表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/6

三、名前のついたあの気持ち

 ずっとこの不安だった気持ちに名前がつく。それはとても怖くて心配だった。けれどこれを乗り越えれば、また友達と遊びに行ったり、クラスに戻ることができるかもしれない。

「寺島さーん、寺島萌華さーん」

「はい」

緊張と不安の気持ちが病院の廊下を走る。お母さんは診察室には行かず、私一人で入るということだった。初めての精神科は少し怖かった。

「電車で痴漢をされたということですが、どのような光景だったかその時の状況を教えてください。ゆっくりでいいですからね」

「電車に乗っていた時なんです。いつものように電車の椅子に座っていた時に、シャッター音が聞こえて…驚いて声が出なくなってしまって。それからはあまり覚えていません」

先生に言われたようにゆっくり思い出す。前は怖くて記憶に蓋をしていたけれど、今は過去の自分に向き合えている気がした。

「このことを思い出して、過呼吸になってしまったり、体に影響が出ることはありますか?」

「はい、時々。忙しいと考える機会があまりないんですけど、暇になると急に思い出してしまって、苦しくなるんです」

そんな会話をしているうちにカウンセリングは終わった。先生はとても優しく、私は、落ち着いて話すことができた。

約十分後

「寺島萌華さーん」

診断結果が出たようだった。緊張で、私の心臓は強い鼓動を繰り返していた。

「寺島さんの診断結果はPTSD心的外傷後ストレス障害です。」

〝PTSD〟それは聞いたことのない病名で、治るのか不安だった。

「治るんですか?」

「はい、治りますよ。人によりますが、お薬を毎日飲んだり、あとは電車やその場所に行って体を慣らすんです」

薬や電車、それは今となっては怖いけれど、一つずつクリアしていけば大丈夫だということを先生から教えてもらうことができた。

「今はまだ、不安だったり思い出してしまうかもしれません。だけど、まずは駅に足を運ぶだけでもいいです。音や風景を新しく書き換えることができれば、必ず改善できますよ」

「ありがとうございます」

そんなことを教えてもらい、先生からの話は終わった。病院に行く前とは違い、気持ちが新しく前に進んでいる気がした。

「お母さん終わったよ」

「そう、PTSDだってね。これから治るまで一緒に頑張ろうね」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ