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墓標のラビリンス 天使ヵ悪魔ヵそれとも魔女ヵ  作者: 楽田佳
⭐︎六つ目のラビリンス編⭐︎

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39/50

第39話 女王

 何とか事なきを得、進み始めたは良いが、都は入り組み、死角となる場所も多い。

 どこからモンスターがとび出してくるかもわからず、警戒しながらの進行では歩みも遅く、普段より疲れも覗いてくる。


 空の景色が移り変わらず、あれからどれだけ時間が経ったかもわからないが、途中で四人は一休み。


 持ってきた軽食や水を口に入れ、元気を補給。再出発。都の半ばくらいまで来たくらいか、唐突にそれは現れる。

 

 先に一心不乱に地面に横たわる黒い何かを食うモンスターがいた。貪り終えると長い舌を覗かせ、身を大きくする。


「おい、まさかあいつ共食いしてたんじゃないだろうな」

「グロすぎグロすぎ」

「おいしそうには見えないぞ」


「あのモンスター、魂の歪み方が普通じゃないよ。前の大きい奴もそうだったけど、仲間を食べて力をつけてる。道理でまったく出くわさないわけだ。食べ合ってて数がいないから」


「俺らのパワーアップ度合いの方が上ってことを踏まえると、逆にラッキーではあるんだが。ほんとここキモいな」

「ええ。もううんざりするくらい。吐きそう。キッショ」


「そのきっしょとか、きもいという言葉は、どういう意味なんだ?」

「あんた普通にきもそうだとか言ってなかった? 知らずに使ってた?」

「ああ」

「気分が悪くなるって意味だ。見ていて気分が良くなるものじゃないだろ」


 二人がそんな風にウルフの質問に答えていた時に大きな手が見え、食って力をつけたモンスターを握り、攫っていく。

 驚いて、見上げれば、とてつもなく大きなモンスターが映り、一同目を丸くする。

 そいつを口に放り込み、食っていた。


「あいつがほとんど食っちまったんだろうな。見ればわかる。やばそうだ」

「あの図体でどこに隠れてたのよ。こっちも隠れるように動いてたから近いとこしか見えてなかっただけか」


「あいつ、変だ。あんな大きな体して音を立ててない」

「自前のものか、食って奪ったものかは知らないが、色んなモンスターの能力を持ってんだろ。これは流石に作戦練って向かった方がいいな」


「みんな見て。肩のところ」

「ああ? 何かいるのか。全部黒だし夜でもあるから見にくいな」

「今羽動かしたわよ。あのヴァンパイアじゃない」

「オレを噛んだやつか。もう噛まれない。今度はオレが倒してやる……!」


「届くような場所でもないし、あのデカイのと遣り合ってる時にまた忍び寄られても面倒でしょ。私が仕留めるから、ウルフ、あんたは無防備になる私の護衛。ゴル、レトリ、あいつは任せたわよ。動きは止めてあげるから」


「お前、何をするつもりだ?」

「まあ見ていなさい」


 糸を切って、一度出したドールを全部引っ込め、 ビーティは新たな一体を引っ張り出す。

 騎馬戦車の見た目をしており、わざと大きな音を立てさせながら巨大なモンスター目掛けて走らせる。


 気付いて、モンスターも向かってきて、その瞬間、彼女は腕をしならせ、手綱を打つように糸を動かし、命じた。


「ルーク、城塞突撃」


 その声で騎馬戦車が巨大化し、モンスターと真正面からぶつかる。力が拮抗し、押すでも押されるでもなく両者はその場で静止。


「今よ」


 その声を合図にゴルとレトリは物陰からとび出していき、疾走。


 脇から出した別の二本の腕と、口から伸ばした長い舌を振るい、騎馬戦車を壊し始めたモンスターの足元まで行き、加勢に入る。


 強化された光の剣が足の指を次々跳ね飛ばし、膝をつかせた。レトリは少し離れた場所で意識を集中しており、閉じていた目をカっと開く。


「ゴルくん離れて! 悪を滅し、浄化せよ。天使の炎!」


 ステッキの先についた白水晶から強烈な光が放たれ、次の瞬間、モンスターの巨大な身を白い炎が包みこみ、断末魔の声を上げさせる。


「ヒュー、ぶったまげるような威力だな。纏めてやったか」

「ううん。ヴァンパイアは光を浴びてないから、逃げられた。あとはビーティに任すとするよ。かなり怒ってたし」


 新たに出された別のドールが屋根の上を駆ける。向かうのは、都を一望できる中心部の塔。

 その天辺に命からがら舞い戻ったヴァンパイアは、そこで今何が起きたかを考える。


「何者? まあここは引くが吉。私さえ無事ならまた作れる。私はここの女王、死ぬわけにはいかない」


 今まで来た子供達とは、明らかに一線を画す力を持つ子達。

 魅了の力で食い合い起こさせ、生んだ自身の最高傑作を意図も容易く葬られた。


 阻めという命も感じてはいるが、封殺できるだけの自我が自らにはある。

 自分は特別な存在であること、それを自覚しており、もう高みの見物を決め込むつもりでいたが。


 妙なのが上にあがってきて、眉を寄せた。

 光り輝く白金のマネキンであり、大仰な会釈までしてくる。

 次の瞬間、駆けてきて、胸を貫かれた。


「女王の命を奪いに来るとは不敬千万。ばらばらに砕けなさい」


 両手の先から伸ばした鋭利な爪で裂こうとするが、その爪が硬さで折られ、女王は一旦引く。

 無数の蝙蝠に分裂し、階下へ。

 

 展望台に降りるとすぐさまマネキンが追ってきて、戻したばかりの身に腕を突きこまれた。

 腹と頭をやられたが、掴むことには成功し、両手から生み出した炎で燃やしにかかるも燃えない。

 

「なんて硬度。私の炎で溶けないなんて。もうやめにするわ。あなた面倒」


 また蝙蝠に分裂し、逃げようとしたら、弱点の心臓を砕かれる。


「あがっ──、どうして」


 一匹の鼓動打つ蝙蝠が落ちると、他の蝙蝠も落ち、消滅を確認するとビーティは意識をマネキンから戻した。


「話すモンスターは初めて見たけど、頭は悪かったようね。間抜け。二度も見せていいものじゃないでしょ、それ。お疲れ様、クイーン」


「よかった。やっと起きた」

「寝てたみたいに言わないでくれる? 今どういう状況?」


 腕の中で揺られており、ゴルとレトリも傍を走る。全力疾走といった感じである。


「バカみたいな数に追われてるんだよ! 派手にやったからな!」

「急にすっごく現れて! 手に負える感じでもなくて!」

「食い合いしてるから、数がいないとか言ってなかった?」


「補充されてたんだろ! 知らないがな!」

「多分そう! 早いとこ階段見つけないとあの数に押し潰されちゃうよ!」


 ビーティは目を閉じ、もう一度意識をクイーンに移し、塔の天辺へ登り直す。

 見渡す。見つけた。


「クイーンに案内させる。今降りてくるから――ほら、きた」


 降りた衝撃で道を粉砕しつつ、登場し、屈めていた身を起こすとクイーンは片手を優雅に広げて来るよう示し、同時に身を翻す。走り出した。


「はっは、派手な登場だな! 随分強そうなマネキンじゃないか」

「うん、それに綺麗。きらきらしてる♪」


「……、勝手に動くのか?」

「まさかあんたが一番に気付くとはね。そ、クイーンは他の人形とは一線を画す存在。ドールマスターの最高傑作。この美の名を持つ私に相応しい、美しき自動人形(オートマタ)


「おーと、また?」

「うわ、ビーティがビーティしてる」

「何そのアホみたいな言葉。もっと的確な表現あるでしょう。自信を取り戻したとか。別に失った覚えはないけど」

「お前ら馬鹿なこと言ってないで、真面目に走ってろ。俺が足の速い奴を落としといてやるから。振り返らず進めよ。要らない心配だからな」


 ゴルがくるっと身を返す。

 しかしバック走でついてはきており、レトリとウルフは従い駆けた。


「りょーかい!」

「任せたわよ、ゴル」

「振り返らず、全力だ!」


 元より全力ではあったが、気持ちが上がれば、その分力も入り、脚は更なる加速を生む。

 都の通りを大爆走。

 カーブが来たら壁を蹴って速度を維持し、一切足を緩めず、一気に広い都を駆け抜けて、最深部に置かれていた階段を駆け上がる。上の階へ転がり込んだ。


 眼前には、見上げるほど大きな船。

 一拍遅れて、ゴルも来て、四人で青い景色を眺める。砂浜があり、波が寄せては引く。


「まさか海とはな」

「初めて見たわ……」

「すごい広い」

「ああ、広いな」

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