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墓標のラビリンス 天使ヵ悪魔ヵそれとも魔女ヵ  作者: 楽田佳
⭐︎五つ目のラビリンス編⭐︎

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27/50

第27話 ダンジョンと天を覆う巨体

 改めて三階を進み始めたが、一本道な一階とは似ても似つかぬ複雑な構造をしており、迷い、トラップに当たりもした。

 ウルフが手斧を放り投げ、床に落とすと、槍がそこからとびでてくる。


「おわ、びっくりした! ウルフなんでわかったの?」

「昔からわかるんだ。森の罠を壊してる時にバッシームに会って、バッシームが仕掛けた罠だったみたいで」


「なるほど。獣は鉄の匂いを嗅ぎ分けるというしな。お前もわかるわけか」

「匂いじゃない。わかるだけだ」

「勘って言いたいのか?」

「ねぇ、先祖返りが影響してる可能性ない? 該当する感じのは、ちょっと思い浮かばないんだけど……」

「シェイプシフターっぽいんだよな。さっきは俺の動きを完全に模倣してた。ミノタウロスの分厚い首を一刀のもとに断ったからな。容易くできることじゃない」


「ああ、あったわね。そんなジョブ。野生下で生きていけるくらいの適応力、人間の世界にもすぐ馴染んでるし、ありそうありそう」


「二人でいつも解決しちゃうよねー」

「ウルフは生まれつき真似をするのがすごく得意な奴だって言ったんだよ」

「そういうジョブがあったのよ。大したことできない器用貧乏だって見た記憶があるけど、数が少なかったみたいだし、その本の著者も詳しくは知らなかったんでしょ」


「謎も解けたところで、いくぞ。トラップを無視できるならモンスターに集中できる」


 そこから出るわ出るわ。強力なモンスターの数々。

 蛇の尾を持つ大鶏で致死毒を振り撒くコカトリスや、半蜘蛛半女の体を持ち強力な糸で絡め取ってこようとしたアラクネ。


 マントを広げて会釈をし、真摯な振る舞いを見せたヴァンパイアも出たが、秒殺された。


「見たか。今のがヴァンパイアだ。全然似てなかったろ」

「え、うん。よく見る前に倒しちゃったから」

「騙し討ち主体の奴だからな。知っていたならただのカモだ」


 液体型のモンスター、スライムも出た。

 先ほどのヴァンパイア同様、レーザーで先制攻撃を仕掛ければ、爆発する。


「ケホッ、ケホッ、特殊個体な気はしたが、危ないやつだな」

「迂闊に寄ってたら全員吹き飛んでたわね。本来一階にいるような雑魚モンスターを見掛けたら、要注意ってとこね」


 グリフォンやマンティコアのような飛行型も出る。通路という狭い場所では全く強みを生かせず、袋叩きにされて始末されたが。どちらもけたたましい断末魔を上げ、核を残して消える。


「大きな核ばっかり落として、これはあれね。言いたくないけど言いそう」

「天国だなってか。マジ稼ぎ放題だろ、ここ。全部のラビリンスに置いてくれないか」

「わかる。わかりみが強すぎる」

「わかりみ?」

「なんかここにも慣れてきたな。全然怖くなくなった」


 もっと手強いように思っていた魔都。思いのほかサクサク進み、終わりを迎える。

 階段のある部屋は入る所以外は閉じており、前を向いていれば安全に休める。休息を入れた。


「結構稼げたな。これくらいの得はあって然るべきとは思うが」

「並のパーティじゃこうはいかなかったと思うけど。トラップを無力化できたのは大きかったわね」

「お手柄だ。ウルフ」

「オレ?」


「どんなに強い奴でも不意打ちされたらあっさり死んだりするものだ。お前がいるとそれも防げた。万能サポーターだな」

「殴り合いもいけるし、あんたほんと魂の解放者として優秀よ」


「すごく体がむずむずしてきた。どうしてだ?」

「ウルフ、そういうのこそばゆいって言って、嬉しい時になるの。わたしもすごいなって思うし、この勢いでボスまでいけたらいいんだけど」


「人の言葉を話す山のように大きなオオカミが出たそうだぞ」

「聖女様の話だよね? 終末を告げるっていう神話のフェンリルみたいのかな?」


「だったのかもしれないが、今までとは比較にならないとんでもない怪物が出るのは間違いない。気は緩めるなよ」

「ならさ、気合い入れ直しとく?」


 腰を落としていた段から尻を持ち上げ、レトリが三人に向かって手を出すと、ゴルが乗っかり、ビーティが乗っかり、最後にウルフが来て、全員で手を重ね合う。


「絶対勝つ!」


 おお、と声を出し合って、小休止は終わり。気合の乗った顔で四階へ。


 待っていたのは、広大な砂の大地。空には降り注ぐ灼熱の太陽。熱砂吹く。

 まるでここが、本来二階にある夢の世界のようで、視線の先で、大きく砂が隆起した。


 その下から大木よりも太い腹をした大蛇達が姿を見せ、鎌首持ち上げ、天を覆う。

 その巨体たるや、最初のラビリンスの巨人を優に超え、その圧巻の光景に皆ただただ言葉を失い、息を呑む。


 直後、出現と同時に生じた衝撃が大地を伝わり、足元を揺らし、こけそうになって、皆我に返った。


「ほ、ほんとに山みたいにデカイじゃないか! しかも数が多いだろ!」

「悪夢じゃない……。無理よ、こんなの絶対無理。退避、みんな一旦退避!」


「た、退避? あれ? 階段どこ……?」

「どこにいったんだ?」


「はあ!? 冗談でしょ? うそ、ほんと?」

「やるしかないってことか」


「あんた正気で言ってる!?」

「以外に活路はないんだ」

「わかってるわよ。でも作戦練る時間くらい」


「ビーティ、お腹括ってやろうよ。それがわたし達の役目なんだし。わたしは最初から逃げる気なんかないよ」

「オレもだ。ラビリンスに入るまえから覚悟はきめてる。どんな奴が相手でもひかない。獣達の平和はオレが守る!」


「ああもう! どいつもこいつも。いいわよ、やってあげるわよ。こうなったら破れかぶれね。ゴル! 陣形はトライデント&バリスタでいいの!」


 直訳すると、三又槍と大型弩。頷きが返される。

 

 これまで話す時間は山ほどあった。

 その中で生まれたそれは、三又の矛のように三人が前で攻撃を仕掛け、弱らせたところを攻城兵器のような強烈な一発で仕留める、ワイバラのボスに仕掛けようとした連携攻撃を深く練り込んだものである。


 先頭はゴル。少し後方、左右に別れて、レトリとウルフ。

 更にそこから離れた位置に、騎兵の後ろに跨ったビーティが続く。


 下で繋がった大蛇達の胴目掛け、先制攻撃のレーザーが何度も射出されたが、効果はないように見受けられる。なら頭、と狙うが、高い。

 動いてもおり、柔らかそうな目を狙うというのも無理そうだ。


「クソが! こんなのどうやって倒せってんだ!」

「いくよ、ウルフ。わたし達の番」

「尻尾を狙おう! 使えなくさせたら転ぶようになる!」


 阿吽の呼吸とまではいかないが、後ろに回り込みながら息を合わせ、同時に武器を振り上げ、叩き込む。両方根元から亀裂が走り、先が弾け飛んだ。


「うそぉ!?」

「だめか」


 動揺走らせ、動きを止めているところに強烈な砂煙を浴びせかけられる。

 頭上に影、尻尾を持ち上げたようで、ドズン、と衝撃がきて、二人は宙を舞った。


「ねぇ、どうしよう。ステッキ割れちゃった。私これしか武器持ってないのに、グスン」

「余裕があって、驚いた。今はそれより、逃げよう」

「そうだね。気持ちを切り替えないと」


 彼女は翼を展開。ウルフを抱え、一度引く。

 引け、引けぇと、ゴルの声も響き渡っており、丸呑みにせんと上から降り落ちてくる大蛇達の頭を必死に避けながら、四人は元の位置辺りまで戻ってくる。


 幸運なことに大蛇達の足は遅く、攻撃に晒され続けるということもなかった。

 来るまでに時間が掛かることもわかり、その間に一同頭を捻り、倒す手立ては何かないかと考える。

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