故郷に」


「ならば私に任せておきたまえ!」

「うわ、急に元気」

「丁度世界を救う気があるかどうかを尋ねようと思っていたが、必要なくなった。首都なら交通の便も良い。キップを用意しよう」


 大した負傷があるわけでもなし、明くる日にはここから立つことになる。

 カシムナを筆頭に世話になった集落の人間達に礼を言い、首都を目指して一度町の方まで戻る。

 神が相手となれば、もっともっと助力が必要。

 協力を仰ぎに行くと言うウィルと手前の所で別れ、そこからは彼の召使い達に案内役が引き継がれた。


 二人おり、一人には見覚えがある。

 ホテルにいた男で、エレベーターで気絶させた三人は特によく覚えていた。

 あ、と思わず口から出もする。


「ビゼンテと申します。教会の人間が捜し回っておりますので、我々の子のフリをして、ついてきてください」

「私はシアンね。みんな似てないから、お互いの連れ子みたいな感じで合わせてくれると助かるかな」


「シアン、口調が乱れていますよ」

「そんな丁寧にやる方が怪しまれるって」

「……、それもそうか。ほらいくぞいくぞ、チビ共。さっさとパパの車に乗り込めえっ」

「いやそれはちょっと砕きすぎなような。言い方も気持ち悪いし。ごめんね、ビゼンテって器用なタイプでもないから」


 ウィルのとは別の車で送って貰い、小屋のような所へ連れていかれて着替えを行うことになる。ピシっとした服を着せられて、身嗜みも整えられた。

 

 そうしたら、次は駅だ。

 煙を上げて列車がくれば、初めて見る乗り物にゴルを除いて目も丸くなり、よくわからないまま中に案内されて、席に着く。ほどなく、動き出す。


「おぉおおおお、走り始めたみたいだよ! 外見て!」

「動いてるだけだろ。しかし盲点だった。そんな金がないから端から移動手段として外してたんだよなぁ。金があるならこれが一番早くて楽だよな」


「ゴルは、はじめてじゃないのか?」

「まあな」

「そもそも頭になかった人間の身にもなってくれる。こんな近代的乗り物、田舎じゃ無縁よ」

「ビーティもよくしらないものなのか?」


「多少は知ってるわよ。石炭を食べて走るのよ」

「せき、たん。おいしいのか?」

「そうね。食べてみたらわかるかも」


「食わそうとすんな。大体こいつだって食ってるわけじゃなくて、確か石炭燃料を燃やすことで発生する蒸気を利用して、シリンダーだかピストンだかいう部品を稼働させて動力を得て走っている、らしい。俺も詳しくは知らん」


「あんたマニア?」


「ねぇ、ビゼンテ。子供の会話してないわよ。ゴルくんのことは前から知ってたけど、こんなに利口だったの? 私子供のころもっと馬鹿だった」

「クソ生意気な子とは思ってた」

「あんた、大人げない」


「すいませんね。クソ生意気で」


 出鼻から妙な雰囲気になるも、喧嘩になるようなこともなく、二週間弱の長旅を経て、東の首都アンジェル・メシアに着く。


 この都の歴史は古く、その古風な町並みを今に残しつつ、近代化の波も一番受けており、よく目を凝らせば、田舎ではまず目にしない電気機器や家電に溢れ、人の数も桁外れ。


 駅に降りれば、まずその数に圧倒される。


「うわ、うわぁー、いっぱいだ」

「流石は首都だな。ここを杖つきながら歩いてたら、かったるかったろうな」


 シアンが前に出て、皆を引っ張っていく。


「みんなはぐれないように。ほらこっち。お母さんについておいで♪」

「オレの母さんはオオカミだ。ニンゲンだとそうは思えない」

「慣れよ、慣れ。慣れるべし」


「君は、あまり口を開かない方がいいかもな。ボロを出しそうだ」


「チッ、嫌ですわね。言葉を選ばずズケズケ言う大人って。ウルフもそう思うわよねー」

「わからないぞ」

「く、これだから生意気な子供は。口の減らない」


「何やってんのあんた! 子供達連れてさっさと来る!」

「わかってる! 今いくとこだ」


 用があるのは、建国者メシアを祀る祠。代々の王族が眠る大聖堂の中にあり、触ったりはできないが、一部一般向けに解放されており、傍で見ることは可能だ。


 途中、広場に立つ彼の雄々しい姿を模った石像を眺めていると、カメラマンに声を掛けられ、流れで一枚。


 撮ってすぐに現像可能なポロライドカメラであり、その場で写真を受け取る。


 それを見て全員、しばし固まった。


 カメラマンはにこやかに手渡してきたが、写真をよく見ていなかったか、見ないふりをしたか。写ってはならないものが写っており、しかもはっきりとわかるほど鮮明にだ。


「嘘でしょ。ビゼンテ、あんた何か怨まれるようなことでもした?」

「俺じゃないだろ。流石は魂の解放者だな。幽霊が写り込むとはな」


「写りたかったのかな? あれセラだよ」

「見ればわかる。正直クリフォトそっくりで血の気が引いたんだが」

「まあ当たり前っちゃ当たり前なんだけど、心臓には悪いわよね」

「ぜんぜん違うと思うぞ。目がやさしいんだ」


 子供四人の会話は少し離れた場所で小声で行われており、大人二人には聞こえておらず、向かうのを再開しようとしたその時、


 ――待っていた、と四人にだけ聞こえ、次の瞬間姿を消す。


 シアンとビゼンテの目には瞬きの間に起こった出来事であり、動揺も走る。


「ちょっと、消えたわよ!」

「騒ぐな。旦那様が俺を行かせたわけだ。俺はいつも余計なことはしない。旦那様もそれは理解してる」

「そんなこと言ってる場合?」

「だから落ち着け。目立つ。ただ黙って待っていればいいんだ。それが俺達の仕事だ。無事に戻ってこいよ。でなきゃ今度こそ俺はクビだ」

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