表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
墓標のラビリンス 天使ヵ悪魔ヵそれとも魔女ヵ  作者: 楽田佳
⭐︎三つ目のラビリンス編⭐︎

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/50

第14話 ワイバラのラビリンス

「挑む相手を間違えたわね。ナイト、格の違いを見せておやりなさい!」


 操られた騎兵が槍を振りかぶる。

 するとワイバーンが口を大きく開き、火炎の息が振り撒かれた。

 頭上へ降り注ぐ。


「忘れてたわよ! 火を吹くなんて!」


 ビーティは騎兵を引き戻して、上に盾を翳す。

 火は防げたが、視界は炎に閉ざされ、晴れるやワイバーンの大きな体が傍にきており、足の鋭い鉤爪を構えた盾に引っ掛け、掴む。そのまま持っていった。


「――ちょっと。嘘でしょ!? こらバカぁ! 持ってくなぁ!」

「おい、どうすんだ。次は防げな――って、何やってんだあいつ!?」 

「ウルフ! 足放して!」


 どさくさに紛れてウルフがワイバーンの足に掴まっており、皆が見守る中連れて行かれ、場が一時静まり返る。


「レトリ、お願いできる?」

「うん。行ってくる。わたししかいないもんね」

「あったまいってぇ。なんだよこの状況」


 黒い翼が展開され、大気を打った瞬間、上でギャアギャア鳴くワイバーンの声が三人の耳に届く。

 直後に錐もみ回転しながら落ちてきて、そのまま地面に激突。


 粉塵上がって、力なく横たわる姿が映る。


 上で屈んでいたウルフが、膝を立てて降り、頭の所へ行き、また屈みこむ。


「お前の苦しいっていう声、聞いた。少しの間眠れ、ワイバーン。オレが元に戻してやる」


 呆然とその姿を見つめる三人の元まで戻ってきた彼は、初めてみる顔であり、三人は気圧されて、息を呑む。その顔には、深い怒りが滲む。


「オレの住んでた森も、狂わされた獣達であふれた。だからオレはバッシームに聞いて、魂の解放者になった。オレは怒ってる。許せない」

「お、おう、そうか」

「あんたもそういう顔するのね……」

「ボス、絶対倒そうね」


 その言葉に頷きを返して、先頭を歩み出し、三人を引き連れ、奥に待ち構えていたラビリンスの上に乗る。光が上がった。


「いっしょに戦おう、ゴブリン」


 衣装にマントが足され、中には無数のナイフが収まる。頭の上には小鬼の面が付き、被った。

 極端な前傾姿勢となり、白い息が吐かれると、ゴルも光を上げ、彼の腕を掴んだ。


「一人で行く気か」

「群れの戦い方はなれてる。そんなことはしない」

「そうは見えんがな」

「ウルフ、なんて言ったらいいのかわかんないけど、怖いよ」

「……、ごめん。こわがらせるつもりはなかった」


 小鬼の面を上げると、いつもの顔だ。被り直すことなく頭の上に戻す。


「特殊個体だからってイイ気になってたら死ぬわよ。元はヘボモンスターなんだから」

「ゴブリンをばかにするな。許さないぞ」

「ああ? こいつもなのか」

「レトリは違うでしょ。それともあなたの話?」


「俺のは普通の魔導兵士だ。お前らと違ってな」

「惨めな気分になる?」

「なるか。有能なモンスターだ。リーダーは俺で文句はないか」

「ええ。お任せするわ。適任だと思うし」

「意外だな」


「そう? 率先して前に出るタイプじゃないのよね。美味しいとこだけ掻っ攫いたいの♪」


「良い性格してんな。お前らはどうだ」


「わたしは元からゴルくんについてく感じだったし、むしろお願いするくらい」

「オレもない。ニンゲンといっしょにやるのはオオカミたちと全然ちがうから、任せてもいい」


「よし、なら俺の指示にしっかり従えよ。うまく使ってやる。攻略開始だ」


 顔に自信を覗かせ、ゴルが先頭を行くようになり、三人は後ろに付き従う。

 ここも最初は緩いカーブを描くお決まりの一本道で、すぐにモンスターも出る。


 シュワ、と音が立つや走った青い光線が、即座に頭を貫き石と変える。


「すごいな。ナイフを抜くまえに倒した」

「便利ね。そのレーザー」

「一人なら走りながら全部倒していけるんだがな」

「あー、だから。最初のラビリンス、ゴルくんが入ってからすぐだったのに、ちっともモンスターいなかったもんね」


 一階に強敵と思えるようなモンスターは出現せず、サクサク進んで、二階。


「なんだよ、これ」


 足場がない。眼前には、鳥の見る世界が広がる。


「空だ。大きな雲浮いてるね。下見えないよ」

「どういうことだ。鳥になれってことか?」

「ニンゲンは鳥になれるのか?」

「なれるわけないでしょ。羽持ちがいなかったらこれ詰んでたわね。見えない床でもあったら別だけど」


「勘だが、俺はありそうに思ってる」

「わたしが見てくるよ」


 そう言うと先に立って、ぴょんと跳ね、レトリは飛び降りる。

 落ちることなく、浮いた。


「うわ、不思議ー♪ 見て見て!」

「なるほど。面白い部屋だな」

「オレもやっていいか?」

「どうぞどうぞ」


 ウルフも行く。浮くだけでなく泳ぎまでした。


「泳げるかんじがしたんだ。楽しいぞ。二人もこい」


 呼ばれた二人は見つめ合ったあと、順に入っていくが、少しして、楽しむ顔を険しいものへ。緊張感を覗かせた。


「よく考えると厄介な部屋だな……」

「気付いた? かなり動きを制限されるわよね。何も出てこなければ問題ないんだけど。何か見える?」

「いや、何も。お前らも遊んでないで周りを見ろ。こんな状態で奇襲を受けたら一巻の終わりだぞ」


「え? あ、そっか! ぷかぷかしてたら格好の的だ。んー……、あっち、何だろあれ……」


 視線を遠方へ投げた際、彼女の目には横に広がる無数の黒い点のようなものが映り込む。

 そのまま覗き込んでいると、しだいにそれは大きくなり、姿形もはっきりしてくる。


「こっち来てるよ! すごい数!」

「どこ見て言ってる。何が見えてんだ」

「黒い軍勢、みんな真っ黒なワイバーンに乗ってる――、階段も見えるよ! 後ろの人達が吊るしてる!」

「意味不明すぎない?」

「確かに。移動させてんのかよ……」

「どうすんのよ、ゴル」

「今考えてる。おいバカ二号! さっさと戻ってこい!」

「一号絶対わたしだよね……。ウルフーっ、早くこっち!」


 一人先まで行ってしまっており、平泳ぎで戻ってきて、状況を手短に説明。


「どこだ? あれか?」

「ビーティ、お前見えるか?」

「いいえ。でも空中戦は避けられそうもないって思うわね。行かないと次の階へ行けないんだから」

「だよな。レトリ、お前翼を使って素早く移動はできるか?」

「できると思うよ。ちょっと待って」


 翼を使って軽く飛んでみせ、戻ってくる。


「いける」

「よし、ならお前に掴まってどうにか突破といくか。問題はどういう感じにやるかだが──」


 話し合いの結果、力押しの正面突破と見せかけた奇策で勝負ということになり、左足をゴルが掴み、右足はウルフ、ビーティは後ろから抱っこされる形となる。


 もう皆の目にも敵の姿は映っており、距離を見計らって、突撃を敢行。


 ゴルの左腕が前に突き出され、迫り来る軍勢にレーザーの連射を浴びせ掛け、牽制をかける。そうして相手の進行を乱した直後、


「この作戦はお前のとっておきとやらにかかってるんだ。本当にいけんだろうな……」

「任せておきなさい。度肝を抜いてやるわ。ナイト、全力全開」


 ビーティが両腕をクロスさせた。

 すると下に吊るされ、ぷかぷか浮く騎兵が稲光を上げ、雷鳴轟かせながら空を一直線に貫いた。


「雷光の一突き」


 正面の軍勢がその一発で消し飛ぶ。

 両陣営共に動きを止め、目を疑う。


「びっくりしたぞ。カミナリがおちた……」

「なんて威力だ……」

「ビーティ、すご!」

「ふふん、気持ちはわかるんだけどね。足を止めたらダメよ」

「あ、ごめん!」


 我に返ると同時に大穴空いた所にレトリは突っ込む。

 向こうも同タイミングで立て直しを図っており、中央の辺りで囲い込まれた。ステッキが振り回される。


「レトリ! 今だ!」

「血の炎!」


 ビーティを片腕抱きに変えており、彼女は赤い液を四方に振り撒く。直後に発火。炎の壁を作り、相手の視界を遮断。見えない内に軍勢の下に潜り込む。


 そのまま階段を吊るす奥の隊列目指し、一直線に空を駆ける。


「うまくいったね♪」

「ああ、何かを掠め取るには良いやり方だよな」

「私への皮肉にしか聞こえないんだけど」

「気のせいだろ。ただもしここが本当にボスの見る夢の中なんだとしたら、一矢報いる形にもなると思ってな」

「優しいとこあるじゃない。ねぇ、ウルフ」

「なにがだ? 全然はなしがわからなかったぞ」

「あはは、それわたしも。前のことに集中しちゃってるし、ちょっとほかは、今考えられない」


 こちらを見失っている隙に下を駆け抜け、吊るされた階段に四人で足を乗せる。


 上の方は先ほどまで空に途切れているように映っていたが、今見上げれば、はっきりと上層まで続く道が見える。走れ、とゴルの号令が上がった。


「あいつらは三階(げんじつせかい)までは追ってこれない!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ