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墓標のラビリンス 天使ヵ悪魔ヵそれとも魔女ヵ  作者: らくだ けい
⭐︎三つ目のラビリンス編⭐︎
16/28

第16話 宴と枕投げ

 ただその光は、妙な偏り方を見せ、受けているのは男二人だけであり、ぐっと拳を握りしめたガッツポーズが直後に入った。


「よし、強い方のボスだったからな。こんな感覚なのか。良い気分だ」

「なんだ、力がわいてくる……。オレ、強くなってる!」


「これ何が起きてるの? 神様からの祝福?」

「レベルアップよ。核のモンスターが強いほどしにくいみたいで、私はボスで、あんたも大概な奴でしょ。だから私達には何もなし。良い核を持つ人間の宿命ね」


「へぇー、そういえば前にゴルくんから聞いてたような? これがそうなんだ。いいな」

「新しい力を得られるんだから、ちょっと羨ましく思うわよね」


「二人もいつかすると思う。オレも手伝う」

「ありがとう、ウルフ。頑張るぞー! おー!」

「強ボスでしないなら一生しない気もするけど」


「世の中うまくできてるってことだろ。核が良くても良いことばかりじゃないってな。それにお前はもうあんな大技持ってんだ。俺もパーティの有用性を理解できたし、レベルアップもした。実に有意義な戦いだったな」


「何浸るように言ってんのよ。この賢しさ全開フェネック」

「前から気になってたんだが、そのフェネックってのは何だ?」

「知らないの? 小さなキツネ。そっくりよ」

「全然似てないだろ。やることは済んだ。帰るぞ」


「ゴルくん、まだあると思うよ。そうだよね、ウルフ」

「ああ。全部埋めてやらないと。ニンゲンはそうやって死んだ奴を見送るって、バッシームから教わった」


「正気かよ……」

「この臭みの中やるわけ。卒倒しそう」


 ラビリンスに滞在した時間よりも長い時間をかけ、生まれてくるはずだった命を全て埋葬し、途中、ウルフが気絶させたワイバーンが目を覚ます一幕もあり、その頃には瘴気も晴れ、襲い掛かってくることもなく、羽ばたき立っていく姿を皆で見送ったりもした。


「元気でなーっ! 立派な卵を生むんだぞーっ!」

「にしても頑丈だな。地面に激突したはずだが」

「メスだったって方が気にならない?」

「今はそういうのいいじゃん。元気でねーっ!」


 町に戻る頃には、真っ暗であり、そのまま教会へ。

 遅い時間の訪問であったが、暖かく出迎えてくれ、勝利を伝えると、司祭は涙ぐむ。


「ありがとう。君達はこの町の英雄だ」


 一人一人へ抱擁がくる。その後、洗って返すと言っていたハンカチを出すが、もう一枚、取り出され、そちらを差し出された。


「これと交換して貰えないだろうか」

「え、司祭様、そんな高そうなハンカチ――」

「町を救ってくれた英雄の品を、額に飾っておきたくてね」

「ええ!?」


 尻込みしていたら、ビーティに肘でつつかれ、彼女は受け取って、見つめる。

 綺麗な見た目もそうだが、触り心地にも雲泥の差があり、罪悪感を感じはしたが、感謝の言葉と共に満面の笑みを向けられ、黙ってポッケにしまう。


 明日の宴には是非参加して欲しいと、そんなことも言われ、核を取り引きする際には色まで付けて貰い、後にする。


「宿代浮いたな♪」

「そうね。浮いた宿代は誰かさんの治療費に当てましょうか。聞いたわよ、ゴル」

「……、何をだ?」

「ごめん、ゴル。体の傷、黙ってろって言われたのに、言ってしまった」

「チッ、寝てりゃ治る」

「ゴルくんやっぱり怪我してたんだ。ひどい感じ?」

「大したことない。余計な心配すんな」

「それはもうあざだらけなんだって。切り傷も山ほどあるって」


「だから」

「ゴォ~ルゥ~く~ん~」

「……、金の無駄だろ」

「みんな押さえて。連れてくよ」

「待て! やめっ――」


 無理やり連行し、診療所。

 

「待った待った待った。それが必要であるとは思えません。冷静に考えてください。僕は、いや俺は怪我をしているだけで、病気を患っているわけではありません。そうですね?」


「うんうん、破傷風っていう怖い病気があるのよー。はい、力を抜いてねー」

「だから待て! 話を聞け! そんなもの必要――あ、あああああああああ」


 そこで太いのをぷすっとやって貰い、体も包帯でぐるぐる巻きにされて、彼は中から出てくる。


「おっかしー。全部聞こえたわよ、ゴル」

「うるさいな。早く忘れろ」

「注射嫌いだからあんなにしぶってたんだ。ラビリンス行くのも禁止って、言われてたね」

「あんなのは戯言だ。別になんともない。動き回ってたのは見てたろ」


 ビーティの腕がすっと持ち上がり、彼の胸をバンと叩く。

 顔を歪めていたが、修正していき、何もないような顔を作る。


「ほら見ろ。な、余裕だ」

「あ、そう。じゃあ次は靴のかかとでやったげる」

「待て。それは誰だって痛がるだろ」

「ならレトリにやってもらう? 力持ちなことは知ってるわよねぇ。私もあの大槍ぶん投げるの見て驚いたけど」

「やめろ。お前は俺を殺す気か」


「なんでそんな無理するのか知らないけど、当面はなし」

「いつからお前がリーダーになった」

「レトリー」

「わかった。傷が癒えるまで情報集めに徹するとしよう。それでいいんだろ」

「よろしい。お金も結構入ってきそうだし、休みも必要でしょ♪」


 参加することになった宴の際にその言葉の意味がわかる。

 町を上げての大規模のもので、お昼前から始まり、主賓として迎えられ、祭りの中心に据えられた四人の元には、沢山の人が訪れ、感謝を形にして渡す人間も多くいた。


 旅に必要な食器であったり、衣類であったり、金銭は無論、お守りのようなものまで。

 母親に連れられた幼子から手渡され、レトリが代表して受け取る。


「ふわ、可愛いね! 作ってきてくれたの?」

「うん!」

「ありがとう! 大事にするね!」


 暗くなると、ヒュー、ドンと、派手な音が鳴り渡り、夜空に大輪の花が咲く。

 次々上がって、どれも色鮮やかで、見惚れるような美しさ。


「これ、花火だよね? 綺麗」

「私も初めて見たわ。こんなに綺麗なのね」


 男二人はその間、終始無言であり、懐かしさに浸ったり、ただただ魅入り心に感動を覚えたり、宴もフィナーレを迎える。

 子供が見られる時間に合わせられていた為、大人達はまだまだ騒ぎ足りないと、これからといった様相を見せているが、町長が四人の所へ来て、疲れたろうと自身の家へ案内する。

 

 適宜補給はしていたが、食べ辛い環境ではあり、そこでしっかり食事もご馳走になり、寝室へ。

 大きなベッドが二つあり、頭の所には枕が人数分。一つ掴み取って、放り上げ、


「やるか」


 ゴルがそう言ったことで、〆が始まる。枕が飛び交った。


「楽しいな。オレ、ニンゲンの子と遊ぶの初めてだ」

「ウルフ。余裕を見せていられるのも今のうちよ」


 自然と男女対抗戦となっており、ビーティの持っていた枕がレトリの手に渡った。


「死になさい」

「いや、死になさいって。でもあんまり騒いでると怒られそうだし、早めに決着つけておかないとね♪」


 振りかぶった。

 ラビリンスのボスと見紛うほどの凄まじい圧迫感が放たれて、男二人は竦み上がった。


「ゴル。オレ、すごく逃げたくなった。いやなよかんがする……」

「マジに洒落になってないだろ。お前は全力出すの禁止――あああああああ!」


 新たな星が二つほど、夜空に追加され、明くる朝。

 多くの情報を得るなら、ここ、という場所があり、行き先は昨日の内に伝えており、準備して貰ったワイバーンの背に跨って、出発。


「これなら早く着きそうだな」

「頑張ったご褒美ってやつよね♪」

「いけ! ワイバーン!」

「子都かぁ。どんなとこなんだろ?」

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