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墓標のラビリンス 天使ヵ悪魔ヵそれとも魔女ヵ  作者: らくだ けい
⭐︎一つ目のラビリンス編⭐︎
3/50

第3話 ボスの種類とボス

「んんー」

「なんだよ。不服そうだな」

「ごめん。全然似合ってないと思って」


「お前、言って良いことと悪いことがあるだろ。まあ、お前のような女には、この名のかっこよさが理解できないか。強く逞しい響きだろうが」


「自分で言うんだ。変わった性格してるよね」

「お前にだけは言われたくない。お前にだけは」

「とにかくよろしくね、ゴルくん」

「その呼び方はやめろ。お前に言われると不愉快だ」


「なんで」

「なんでもだ。いちいち突っかかってくんな」

「ケチ」

「口の減らない奴だな。それよりお前も教えろ」

「何を、ああ、苗字? メープル。メープル孤児院の子はみんな」


「知らねぇよ。どこだよ。お前の使ってるモンスターのことだよ。さっきからわりと気になってんだ」


「ヴァンパイア」

「お前、さらっと嘘つくのな。誰が騙されんだよ」

「本当だって! ほらこれ見てよ」


 口を動かす時に上の歯が下にカツカツ当たる感覚があり、気付いていた。犬歯の所に牙が生えている。


 大きく口を開け見せてはいるが、反応は薄い。


「だけだろ。翼もなければ服も違う。そのステッキも自前の物じゃないんだろ。ヴァンパイアは、そんなの持ってないぞ」

「このヴァンパイアは女の子で、大人じゃないから」

「女の子だあ?」


 大人じゃないから翼が生えていないのではと、そう言おうとしたのだが、背中に妙な感覚を覚え、怪訝な顔をする彼の前で、彼女は動かして見せる。


 開いた。バサっとカラスの羽が後ろから覗く。


「あった! びっくりした!」

「びっくりしたのは俺の方だ。さっきまでなかったろ。なかったよな?」


「自信なさげじゃん。あったんだって。うわこれ凄いよ。自由に動く。今なら空を飛べそう。よし、飛ぶかっ!」

「待て。だとしてもコウモリの羽じゃない。なら特殊個体――」

「とくしゅこたい?」


「普通とは違う奴ってことだ。もう飛んでいい。というかもうどっか行ってこい。やっぱお前といると面倒だ」


 レトリはニンマリ笑って、彼の後ろへ回り込んだ。抱きつく。


「寂しいこと言わないで。そら行くよ」


 ばっさばっさと翼を振り、羽ばたき立つ。

 そのまま高い所まで来ると、この場所がよく見渡せる。

 広いなんてものではない。遠くの方は霞がかってわからないが、建物の中にいるという感じは一切ない。


 風を感じる。どこから吹いているのか。

 飛び回って探していると、思いのほか早く階段を見つけ、前に降り立つ。


「ほら、二人だと簡単に見つかった♪ ──ゴル、ゴラ、くん?」


 さっきから随分大人しい。

 もっとごちゃごちゃ言われるように思っていたが、不思議に思い、正面に回り込んで、少し俯けた顔を下から覗き込む。


「僕に寄るな!」


 すると突き飛ばされて、驚く。

 一体どうしたと言うのか。顔が真っ赤だ。


「わ、わかったか! このバカ女! 不潔だ!」

「もしかして、照れてた?」

「そんなわけあるか! 僕が」

「僕?」

「――ってない。言ってない!」


 ぷいっと横を向かれ、おかしいおかしいとぶつぶつ言ったあと、彼はハっとした表情を向けてくる。


「噛みついたか」

「してないよ。やったら普通気付くじゃん」

「だが似たような能力を使ったな」

「使ってません。さっきから何言ってるのかわかんないんだけど……」


「そんなわけあるか。いや、無自覚に発動したか。何にせよもう僕に寄るな。お前は危険だ」

「素直にさ、照れて恥ずかしかったって言えばいいのに」

「お前は人の話を聞け。もういい。階段も見つかったんだ。帰っていいぞ」


「僕一人だと心配だから、ついてくよ」

「言った覚えはない!」

「さっきも言ってましたー。俺って言うより全然いいよ。合ってる」

「黙れ。ついてくるな」


 いいか、絶対にだぞと釘も刺されたが、階段をのぼり始めた彼の隣へ。構わずついていく。


「たまたま進む方向が同じなんだよ」

「言ってろよ。犬が」


 のぼりきると城の中を彷彿とさせるような華美な部屋に出て、真ん中の所に敷かれた赤いカーペットの先に、大きく重そうな鉄扉がある。


「あの奥にいるの、親玉かな。雰囲気漂ってる」

「魂の解放者の癖に。知らないのかよ」


「よく寝ちゃってて。なんで勉強ってあんな眠くなるんだろうね? 不思議だよね」

「バカ女」

「なら利口なゴルゴラくんは知ってるんだね。やっぱりゴルくんって呼ぶね」


「やめろ。当たり前だろ」

「教えて」

「嫌に決まってんだろ」

 

 前に回り込み、両手をわきわきすると、話してくれる。

 まず主がいることを肯定をして、付け加えてこう。


「ここはハズレだ。門番がいないからな」

「いるといいことあるわけだ。手強そうだしその分核も……、あああっ!」

「なんだよ。急に」

「核、拾ってない。あんなに倒したのに」

「二階の夢の住人共のことを言ってるのか? 一階は俺が駆逐したしな」


「わかんないけど、早く取りに戻ろう」

「見てなかったのか。どいつも落としてなかったろ」

「……、そうだっけ?」


「アホ女。無知過ぎなんだよ。あいつらはボスの見る夢の中の住人。モンスターじゃないから核は落とさない。そう言われてる」


「へぇー、じゃあじゃあ次は」

「おい、時間を取らせんな。俺はお前の先生じゃないんだぞ。ったく」


 ぼやきつつも彼は色々と話してくれた。

 どんなボスなのか。

 その質問には、大きく分けて二種類おり、強いのと弱いのがいるということを。


 そして前者であれば必ず門番がおり、先程口にしかけた思い違いも正される。


「稼げるからじゃないんだ?」

「それもあるにはあるが、重要なのは後ろに控えたボスの方で、弱いとレベルアップが起きないんだ」

「へぇー、れべるあっぷ」

「核に宿るモンスターから新たな力を授かることな。もういいだろ。早くいくぞ」


 思いがけない言葉であり、彼女はただ、うん、と返事。並んで向かう。


「結構緊張するね」

「初めてなんだから、当然だろ」

「どうした。急に」

「あのな、お前に何言っても無駄だろ。邪魔だけはするなよ」


「どうしようかなあ?」

「おい」

「冗談♪」

「緊張解すのに俺を使うな」

「あはは、バレた? そうだよね……」


 扉に近付けば、近付くほど、嫌でもその緊張は高まる。

 傍まで来ると、ピークを迎え、無意識に胸の所を押さえつつ、視線を取っ手のありそうな箇所へ。ない。


 どうやって開けるのか。そう思った次の瞬間、独りでに開いていく。

 口も勝手に開いていき、視線も昇っていく。


 空でも見上げるように。


 奥に待ち構えていたのは、真っ黒な巨人。

 大木を思わせるような巨剣を肩に担ぎ上げ、こちらを見るように首を傾けた。


 ――アアアアアアアアアアアアアアア


 次の瞬間、突風放つ大声発し、まるで嵐でも吹いたようで、身を飛ばされそうになる。


「何、こいつ――」


 踏ん張りつつ、耳を塞いでいたが、頭の中に直接響いてくるような不思議な感覚があり、収まると今度は地鳴りが立つ。動き出した。


「バカみたいな声上げやがって。巨人ってのは、実在したんだな」

「そんなこと言ってる場合!? くるよ!」

「わかってる。騒ぐな。どれ、お手並み拝見だ」


 彼の左腕が持ち上がる。前に向けられ光って、シュワシュワっという奇妙な音と共に青い光線が二本、巨人の胸元へ向かって飛んでいき、命中。


 効果は見受けられない。どしん、どしんとこちらへ向かってくる。

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